光樹(こうき)法律会計事務所 医療事故・医療過誤の法律相談 全 国 対 応 電話相談可

お問合せ
平日10:30~17:00
03-3212-5747
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

頬骨を削る美容整形術で神経損傷を生じたことについて,担当医師に,手技上の過失,及び説明義務違反がいずれも認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第14008号 損害賠償請求事件
平成17年12月19日判決 控訴
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(男性)は,平成11年5月22日,被告クリニックを受診し,9月4日,担当医師の執刀により,左右の頬骨体部及び頬骨弓部削り手術を受けた。手術では,患者の左右の鼻翼基部の裏側に当たる口腔内を左右とも切開して開口し,口腔内の開口部から器材を用いて患者の頬骨体部の骨皮質を削り取り,頬骨の突出を軽減した上で,開口部を縫合し,患者の左右のこめかみ部の頭髪の生え際付近の皮膚を切開して開口し,同部から器材を用いて左右の頬骨弓部を削り取って少し低位に形成した上で,同開口部を縫合した。患者は,9月6日,被告クリニックを受診し,担当医師に対し,顔がパスケットボールみたいに腫れ,痛みがあるなどと訴えた。患者は,同月11日,被告クリニックに電話し,熱がある,左側鼻の横の感覚がない,腫れがひどい等の症状を訴えた。同日,患者は,甲大学医学部附属病院を受診し,両頬骨削り手術を受けたが,術後より両頬部が腫脹し,1週間経っても軽快しないと訴えた。同月16日,患者は,乙病院を受診し,歯科のA医師の診察を受け,術後の腫脹,やや麻痺があり,感覚は弱く,口唇麻痺は一時的で,術後経過としてはノーマル,しびれは2〜3か月続くであろうと診断された。患者は,平成13年1月19日,乙病院を受診し,A医師に左側上口唇部,左側鼻翼基部周辺違和感を訴え,術後から症状が持続しており,安静時に症状はないが,会話時に異和感があると訴えた。患者は,手術から1か月くらいしてから左鼻唇部が突っ張ったような感覚があると訴え,平成13年11月2日,甲病院形成外科のB医師の診察を受け,以後,同病院に通院した。平成14年3月26日,患者は,甲病院で異物肉芽腫摘出手術を受けた。診療録には,「犬歯窩の瘢跡,切除,更に皮膚側に患者の主張する索状物(動脈であった)があり,これを両端結紮して,約3.5cm切除,洗浄後縫合した」との記載がある。乙病院のA医師は,平成16年6月4日,傷病名として,「左眼窩下神経損傷」,附記として,「上記により左上唇に知覚異常があると思われる」と記載した患者の診断書を作成した。

患者は,知覚異常等の後遺障害を被ったのは,担当医師に手術手技違反,説明義務違反があったからであるとして,担当医師及び被告クリニックを開設する医療法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計927万9920円

結  論

請求棄却

争  点

①手技上の過失の有無
②説明義務違反の有無
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

被告病院の勤務医が他の美容クリニックで実施した顔面の脂肪吸引術について被告の業務の執行として行われたとはいえず,又,医師が,患者の承諾の範囲外の手術を行ったとはいえないとして,患者の損害賠償請求が棄却されたケース

 

東京地方裁判所 平成16年(ワ)第9627号 損害賠償請求事件
平成17年3月24日判決 控訴 判タ1185号235頁
【説明・問診義務,その他】

<事案の概要>

患者(女性)は,平成13年3月26日,被告病院(総合病院)形成外科を受診し,両側頬部の腫瘤状突起,及び,25年前の右えらの修整時に生じた下口唇の歪みの修整を希望した。被告病院形成外科部長であった担当医師は,被告病院では美容外科手術は実施しないことになっているため,自らが兼任している甲クリニックを受診するよう指示した。患者は,甲クリニックにおいて,担当医師の執刀により,顔面の脂肪吸引手術を受けた。

患者は,担当医師が承諾した範囲外の手術を行ったと主張し,担当医師の使用者である被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。担当医師は,訴訟に補助参加した。

