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医療過誤 医療事故 弁護士68.png

歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

ブリッジ補修治療の危険性・代替可能な治療の有無等について十分な説明をしていなかったとして,説明義務違反に基づく自己決定権の侵害が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第3053号 損害賠償請求事件
平成16年5月19日判決 控訴・和解
【説明・問診義務,治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和14年生,女性)は,平成11年4月20日,被告歯科医院(個人病院)を受診した。担当歯科医師は,患者の右上5番歯の近心側に重度の齲触を,右上7番歯の欠損を認めた。担当歯科医師は,同月26日,患者の右上5番歯の齲触に対し,抜髄治療を行った。その後,担当歯科医師は,患者の右上7番歯欠損に対する補綴治療として,右上5番歯及び同6番歯を支台歯とする遊離端ブリッジ治療を行い,同年5月13日,光重合レジンによる仮歯を装着した。患者は,仮歯の痛みを訴えて,同月14日,被告歯科医院を受診し,仮歯の除去を受け,以後,同医院を受診しなくなり,他の複数の歯科医院を受診した。患者は,平成12年5月17日から,甲歯科医院を受診していたが,同医院のA歯科医師の紹介を受けて受診した乙病院(大学病院)歯科麻酔科において,平成14年10月17日,「カウザルギーの疑い」と診断され,それ以降,神経ブロック療法及び投薬治療を受けた。

患者が,被告歯科医院を開設する法人及び担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計440万円(612万1978円のうち一部請求)

結  論

一部認容(認容額11万円)

争  点

①上5番歯の抜髄治療に際し,感染根管治療を実施すべきであったにもかかわらず,これを怠ったため,右上5番歯の根尖部分等から細菌が排出され,同部位付近の歯槽骨が感染し,歯槽骨の骨髄炎を発症させるに至ったか。
②右上7番欠損歯に対する遊離端ブリッジ治療のため,右上6番歯を削合したことは不必要な治療であったか。
③右上5番歯の抜髄治療及び右上7番歯のブリッジ補綴治療について,説明義務違反の有無
④①ないし③の過失と患者の右上顎部の痛みとの因果関係の有無

認容額の内訳

①慰謝料

10万円

②弁護士費用

1万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科医師が智歯抜歯の際,破損したタービンパーの破折片を抜歯痕に残置し,患者の下顎部に腫脹などを生じさせたことについては慰謝料が認められたが,抜歯後に患者を診察した別の歯科医師が破折片の存在に気付かなかったことに関しては過が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第227号 損害賠償請求事件
平成15年12月24日判決
【説明義務,問診義務,検査,手技上の過失,残置,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和55年生,女性)は,平成12年1月,被告歯科医院において,A歯科医師(大学病院口腔外科勤務。被告歯科医院で月1回程度診療を行っていた)によって,右下埋伏智歯の抜歯を受けた。A歯科医師が抜歯のため智歯を削っていた際,タービン(歯を削る器械)の金属製パーが破折した。A歯科医師は破折片を口腔内から取り除いて抜歯を継続したが,抜歯部を縫合するまでの間に,何らかの原因で,口腔内から取り除いたパーの破折片が抜歯部に入り込んだ。A歯科医師は,破折片が抜歯部に入っていることに気付かず,抜歯部を縫合した。

同年3月ころ,患者は,抜歯部に残った破折片による反応性炎症により,右下顎部に直径10mmほどの腫脹が生じた。患者は,同年4月,被告歯科医院を受診してB歯科医師の診察を受け,B歯科医師は,腫脹の原因として,顎骨炎やリンパ節炎を疑い,口腔内の観察,リンパ節の触診,オルトパントモグラフイー(パントモ)撮影を行った後,患者に対し,下顎腫脹の原因が分からないので,大学病院を受診し,A歯科医師に診察してもらうよう指示し,患者にパントモ写真と診療情報提供書を渡した。

患者は,同年4月,A歯科医師が勤務する大学病院を受診してA歯科医師の診察を受け,A歯科医師は,患者の持参したパントモ写真を見て,右下智歯の抜歯部に金属片らしい異物があることに気付き,その旨を患者に説明した。A歯科医師は,患者が,被告歯科医院で自身が抜歯をした患者であることに気付いていなかった。

患者は,同年4月,A歯科医師の勤務先とは別の大学病院を受診し,タービンパーの破折片を摘出する手術を受けたが,担当歯科医師は,破折片を探り当てることができなかった。患者は,同年5月,2度目の摘出手術を受け,抜歯部からA歯科医師が残置した破折片が摘出された。