請求金額

合計1030万円

結  論

請求棄却

争  点

①本件手術が被告の業務の執行として行われたか
②担当医師は,患者の承諾の範囲外の手術を行ったか
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

下顎骨隅角部を切除する美容整形手術において,患者との合意に沿った手術を行わなかった過失,患者の希望を把握するためペーパーサージャリー等を行わなかった過失,手術後の下顎の形状等について説明等を怠った過失,手術手技を誤って下顎骨に変形等を生じさせた過失がいずれも認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第20710号 損害賠償請求事件
平成16年7月28日判決 確定
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(昭和42年生,女性)は,平成12年9月18日,被告の開設する美容外科診療所を受診した。患者は,顔の輪郭が気になっており,下顎部のえら部分を削る手術を希望した。被告医師は,えらの部分を削るとすれば下顎骨隅角部を切除する手術を行うこと,手術に伴う合併症や危険性などを患者に説明した。被告医師は,カルテに下顎骨の図を記載し,その図に神経と血管の走行部位や下顎骨隅角部の切除予定部位などを記入し,患者に示しながら,切除予定部位の位置や形を説明し,えら部分は骨と筋肉で構成されており,神経や血管は温存すること,顔の輪郭を整える手術なので劇的な変化は期待できないことなどを説明した。患者は,平成12年9月27日,被告診療所を受診し,被告医師の執刀で左右下顎骨隅角部を切除する手術を受けた。同手術は,口腔内から切開を加え,下顎骨を露出させ,骨切除用の電動のこぎりで隅角部の出っ張った部分を,右側は直線状に1回,左側は一度直線状に切った後角度を変えてもう一度直線状に切る方法で,各々5㎜程度の厚さで切除した。その後,被告医師は,研削器械で下顎骨の切除面を削って円滑に仕上げるエッジシェービングを施した。患者は,2日間入院して退院したが,手術の約1か月後に被告医師の診察を受けた際,左下顎部が右側よりも大きいと訴え,その後,口を閉めたとき上下が合わない,顎の筋肉が曲がっている,顎に左右差がある,左の下顎部が2か所出っ張っている,右顎のラインも気に入らない,えらが残ると言っていたのにえらがなくなったなどと苦情を述べるようになった。

患者は,被告診療所を開設する被告医師に対し,下顎部の左右差などが生じたことに対する慰謝料などの支払を求めて損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計2414万9010円

結  論

請求棄却

争  点

①被告医師に患者との合意に反して下顎骨を過剰に切除した過失があるか。
②被告医師に患者の希望を把握する適切な措置をとらなかった過失があるか。
③術後,下顎の左右差が残ることや下顎隅角の形状が変化することについて説明等を怠った過失があるか。
④被告医師に適切な手術をせず患者の下顎部に左右差などの変形を生じさせた過失があるか。
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

エステティック施術後,患者から,皮膚疾患が生じたとの訴えがあったことにつき皮膚疾患の発症及びエステティシャンの過失が否定されたケース

 

大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第6465号 損害賠償請求事件
平成14年12月25日判決
【手技,検査,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和25年生,女性)は,平成13年6月27日,被告エステ店で美顔施術を受け,その後,顔の皮膚に接触性皮膚炎を発症し,顔全体が真っ赤になり,鼻を中心として皮膚全体がガサガサになり,目の下,頬,小鼻の横等に皺が多数現れたと感じるようになった。患者は,同年8月6日,被告エステ店でデコルテ(胸から肩,肩から背中までの襟ぐりの部分)の施術を受けたが,施術後,胸・肩から背中にかけての皮膚にも接触性皮膚炎を発症し,皮膚がガサガサになった上,縦にひび割れた状態になったと感じた。

患者は,平成13年10月30日,被告エステ店を経営する会社を相手方として民事調停を申し立てたが,被告エステ店と患者との間で,患者の皮膚の状態の悪化に関する認識に大きな相違があり,平成14年2月6日,調停不成立となった。