患者の右下顎の腫脹は,同年3月末から徐々に増大し,発赤,排膿,圧痛が生じるようになり,破折片摘出後は徐々に沈静化したが,現在も,外観からはほとんど認識できない程度ではあるが,右下顎部に瘢痕が残っている。

患者は,A歯科医師,B歯科医師,被告歯科医院を開設するC歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

1100万円

結  論

一部認容(認容額90万円)

争  点

①B歯科医師に,A歯科医師が混入させた破折片が抜歯部に存在することを認識したにもかかわらず,患者に告げず,医療過誤を起こしたA歯科医師に診察を受けるよう指示したことに説明義務違反があるか否か。仮にB歯科医師が,患者の抜歯部に破折片が存在することに気付いていなかったとすれば,破折片に気付かなかったことが診療上の過失といえるか。
②患者の慰謝料額
※破折片を残置させたA歯科医師の過失については争いがない

認容額の内訳

①慰謝料

80万円

②弁護士費用

10万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科医師が,抜歯すべき歯を誤ったとして損害賠償請求が認容されたケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第12834号 損害賠償請求事件
平成15年9月1日判決
【治療方法,時期,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和48年生,女性)は,平成14年6月1日,歯科矯正のため,甲矯正歯科を受診し,患者の希望もあり,上左及び下左右については第1小臼歯(4番)を,上顎右については補綴処理された5番を,それぞれ抜去することになった。

同月10日,患者は,上左4番,下右4番,下左4番,及び,上右5番を抜去するよう指示した被告歯科のA歯科医師宛の紹介状,及び,歯のレントゲン写真を持参して,被告歯科を受診した。

A歯科医師は,上左,下右,下左の各4番のほか,紹介状の指示に反し上右4番を抜歯した。

患者は,被告歯科の開設管理者とされていたBに対して,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

396万円

結  論

一部認容(認容額80万円)

争  点

①Bの使用者責任及び債務不履行責任の有無
②損害

認容額の内訳

①治療費

20万円

②慰謝料

50万円

③弁護士費用

10万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯列矯正の際,虫歯予防のためブラッシング指導することを怠ったとして歯科医師の責任が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第8371号 損害賠償請求事件
平成15年7月10日判決
【説明義務,問診義務】

<事案の概要>

患者(昭和54年生,女性)は,平成10年2月13日,担当歯科医師(A歯科医師及びB歯科医師)が経営する甲矯正歯科医院を受診し,上下すべての歯を矯正して上下顎前突を解消する治療を受ける診療契約を締結した。矯正治療は,平成11年11月6日まで,動的矯正を行い,同日から平成14年1月8日までは,歯の裏側に固定式保定装置を取り付け保定を行った。

患者は,同年1月8日,同医院における最後の診療で,固定式保定装置を取り外され,帰宅した後,固定式保定装置が装着されていた上下切歯4本の裏側が虫歯のようになっていることを発見した。患者は,翌9日,B歯科医師に電話で問い合わせた後,別の歯科医を受診し,上の歯の左右中切歯及び左右側切歯に,歯の中段付近の歯と歯の隣接面に,象牙質まで達する齲蝕(虫歯)を生じ,左上中切歯の一部は歯根膜炎を発症していることが判明した。

患者が,A歯科医師及びB歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

410万5000円

結  論

一部認容(認容額55万円)

争  点

担当歯科医師らは,歯列矯正の際,十分にブラッシングを行うなど口腔内の衛生環境を良好に管理するよう患者に指導すべき義務に違反したか。

認容額の内訳

①慰謝料

50万円

②弁護士費用

5万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科治療の際,患者の唇をタービンで傷つけたことについて,担当歯科医師の手技上の過失が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第19179号 損害賠償請求事件
平成15年4月24日判決
【手技】

<事案の概要>

患者(昭和40年生,女性)は,平成12年6月22日,担当歯科医師の妻の経営する被告歯科クリニックで担当歯科医師により虫歯の治療を受けていたが,その際歯を削るターピンが患者の唇に当って,長さ6㎜,深さ0.5〜1㎜の傷害を生じ,細い糸で4針縫合しなければならなくなった。その後,唇の傷跡は,近寄って注意深く見なければ見分けられない程度ではあるが,一筋の白い傷跡として残った。

患者が,担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

200万円(損害額220万円のうちの一部請求)