患者が,被告エステ店を経営する法人に対し損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

462万円

結  論

請求棄却

争  点

①患者の顔面・胸・肩から背中にかけて,被告エステ店での施術後に皮膚疾患を生じたか否か。
②担当エステティシャンは,エステティック施術で使用するオイル,化粧品等が患者に皮膚疾患を起こす危険性がないか否かをパッチテスト等で検査すべき注意義務を負っていたか否か。
③担当エステティシャンは,マッサージや美容機器を利用した施術を行うに当たり,施術によって皮膚疾患が発生しないようにすべき注意義務を負っていたか否か。
④担当エステティシャンに,美顔施術に当たってピーリング薬剤を使用すべきでないのに使用した過失があるか。

判  断

①患者は,複数の皮膚科医療機関に受診しているにもかかわらずいずれの医療に期機関においても継続的診療の必要がないと判断されているのであるから,患者に皮膚疾患ないしこれに起因する症状は現れていない。
②エステティシャンは,パッチテスト等の事前検査を行うべき注意義務を負っていない。
③主張が抽象的でいかなる注意義務か不明。
④ピーリング剤を使用したとは認められから、ピーリング剤を使用した過失はない。
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

自家脂肪注入による豊胸術について,担当医師らに手技上の過失は認められなかったが,説明義務違反が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成16年(ワ)第17189号 損害賠償請求事件
平成17年11月24日判決 控訴・和解
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(昭和36年生,女性)は,長女を出産後,乳房がやや下垂するようになり,二女出産後の平成3年ころ,甲クリニック(美容外科)において200から220cc程度の生理食塩水バッグを用いた豊胸術を受けた。患者は,三女の出産・授乳を終えたころから,乳房全体の下垂が目立つようになったため,再度豊胸術を受けることとした。患者は,既に挿入されている生理食塩水バッグはそのままにして,乳腺下に脂肪を注入すれば,乳房の下垂を改善できるのではないかと考え,平成16年3月ころ,被告クリニックに,数回電話相談をした上,被告クリニックにおいて脂肪注入による豊胸術を受けることを決意した。患者は,4月30日,被告クリニックを受診し,5月1日に自家脂肪注入による豊胸術を受けた。同日,患者は,午前9時ごろ被告クリニックを訪れ,診療録に住所,氏名等を書き込み,身長及び体重の測定を受け,手術代金の見積書を作成してもらい,身体の寸法計測や写真撮影を受け,治療費の支払のためのクレジット契約の申込書類を作成したが,その最中に,術前注意事項細目等の書面を渡され,指示されるままに署名をし,X線撮影を受け,午前10時03分ころまでに血液検査を,午前10時27分ころ心電図検査を受けた。その後,手術が開始され,患者の左右の臀部から大腿部にかけての脂肪が合計約300mlほど吸引され,患者の左右の乳房に注入された。その際,甲クリニックで挿入されていた生理食塩水バッグは抜去された。

患者は,手術で希望していた結果が得られなかったことから,被告クリニックの担当医師らに手技上の過失や説明義務違反があったなどと主張して,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計961万1820円

結  論

一部認容(認容額357万0660円)

争  点

①手技上の過失の有無
②担当医師らの説明義務違反の有無

認容額の内訳

①治療費用

169万9500円

②通院交通費用

2万1160円

③慰謝料

150万0000円

④弁護士費用

35万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

下眼瞼除皺術について,醜状痕が生じたことは否定されたが,説明義務違反が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第14286号 損害賠償請求事件
平成17年11月21日判決 控訴
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(昭和33年生,女性)は,豊胸術,鼻唇溝への脂肪注入及び頬への脂肪又はコラーゲン注入の手術を希望して,平成10年10月10日,被告クリニックを受診した。被告医師は,患者に対し,頬への脂肪又はコラーゲン注入については牛海綿状脳症(BSE)の影響でコラーゲンを用いることができないこと,脂肪注入はかえって凹凸が目立ちやすく頬の美観を損なうことを説明し,下眼瞼除皺術(下眼瞼の睫毛に沿い,その下約1㎜の距離で涙丘付近から外眼角部,上下眼瞼の境界部を経て目尻の皺の線に沿って約1㎝の部分まで皮膚を切開し,皮膚を剥離した上,眼窩脂肪と余剰皮膚を切除した上で,縫合する手術)を勧めた。被告医師は,患者に,手術について,出血,内出血,腫れることはあるが,時間とともに良くなること,しばらくはわずかに赤みがあるが時間が経つとほとんど分からなくなること,傷跡は時間が経てばほとんど気にならなくなることを説明したが,傷跡が完全になくなることはない,あるいは,傷が残る場合があることは説明しなかった。術後,患者には,両下瞼睫毛約2㎜の部分に,内眼角から外眼角にかけて睫毛に沿ってそれぞれ約3.5〜4㎝の手術後瘢痕,両下瞼に軽い陥没,左外眼角下部に小指頭大の瘢痕性の皮膚の隆起が残った。

患者が,被告クリニックを開設する被告医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1901万5000円

結  論

一部認容(認容額71万7500円)

争  点

①手術によって患者に醜状痕が生じたか。
②被告医師に,術後,傷跡が残ることについて説明義務違反があったか。

認容額の内訳

①手術費用

36万7500円

②説明義務違反に係る慰謝料

30万0000円

③弁護士費用

5万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

下顎の左右非対称及び両下顎の輪郭(えら張り)の改善のためになされた美容整形手術について,医師の説明義務違反,手技上の過失等がいずれも認められなかったケース

 

東京地方裁判所
平成14年(ワ)第9142号 損害賠償請求事件
平成15年(ワ)第688号 同反訴請求事件

平成17年4月25日判決 確定
【説明・問診義務,手技,検査,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(昭和43年生,女性)は,下顎の左側が右側よりも大きく,両下顎のえら(角部)が張っているのを改善したいと考え,平成13年3月24日,被告クリニック(個人病院)を受診した。被告医師は,4月27日,患者に対し,顔の左右非対称と両下顎の輪郭(えら張り)の改善のため,下顎骨体部の削除と両下顎骨角部を切除する手術を実施した。手術は,口の中を切開して下顎骨の切削除をする口内法で行われた。患者は,手術の結果,下顎の右側が大きく窪むなどし,その変形を治すため,再手術を受けたなどと主張して,被告医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

なお,本件手術に関しするインターネット上の書き込みについて,患者が,被告医師に対し,プライパシー侵害を主張(本訴請求)し,被告医師が,患者に対し,名誉段損を主張(反訴請求)して,各々損害賠償請求した。

請求金額

合計540万9967円
(ただし,うち300万円は,名誉毀損に関するもの)

結  論

一部認容
(合計80万円ただし,名誉毀損に関するもの)

争  点

①手術についての説明義務違反の有無
②検査義務違反・最適治療法選択義務違反(被告医師は,下顎の左右非対称の改善を図るに当たり,事前にMRI検査等の検査を実施して,下顎骨や咬筋の状態を正確に把握した上,これに最も適する治療方法を選択すべきであったか)
③手技上の過失の有無(被告医師は,左側の下顎骨体部を大きく切削除しようとして,誤って右側の咬筋を大きく切削除したか。)

認容額の内訳

慰謝料

80万円(ただし,名誉毀損に関するもの)