結  論

一部認容(認容額70万円)

争  点

担当歯科医師が,タービンの操作を誤ったか否か。

認容額の内訳

①慰謝料

60万円

②弁護士費用

10万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

インプラント治療に際し,インプラント治療の短所について十分な説明をしていなかったとして説明義務違反が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第7234号 損害賠償請求事件
平成15年1月27日判決
【説明義務,問診義務,診断義務,手技,検査,手術適応,因果関係】

<事案の概要>

患者(男性)は,20歳代前半から歯槽膿漏等で歯を失うことが続き,平成8年には,上顎歯は,左右各1から3番までの範囲内に5本と,右8番の合計6本を残すのみとなった。残った歯も,前部の5本が歯槽膿漏でぐらつく状態で,局部床義歯にも不具合があった。

患者は,同年8月ころ,インプラント治療に関心をもち,同年10月29日,被告歯科(個人病院)を受診した。被告歯科を経営する担当歯科医師は,患者の上顎にインプラント治療の適応があると判断し,前歯については,歯槽膿漏のためこれらを抜歯した上で,左右各4ないし6番の位置に合計6本のインプラント体を埋入し,これを支台に,13本の歯冠部からなる本歯を装着する治療計画を立てた。

担当歯科医師は,患者に対し,インプラントの術式等については詳しく説明したが,インプラント治療に伴うリスクについては、担当歯科医師の指示に従っていれば,インプラント治療は必ず成功するかのような印象を与える説明の仕方をした。

担当歯科医師は,インプラント治療を開始したが,時間が経ってもインプラント体は上顎骨に結合しなかった。インプラント体の埋入は,5回にわたって繰り返されたが、インプラント体の上顎骨への結合が認められなかったため,インプラント治療は,不成功のまま平成11年12月に終了した。

担当歯科医師は,インプラント治療継続中,患者からインプラント体埋入部位の痛みを繰り返し訴えられたが,抗生物質,鎮痛剤等を処方しただけで,問診をなさず,痛みの原因について診断しなかった。

患者が,担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

863万5000円

結  論

一部認容(認容額619万5000円)

争  点

①インプラント治療の適応があったか,インプラント治療の適応を判断するのに十分な診察,検査が行われたか。
②インプラント治療に手技上の過失があったか否か。
③インプラント治療実施に当たっての説明義務違反の有無
④説明義務違反と患者の精神的苦痛等との間の因果関係の有無

認容額の内訳

①治療費

463万5000円

②慰謝料

100万0000円

③弁護士費用

56万0000円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

抜歯する必要のない歯を抜歯したことについて損害賠償請求が認容されたケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第25875号 損害賠償請求事件
平成14年5月27日判決
【説明義務,問診義務,治療方法・時期,損害論】

<事案の概要>

患者(女性)は,平成11年1月26日,右下6番,7番の急性発作歯周炎と歯肉膿瘍のため被告歯科医院を受診し,同年12月9日まで,歯肉膿瘍の排膿,消炎処置,投薬治療等を受けた。

患者が,平成12年4月3日,右下奥歯の痛みを訴えて被告歯科医院に来院したところ,担当歯科医師は,右下奥歯の状態を目視したのみで,レントゲン写真も撮らず手や器具で触るなどして動揺を確認していないのに,漠然と,右下奥歯を抜歯すると説明したのみで,従前の治療の経緯から右下7番を分割して抜歯した。

患者は,被告歯科医院の開設者である担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

500万円

結  論

一部認容(認容額150万円)

争  点

①抜歯する必要がない歯を抜歯したか否か
②本件抜歯についての説明義務違反の有無
③損害額

認容額の内訳

慰謝料

150万円

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科治療において浸潤麻酔を実施するに当たり,問診義務を怠った結果,患者の既往歴から原則禁忌とされる麻酔薬を投与した過失が認められたが,患者に生じた障害との因果関係は認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第281号 損害賠償請求事件
平成17年3月30日判決 確定
【説明・問診義務,手技,因果関係】

<事案の概要>

患者(平成12年当時60歳,女性)は,平成3年5月13日,被告歯科医師が開設する被告歯科医院(個人病院)を受診し,その後,平成5年5月から平成9年9月まで,同歯科医院に通院していた。患者は,平成12年3月29日,右下の歯が痛み出したため,被告歯科医院を受診し,右下3番歯の遠心隣接歯頚部の齲蝕による歯髄炎と診断され抜髄治療を受けることになった。抜髄治療では,骨膜下注射法による浸潤麻酔が行われ,浸潤麻酔薬キシロカイン(エピネフリン含有)1.8mlが患者に投与され,齲蝕部と既存レジン部分がタービンで削除され,抜髄後,根管治療が行われ,根管部が仮封されて,治療を終了した。その後,患者は,右上下肢麻痺や右顔面麻痺等の症状を訴えて多数の医療機関を受診した。なお,患者は,平成4年,くも膜下出血,同年8月29日,脳動脈瘤クリッピング術,同年10月13日,脳室・腹腔短絡術を受け,くも膜下出血の合併症として,脳血管れん縮を起こした既往歴を有し,平成7年4月から本件治療に至るまで,高血圧症及び躁うつ病により通院,投薬治療を受けていた。

患者は,被告歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計419万2934円

結  論

請求棄却

争  点

①被告歯科医師に,麻酔の際に,誤って患者の下歯神経叢の神経を切断した過失があるか。
②被告歯科医師は,問診義務を怠り,添付文書の使用上の注意事項に反して,患者に対し,麻酔薬であるキシロカインを使用したか。
③患者の現在の症状,及び同症状と被告歯科医師の各注意義務違反との間の因果関係の有無

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯の根管治療において,歯科医師が誤って近心根管側壁と髄床底に対し穿孔を生じさせた疑いが強いものの,損害は発生していないとされたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第21196号 損害賠償請求事件
平成17年2月25日判決 確定
【手技,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和34年生,女性)は,かかりつけの歯科医院で,右下6番ないし右下8番にブリッジを装着する治療を受けた。その後,患者は,右下の歯に痛みを感じたため,平成8年5月1日から平成13年8月20日まで被告歯科医師が開設する歯科医院に通院し,歯列の治療を受けた。被告歯科医師は,平成11年2月16日,右下6ないし8番に以前から装着されていたブリッジを除去するとともに,右下6番について,歯の中の土台となっている金属部分を除去し,同月19日から同年11月24日にかけて,右下6番の根管治療を行った。又,平成11年9月8日から同年10月8日まで,右下8番の歯冠部の除去,麻酔抜髄,貼薬及び根管充填措置を行った。患者は,平成14年10月1日,他の歯科医院で右下6番を抜歯したが,抜歯後の歯の近心根の根管側壁のうち上下方向の中心部分に穿孔があった。

患者は,右下6番の痛みが継続し抜歯する結果を招いたのは被告歯科医師が右下6番の根管治療の際に誤って穿孔した過失,及び,右下8番について不必要な断髄及び不完全な根管治療を行った過失によるものであるとして,被告歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

654万1834円

結  論

請求棄却

争  点

①被告歯科医師に,右下6番の根管治療において,近心根管側壁と髄床底に対し,誤って穿孔し,かつこれに対する処置を怠った過失があるか否か
②右下8番の根管治療において,必要のない神経を除去し,又,不完全な根管治療を行った過失の有無
③過失による損害の発生の有無

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

左下顎第3大臼歯の水平埋伏歯の抜歯術について,手術不適応,説明義務違反,不適正な施術の過失がいずれも認められず,抜歯術後の症状との間の因果関係も認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第6740号 損害賠償請求事件
平成16年9月29日判決 控訴・控訴棄却
【説明・問診義務,手技,適応】

<事案の概要>

患者(昭和40年生,男性)は,平成14年12月20日,甲歯科医院(個人病院)を受診し,左下顎第3大臼歯(親不知)が水平埋伏歯で,歯肉膿瘍を生じていると診断された。患者は,同医院の歯科医師の紹介で,平成15年1月16日,被告病院(公立病院)を受診した。患者を診察したA歯科医師は,パノラマX線写真上,炎症所見を認めたことことから,患者に対し,抜歯が必要である旨説明した。同月29日,担当歯科医師Bによって,患者に対し,抜歯術が施行された。抜歯術は,伝達麻酔,浸潤麻酔,智歯遠心・頬側歯肉切開,智歯直上の骨削合,埋伏歯の歯頚部のエアタービンによる歯冠・歯根への2分割,へら状のへーベルによる歯冠部の抜去を行い,その後,へーベルを歯と骨の間に入れ,骨に力を加えながら左右に回転させて歯根部を脱臼させて抜去し,一次縫合措置を講じて終了した。所要時間は十数分であった。B歯科医師は,翌30日,患者の抜歯箇所の腫脹が強度であったため,予定を早めて抜糸し,患者に対し,そのことについて説明した。抜歯術後,患者は,担当歯科医師に出血,患部の疼痛を訴え,同年2月5日,左下顎第1,2大臼歯が舌側に転位した感じを,同月13日,左下顎第2小臼歯と第1大臼歯の間が開いたと訴えるようになったが,担当歯科医師は,転位や歯の動揺等の異常を認めなかった。