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

4回目の豊胸手術を実施しても効果が期待できず,危険性も高いことについて,担当医師の説明義務違反及び損害との間の因果関係が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第18653号 損害賠償請求事件
平成17年1月20日判決 控訴 判タ1185号235頁
【説明・問診義務,手技,治療方法・時期,因果関係,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和11年生,女性)は,平成8年1月30日,被告診療所を受診し,2月7日,担当医師により,頬部しわ取り術及び豊胸術(経腋窩大胸筋下食塩水バッグ挿入術)を受けた。手術では,両側の腋窩が切開され,皮下及び筋群の間にある組織を剥離してシリコン製食塩水バッグが挿入された。同月21日ころ,右乳房に少し被膜拘縮が認められた。患者は,左右の乳房の大きさに満足できなかったことから,3月6日,大胸筋下再剥離の上,バッグ入替術を受けたが,8月ころ,被膜拘縮を生じ,10月1日には胸部左右の被膜拘縮が原因で両側のバッグ入替術等を受けた。同月中に,既に被膜拘縮が疑われたインプラントの動きの悪化が見られ,平成9年2月7日,胸部両側が被膜拘縮に陥った。患者は,同月12日,大胸筋下に挿入したインプラントを除去した上で,従来の手術とは異なり,大胸筋の乳腺側を剥離し,そこに別のインプラン卜を挿入するバッグ除去術及び経腋窩両側大胸筋上乳腺下バッグ挿入術を受けたが,胸部に内出血を生じ,胸部中央部が左右交通し,浸出液が貯留する状況が発生し,右乳腺内に腫瘤も生じた。患者は,同月26日,経腋窩両側大胸筋上乳腺下バッグ除去術を受け,平成12年11月21日,被告診療所の受診を中止した。術後,胸部全体に内出血が見られ,左右の乳房下部に皮膚と胸壁が癒着し,瘢痕化して凹凸が見られ,左胸部上部は,筋肉や脂肪が凝結してしこりになり,陥没が見られる状態となった。平成12年11月9日以降,患者は,甲クリニックで治療を受けている。平成16年11月時点の患者の胸部は,胸部中央部にひきつりが残っているが,内出血の跡は消失し,胸部の瘢痕化や凹凸は改善し,インプラントが入れ替えられた状態であった。

患者が,被告診療所を経営する法人(代表者担当医師)に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1394万円

結  論

一部認容(認容額535万6260円)

争  点

①本件第1回手術の手技(胸壁の剥離範囲)に不適切な点があり,術後のマッサージ指導も不十分であったか。
②平成9年2月7日にインプラントを抜去すべき義務があったか。
③第1回及び第4回目の手術の際,説明義務違反があったか

認容額の内訳

①支払済み手術費・治療費

  1. 被告診療所分
    15万6260円
  2. 甲クリニック分
    320万0000円

②慰謝料

150万0000円

③弁護士費用

50万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

脂紡吸引及び脂肪注入豊胸術について,説明義務違反や術後管理に関する過失は認められなかったが,臀部から過度の脂肪吸引を行ったことについて過失が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第12535号 損害賠償請求事件
平成16年11月10日判決 控訴・和解
【説明・問診義務,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(昭和39年生,女性)は,平成13年3月,被告クリニックにおいて,被告A医師の執刀により大腿部と臀部から脂肪を吸引して乳房に注入する手術を,平成14年2月に,ふくらはぎから脂肪を吸引して乳房に注入する手術を,同年7月,上腕部及び臀部左後面(座骨結節部ではない)から脂肪を吸引して乳房に注入する手術を各々受けた。平成15年5月,手術で左側臀部に生じたくぼみを補正するため,両大腿部の内側から脂肪を吸引して左側臀部に注入する手術を受けた。

患者が,被告クリニックを開設する被告A医師及び被告B医師(被告A医師は平成13年3月から平成15年3月までの,被告B医師は平成15年3月以降の開設者・管理医師)に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1100万円(1384万円のうち一部請求)

結  論

一部認容(認容額69万7500円)

争  点

①説明義務違反の有無
②適正手術義務違反の有無
③術後管理義務違反の有無
④被告B医師の責任の有無

認容額の内訳

①第1回手術費用中,臀部脂肪吸引術相当費用

33万7500円

②慰謝料

30万0000円

③弁護士費用

6万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

美容整形手術後,腫れ,皮下出血が生じ,術後の行事に参加できなくなるおそれがあることを告知し,患者の意思を慎重に確認すべきであったのに,これを怠ったとして,説明義務違反が認められたケース

 

東京地方裁判所
平成14年(ワ)第13062号 損害賠償請求事件
平成14年(ワ)第9607号  債務不存在確認請求事件
平成16年1月28日判決
【説明義務,問診義務】

<事案の概要>

患者(昭和17年生,女性)は,社会福祉施設を経営しており,平成13年11月11日に開催される同施設の収穫祭で,和太鼓の集団演技に出演することになっていたため,その前に美容整形手術を受けたいと考え,同月5日,被告クリニックを受診し,被告クリニックを経営する担当医師に,美容整形手術について相談した。

担当医師は,患者から希望を聞き,カウンセリングをしながら被告クリニックでの美容整形手術について説明した。患者は,翌6日,担当医師との間で,二重まぶたの形成,隆鼻,顔の脂肪吸引,目の上の脂肪吸引,目の下の皺取りの美容整形手術を受けることを内容とする診療契約を締結し,同日,手術を受けた。

本件手術後,患者は,上まぶたの腫れが引かず,脂肪吸引によって顎の下に生じた皮下出血も治らなかったため,同月8日に行われた和太鼓の集団演技のリハーサルにも,同月11日の本番にも出演できなかった。

患者は,同月13日時点でも,未だ上まぶたの腫れと顎の下の皮下出血が目立つ状態であった。

患者が見た被告クリニックの広告には,二重まぶた形成術について「メスを使わないので傷や腫れの心配もなく最新の麻酔法により無痛のうちに終ります」,「もちろん直後から洗顔・アイメイク・コンタクトもOK!」,隆鼻術について「鼻の内側から最新のプロテーゼを入れるだけで,入・通院は不要です。最新の麻酔法により無痛のうちに終り,腫れの心配もありません」,「もちろん手術後の洗顔・メイクも可能です」,脂肪吸引について「大切な神経や血管を傷つけることはないので安心・安全です」,「メスを使わないため,傷の心配は全くありません」,「入・通院不要。シャワーも翌日からOKです」などと記載されていた。

担当医師が,患者に対し,診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務の不存在確認を求め,患者が,担当医師に対し,担当医師が手術後に腫れや皮下出血が生じるという説明を怠ったなどと主張して,診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求め,提訴した。

請求金額

415万2082円

結  論

一部認容(認容額90万円)
※担当医師からの債務不存在確認請求は却下

争  点

手術後に腫れや皮下出血が生じることを説明しないで手術を施行した過失の有無

認容額の内訳

①慰謝料

80万円

②弁護士費用

10万円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

被告クリニックの診療録と搬送先病院の診療録が全く異なっており,被告クリニックの診療録の記載がねつ造であると認められ,又,豊胸手術中の麻酔管埋に過失が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第11664号 損害賠償請求事件
平成15年11月28日判決
【入院管理,診療録改ざん,麻酔管理】

<事案の概要>

患者(昭和48年生,女性)は,雑誌の広告を見て被告クリニックを受診し,豊胸手術を希望した。患者は,豊胸手術実施後,震え,筋強直,40度以上の体温上昇等が生じ,担当医師が救急要請し,甲病院(大学病院)に搬送されたが,患者には低酸素脳症による重度の障害が残り,植物状態になった。

患者及びその夫が,被告クリニックを経営する担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億7881万8042円

結  論

一部認容(認容額合計1億7051万8042円)

争  点

①診療録のねつ造の有無
②麻酔管理を十分行わなかった過失の有無

認容額の内訳

患者について

①逸失利益

5911万0187円

②後遺症慰謝料

2600万0000円

③入院雑費,介護費用等

7320万7855円

④弁護士費用

800万0000円

患者の夫について

①慰謝料

400万0000円

②弁護士費用

20万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

医療レーザー脱毛治療について,レーザー照射後の冷却に過失があったとされたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第21955号 損害賠償反訴請求事件
平成15年11月27日判決
【手技,その他】

<事案の概要>

患者(昭和43年生,男性)は,平成12年4月10日,被告クリニックを受診し,同クリニックを開設する法人との間で,保証期間5年,頬部,顎下部,口元下部の医療レーザー脱毛診療契約を締結した。