患者は,同月14日以降,甲歯科医院を受診するようになり,開口障害,左下顎第2小臼歯の頬側へのわずかな偏位が認められたが,脱臼,動揺,疼痛は認められなかった。同年3月13日,患者は,乙病院(大学病院)歯科を受診し,同年6月3日,顎関節症と診断され,右側顎関節のクリックと左側のクレピタスがあったため,安静を指示された。左下顎第2小臼歯に,わずかな頬側偏位と下顎前歯部歯列不正が認められた。

患者は,被告病院を開設する地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計462万円

結  論

請求棄却

争  点

①抜歯術の適応の有無
②説明義務違反の有無
③本件抜歯術が乱暴なものであっため患者に左下顎第2小臼歯の転位,顎関節症を生じたか。

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

智歯(親知らず)抜歯の手技に過失が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第26361号 損害賠償請求事件
平成15年9月11日 判決
【手技】

<事案の概要>

患者(昭和27年生,男性)は,平成10年7月22日,被告歯科医院を受診して,右下智歯近辺に痛みがあることなどを訴えた。担当歯科医師は,パントモグラフィー(パノラマX線撮影)などした上,患者に対し,智歯は左右上下の4本を抜歯した方がよいと説明し,これに患者は同意した。

同月23日,担当歯科医師は,患者の左上智歯及び左下智歯を抜歯し,同月28日,右上智歯及び右下智歯を抜歯した。

患者は,同年9月21日,担当歯科医師を受診し,舌の右側先端部分に麻痺があると訴えた。患者は,右下智歯を抜歯されるまで麻痺はなかった。

患者は,平成12年5月8日及び同年6月9日にも担当歯科医師を受診し,麻痺が治らないと訴えた。患者は,平成13年4月5日,舌右半側のしびれを訴えて,担当歯科医師かの紹介で甲病院(大学病院)を受診し,同病院に通院して治療を受けた。

患者は,被告歯科医院を開設する担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

6689万2586円

結  論

請求棄却

争  点

右下智歯抜歯の際,担当歯科医師の過失により,患者の舌神経を損傷したか否か。

判  断

舌神経は、下顎智歯の付近では,通常,歯槽骨の舌側の外側数ミリを通っていると認められるから,担当歯科医師は,患者の右下智歯を抜歯する際,歯槽骨の舌側骨面を著しく圧迫したり破折したりして舌神経を損傷することを可能な限り避けるべき注意義務がある。本件全証拠を検討してみても,患者の右下智歯の抜歯の際における担当歯科医師の手技上の過失を基礎づけるに足りる事実を認めることはできない。

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯の咬合矯正の治療を開始するに当たり,顎関節症を発症する危険性の説明を怠った過失,未熟な歯科医師に治療を担当させた過失がいずれも認められず,顎関節症を発症させないよう万全の措置をとるべき注意義務を怠った過失も認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第10967号 損害賠償請求事件
平成15年10月20日判決
【説明義務,問診義務,治療方法,時期】

<事案の概要>

患者(女性)は,平成9年5月10日,被告歯科医院を受診し,虫歯治療とともに他院で歯の咬み合わせをめちゃくちゃにされたと訴え歯並びの矯正を希望し,同医院に通院するようになった。同年8月23日から,被告歯科医院院長が,患者の治療を担当し,患者の咬み合わせの位置が低いことや冠が不適合であることを原因とする「左顎関節症」と診断し,顎関節への圧迫や負荷を軽減するため,まず右上の歯の既存の冠を除去し,右上の歯に仮歯を付けて上の歯の高さを調整し,次いで右下の歯に仮歯を付けて,下の歯で咬み合わせを調整する治療方針を決めた。平成10年4月11日には,左右いずれについても高さ調節による歯の咬み合わせの治療が一応終了し,患者は,同年9月11日には「最近は比較的調子いい」と述べ,被告歯科医院院長が行った咬合矯正の治療に不満を述べることはなかった。