患者は,同日から,被告クリニックで医療レーザー脱毛治療を開始したが,同年8月20日に被告クリニックで受けたレーザー照射後である同月23日,左右の顎下の部分及び右下の口角部に熱傷と考えられる水疱,毛膿炎と考えられるかさぶたが生じ,その後,右下の口角部に5mmX8mm大の色素沈着が残った。

平成14年2月23日,被告クリニックが患者の診療予約をキャンセルし,患者はその後,被告クリニックで医療レーザー脱毛治療を受けたことはなく,診察を求めたこともない。

患者が,被告クリニックを開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

949万円

結  論

一部認容(認容額15万円)

争  点

①平成12年8月20日の医療レーザー脱毛治療に過失があったか否か
②治療拒否について債務不履行に当たるか否か

認容額の内訳

①慰謝料

10万円

②弁護士費用

5万円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

ニキピ除去のためのケミカルピーリング後,顔に肥厚性瘢痕が生じたことについて,医師の経過観察義務及び処置義務違反が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第3856号 損害賠償請求事件
平成15年10月23日判決
【検査義務,治療方法・時期,経過観察義務,処置義務,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和45年生,女性)は,平成11年10月11日,ニキビを除去するため,被告クリニックを訪れ,顔にケミカルピーリング(化学的皮膚剥削術)の施術を受けた。施術の内容は,①顔面パック10〜15分,②イオン導入約5分間(ピーリング剤:グリコール酸10%溶液),③水を含んだスポンジでの中和,④ピーリング剤(乳酸5%)顔面塗布約3分間,⑤水を含んだスポンジでの中和,⑥ビタミンC10%ローション約1分間,⑦水を含ませたガーゼでのふき取り,⑧グリチルリチン酸液顔面パック約15分というもので,看護師により実施された。

患者は,施術中に痛みを訴えたが,看護師は,施術を中止しなかった。患者が,施術後,看護師に対し,顔が赤くなっていて恥ずかしくてこのまま外に出られないと伝えたところ,看護師がマスクを渡したので,患者は,マスクを付けて帰宅した。

患者は,施術翌日,顔全体が腫れ上がり,痛みも治まらず,口唇の周りがびらんになっていたことから,被告クリニックへ行き,痛みを訴えたところ,担当医師は,エキザルベ軟膏を処方し,びらん部分をガーゼで保護した。患者は,同月17,21〜23日,被告クリニックを受診し,同様の措置を受け,同月23日にはびらん部分は改善したが,11月8日,一部潰瘍になっている疑いが生じ,11月27日治療していた部分が再度びらんになり,一部潰瘍化し,口唇周囲の発赤,色素沈着が著明となり,12月27日,患者の下顎の潰瘍となっていたところが隆起して肥厚性の変化をきたした。

担当医師は,その後5回のケミカルピーリング(最後の2回はトリクロロ酢酸30%溶液を10〜20秒で使用した)やケナコルト注射を行うなどして,症状改善に努めたが,最終的には,患者の顔面に鶏卵大の肥厚性瘢痕が残った。

患者が,被告クリニックを経営する担当医師に対し損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

4147万2262円

結  論

一部認容(認容額761万5908円)

争  点

①本件施術によって,肥厚性瘢痕が生じたか否か
②問診,皮膚の観察,プライミングの実施等を怠ったか否か
③患者が痛みを訴えた際,本件施術を中止すべきだったか否か(経過観察・処置義務違反)

認容額の内訳

①通院交通費

1万6800円

②逸失利益

329万9108円

③慰謝料

360万0000円

④弁護士費用

70万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

豊胸手術の際,切開位置を誤った過失が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第22617号 損害賠償請求事件
平成15年7月30日判決
【手技】

<事案の概要>

患者(昭和40年生,女性)は,被告クリニック(個人病院)の豊胸手術の広告記事を見て豊胸手術を受けることとし,平成13年10月,被告の経営するクリニックを受診した。患者は,担当医師の診察を受け,同医師に対し,広告記事のとおり脇の下の目立たない位置からシリコンパックを入れるよう依頼した。担当医師は,患者に対し,カルテに上半身の図を書いて脇の下に切開線を書き込むなどして手術方法を説明したが,その図は大まかに切開する部位を示したものにすぎず,実際に切開する線を正確に図示したものではなかった。