同年11月20日,患者は,被告歯科医院を受診して,右下の咬み合わせが高い気がすると訴え,被告歯科医院院長の担当で,咬み合わせの治療が再開した。同年12月21日からは,患者の希望で,主にA歯科医師が咬み合わせの治療を担当するようになった。

A歯科医師は,患者の希望に応じて,患者の歯の模型を参考に咬み合わせを調整をした。患者は,平成11年1月20日,2月3日には比較的調子がよい旨述べていたが,平成11年5月10日以降,背中や首(後頭部)に痛みを訴え始めた。その後も,患者の希望に応じて,咬み合わせの位置を下げていく方向で調整が続けられたが,平成12年4月11日以降,患者の希望で,咬み合わせの位置を上げていく方向での調整が行われたが,4月26日に,患者が痛くて咬めないと訴えたので,再び咬み合わせの位置が下げられた。その後,患者は,治療途中で被告歯科医院へ通院しなくなった。

患者が,被告歯科医院を開設する法人と被告歯科医院院長に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計300万円

結  論

請求棄却

争  点

①咬み合わせの治療を開始するに当たり,治療によりかえって咬合不全を生じる危険があり,顎関節症を発症する危険性があることについて説明を怠った過失の有無
②顎関節症を発症させないよう万全の措置をとるべき注意義務を怠り,漫然と奥歯を高くしたり,あるいは低く切削したなど不適切な治療の有無
③未熟な歯科医師に治療を担当させた過失の有無

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歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科医師が,患者が訴える歯痛の原因を歯髄炎と診断して抜髄治療をしなかったことに過失が認めらなかったケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第15731号 損害賠償請求事件
平成15年6月11日判決
【説明義務,問診義務,診断義務,手技,治療方法,時期】

<事案の概要>

患者(昭和11年生,男性)は,平成5年9月から被告歯科医院に通院するようになり,平成6年2月〜4月まで,右上1番2番と左上1番2番の歯を削った上で,セラミックス製の被覆冠(ジャケットクラウン)を被せる補綴的矯正治療を受けた。

患者は,同年5月ころ,被告歯科医院の担当歯科医師に対して,ジャケットクラウンを被せた部分がしみると訴えたが,同年11月に噛み合わせの不調を訴えて被告歯科医院を受診してから平成8年6月まで,被告歯科医院に来院しなかった。

患者は,平成8年6月,左上2番にしみる感じがすると訴えて被告歯科医院を受診し,担当歯科医師は,口内所見などから歯肉炎と診断し,ブラッシング指導を行った。患者は同年12月,冷水を飲むと右上3番に痛みがでると訴え被告歯科医院に来院したので,担当歯科医師は,歯神経由来の痛みである可能性を考え,レントゲン撮影を行い,次回の診察時に症状を確認して措置を検討することにした。

平成9年2月,患者は,右上1番のジャケットクラウンが一部破折したため,破折部分をプラスチック系接着剤(エックス線透過性)で接着する応急措置を受けた。その際,患者が,上前歯の痛みを訴えたため,担当歯科医師は,歯神経に異常がある可能性を考えたが,患者がどの歯が痛むか特定できず,歯肉炎の症状もあったため,とりあえず歯肉炎に対する治療を行い,痛みがとれなければ抜髄治療を行うこととした。平成9年2月に行われたレントゲン検査では,歯髄の異常は認められなかった。

同年4月,患者は,左上1番のジャケットクラウンが一部破折したため,プラスチック系接着剤で接着する応急措置を受けた。患者は,同年4月〜8月にかけて,上前歯4本にピリピリ痛む,しびれる感じがあるなどの症状を訴えたが,異常を訴える歯が特定できず,又,受診の度に異常を訴える歯が変わり,歯肉炎の症状も残っていたため,担当歯科医師は,歯神経の異常を疑いつつも,患者の訴える症状が歯肉炎の症状とも合致し,上前歯4本にう蝕が見られず,患者の訴えでは歯神経に異常がある歯を特定できないので,歯肉炎の治療を優先して行うこととした。

患者は,同年7月,他の医療機関で,右上1番と左上1番2番につき,う蝕のない歯髄炎及び急性辺縁性歯周炎と診断され,同9年8月,左上2番の抜髄を受けた。同年12月には,他の医療機関で,左上1番の抜髄を受けた。

患者は,被告歯科医院を開設する担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計7891万0751円

結  論

請求棄却

争  点

①担当歯科医師が補綴的矯正治療を行った際,歯を削りすぎたり注量が少なすぎたりしたことで患者に歯髄炎を引き起こしたか否か。
②担当歯科医師が補綴的矯正治療を行った際,歯を削る方法で矯正することや歯髄炎になる可能性のあることを説明する義務があったか,説明義務がある場合,担当歯科医師に説明義務違反があるか否か。
③補綴的矯正治療の際,患者の歯に適合しないジャケットクラウンを被せた過失があるか否か。
④担当歯科医師が患者の症状を歯髄炎と診断せず抜髄をしなかったことに過失があるか否か。

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科治療について,義歯の製作順序等に不適切な点はなく,説明義務違反も認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第18307号 損害賠償請求事件
平成15年3月20日判決
【説明義務,問診義務,治療方法,手技,時期】

<事案の概要>

患者(昭和12年生,女性)は,平成11年3月30日,下左のブリッジに動揺を覚えたため,被告病院(総合病院)歯科を受診した。

初診時,患者の歯の状態は,多数の歯の欠損,折損,残根状態があり,上右及び下左に各々ブリッジが施されていたが,上右のブリッジは下顎側に落ち込み,慢性根尖性歯周炎や歯茎全体に及ぶ歯槽膿漏があった。下左のブリッジは動揺が認められ,患者は,従来の義歯が合わなくなって,食事にも不都合を感じていた。

担当歯科医師は,下左のブリッジ及び下左7の抜去した後,下顎の暫間義歯を製作し,上顎,下顎の順に義歯を製作するという治療方針を立てた。

担当歯科医師は,患者に対し,下顎暫間義歯を装着し,残根状態の歯や補綴処理がなされた歯の根管治療を開始した。

平成12年4月28日,上顎義歯が完成し,担当歯科医師は,患者の下顎義歯にユニファストを盛って咬合面を整えたが,上下前歯の噛み合わせが悪かったため,再度調整することとしたが,それ以後,患者は被告病院を受診しなくなった。

患者は,その後,2〜3か月の間に,患者の下顎義歯の鉤及び歯1本が欠け,咬合が悪くなったので,平成12年11月から同年12月にかけて,上下義歯の製作を希望して甲歯科に通院し,保険適用外で磁石を入れない上下の義歯を製作するなど,欠損部位について補綴処置を受けた。

その後,患者は,上右4の差し歯が抜けたことから,平成13年9月から乙歯科に通院し,上右6に義歯用の磁性体を取り付けるととも上顎義歯にも磁性体を装着し咬合の安定を図る治療を受けるとともに,全顎的な辺縁性の歯周炎の治療を継続的に受けた。

患者は,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

39万4960円

結  論

請求棄却

争  点

①担当歯科医師が不適切な治療を行ったか否か。
②担当歯科医師に説明義務違反があったか否か。

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯根膜炎の診断について責任が否定されたケース

 

大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第3507号 損害賠償請求事件
平成14年9月25日判決
【治療方法,時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和23年生,女性)は,昭和56年6月初めころ,口腔内に異物感を覚えて同月8日,甲歯科医院を受診した。患者は,同月15日,同歯科医院にて,右上6番の抜歯術を受けた後,疼痛やしびれ感を訴え,同医院に定期通院し,右上6番付近の骨瘤除去術及び骨鋭縁部除去術,右上7番の抜髄を受けた。

患者は,治療後麻痺感が生じ,増悪したと訴えて,同年7月15日,被告病院(大学病院)歯科を受診し,担当歯科医師(教授)から右上6番の抜歯窩の治癒不全に対する治療及び右上7番の歯根膜炎に対する治療を受け,同年8月10日まで通院した。

患者は,その後も症状が改善せず,別の歯科医院や心療内科等を受診したが,昭和62年6月,自殺した。

患者の相続人(夫及び2人の子)は,平成2年,甲歯科医院を開設する法人等に対し,同歯科医院における診療が不適切であったため,全身に耐え難い異常感覚を生じ,患者が自殺したと主張して,損害賠償請求訴訟を提起したが,第1審で請求棄却の判決が言い渡され,平成12年7月14日の上告審の決定(上告棄却及び上告不受理)により,敗訴の判決が確定した。

患者の相続人が,被告病院を開設する国に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億9051万0853円

結  論

請求棄却

争  点

①担当歯科医師は,初診時において,患者の訴える麻痺感や痛み等の原因が,前医により右上7番の抜髄のため貼薬されたアルゼンの薬理効果によるものであると判断し,抜髄ないし抜歯等患者の苦痛を除去ないし軽減する処置をなすべきであったのに,これを怠ったか。
②担当歯科医師の過失と患者の自殺との因果関係の有無。

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯の審美治療を実施する際に,奥歯から行ったことに必要性が認められ,それに患者が同意しなかったとは考えにくく,又,装着された歯が破折したことについて医師の過失があるとはいえないとされたケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第15408号 治療費返還請求事件
平成14年7月31日判決
【説明義務,問診義務,手技,治療方法,時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(男性)は,出っ歯と感じていた上顎左右1番の歯を含めすべての歯をきれいに整形したいと考えていたが,まず,上顎左右2番の各歯について整形して大きくすることし,平成7年3月28日,被告歯科医院(個人病院)を受診し,審美治療を受けるようになった。

担当歯科医師は,患者に対し,上顎左右l番について,客観的には出っ歯ではないが,患者が出っ歯であると感じているのであれば,きれいに仕上げるためには上顎左右1番の歯を上顎左右2香と併せて治療するのが良いと提案するとともに,上顎左右2番を大きくするには奥歯から治療する必要があると説明した。

患者は,上顎左右2番と併せて上顎左右1番を治療することについては拒否し,奥歯から治療することについては同意した。治療ではハイブリッドセラミックスを使うことが合意された。

被告歯科医院における治療が開始されたが,患者は数度にわたり長期間治療を中断した(中断期間はそれぞれ数か月から1年)。

患者は、上顎右6番を平成10年6月20日ころ,上顎右7番を平成12年ころ,上顎左7番を平成13年3月ころそれぞれ破折した。

患者が,被告歯科医院を経営する担当歯科医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

67万2000円

結  論

請求棄却

争  点

①患者の上顎左右2番を整形する際,前歯から治療する必要があったか否か。担当歯科医師は,奥歯から治療することについて患者の同意を得たか否か。
②担当歯科医師が装着した患者の上顎左右2番は出っ歯であるか。
③当歯科医師が装着した患者の奥歯が破折した原因は何か。破折は担当歯科医師の過失に基づくものであるか否か。

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

歯科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

歯科治療において,不適切な治療はないとされ,治療に不満の場合に治療費を返還する内容のパンフレットに基づく治療費返還請求も認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成12年(ワ)第11120号 損害賠償請求事件
平成13年6月21日判決
【治療方法,時期】

<事案の概要>

患者(女性)は,平成7年7月27日,交通事故に起因する顎関節の不調及び補綴物の破損を訴えてA歯科医師が開設する被告歯科医院を受診した。A歯科医師は,患者の顎関節の不調が,交通事故による衝撃で本来的な噛み合わせ位置を忘れた状態で,顎の安定が得られず,噛み合わせに違和感が生じたためと判断し,マウスピースの装着で,交通事故の影響を受けていない歯を基準に噛み合わせを設定した。破損した補綴物は,取り外し,金属製の部分床義歯を作成して装着した。

患者は,被告歯科医院での治療を,平成10年10月30日に終了し,治療費については自動車損害賠償責任保険から全額支払われた。被告歯科医院のパンフレットには,「治療結果にご不満の場合,治療費は全額お返し致します。」と記載されていた。

患者は,平成11年5月ころ,めまいがして歩行できないような状態になり,救急車で搬送されたが,原因は不明であった。

患者は,同年9月,金属アレルギーがあるにもかかわらず,金属製の義歯を装着されたこと,顎関節の不調,及び,めまいの症状を訴えて甲歯科を受診した。担当したB歯科医師は,交通事故のショックにより顎位が下がり(低位咬合),三半規管に何らかの影響を与えていると考え,顎位を垂直的に移動させるため,患者にマウスピースを装着したところ,1か月ほどでめまいが消え,日常的な作業が支障なく行えるようになった。B歯科医師は,金属製の義歯を外してセラミックの歯を装着した。

患者は,被告歯科医院を開設するA歯科医師に対し,主位的にA歯科医師が行った歯科治療が不適切であったとして不法行為に基づき損害賠償を,予備的に本件パンフレット上の記載内容の特約を締結したとして治療費相当額の返還を請求する訴訟を提起した。

請求金額

260万1790円(予備的請求113万8240円)

結  論

請求棄却

争  点

①A歯科医師が行った噛み合わせの治療が適切であったか否か。
②特約に基づく治療費返還請求権の有無

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