それから10日後,患者は,手術の結果は各人各様であり医師の指示を受けるべきこと,3〜6か月後くらいに再手術を行うこともあり,経過観察は重要であるから,医師の指示する日に必ず通院すべきことなどの注意事項が書かれた手術申込書に署名押印した上,担当医師の執刀で,両胸に脇の下から各300mlのシリコンパッグを挿入する豊胸手術を受けた。

手術から約半年後,患者は,切開部分のテープが剥がれたために傷痕を見たところ,傷痕が左右で異なっており,左側は正面から傷痕が見えることに気付き,被告クリニックに電話をし,抗議の上,担当医師に傷痕を見てもらいたいと述べた。しかし,被告クリニックでは,看護師が患者の傷痕を撮影したものの,担当医師自身が患者の傷痕を見ることはなく,患者に対し,被告クリニツクの顧問弁護士と交渉するように伝えたのみであった。

患者は,同年11月下旬,大学病院の形成外科を受診し,瘢痕修正手術を行うこととし,平成14年1月上旬に瘢痕修正手術を受けた。豊胸手術後,右側は脇の下が切開されており,腕を下ろすと傷痕が腕の下にほぼ隠れるのに対し,左側は,数cm程度脇の下から乳房寄りの場所が切開されたため,腕を下ろしても切開部分隠れず,外部から視認ができる状態で,瘢痕修正手術後も状態は大きく変わらなかった。

患者が,被告クリニックを経営する担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

899万1521円

結  論

一部認容(認容額297万4110円)

争  点

担当医師に,豊胸手術を行う際,切開位置を誤って目立ちやすい位置に傷痕を残した過失があるか否か。

認容額の内訳

①被告クリニックへ支払った手術費等

107万1000円

②瘢痕修正手術費等

10万3110円

③慰謝料

150万0000円

④弁護士費用

30万0000円

医療過誤 医療事故 弁護士68.png

美容整形における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

シリコンボール挿入術について,術後の包帯の巻き方等の指導・説明義務違反が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成11年(ワ)第11341号 損害賠償請求事件
平成13年7月5日判決
【説明義務,問診義務】

<事案の概要>

患者(昭和21年生,男性)は,平成11年1月7日,被告診療所において,シリコンボール挿入術(陰茎にシリコンボールを挿入する手術)のカウンセリングを受け,手術部位の圧迫固定が不十分である場合,シリコンボールが露出する可能性,及び,感染の可能性を説明され,同月16日,同手術を受けた。患者は,手術直後,担当医師から,消毒方法及び包帯を取り替える方法の説明を受けた。

同年2月1日,切開部分周辺に圧迫固定の不十分に起因する浮腫が認められたため,担当医師は,患者に対し,包帯を手術部位からずれないように巻くよう説明したが,同月6日,切開部分の一部からシリコンボールが露出したため,同日,シリコンボール抜去及び当該部位の壊死組織の除去手術が実施された。

同月8日,陰茎の絞扼輪部分の包皮に水庖が,亀頭と絞扼輪の間に浮腫が各々認められたため,担当医師は,患者に対し,包帯を緩く巻くよう説明したが,同月16日,陰茎包皮表面に一部びらんが認められ,同月21日,亀頭と絞扼輪の間に浮腫を生じ,絞扼輪の谷間がびらん状になって,皮膚の一部に亀裂が生じたため,担当医師は,患者に対し,包帯を手術部位の上に緩く巻くよう説明した。

患者は,同月23日,別の病院を受診した。患者の陰茎は,亀頭と絞扼輪の間に浮腫があり,絞扼輪に残った瘢痕の周辺の皮膚が壊疽し,瘢痕の拘縮により陰茎自体約30度曲がり変形していた。

患者の陰茎は,創傷が治癒し,変形等もなくなったが,瘢痕の拘縮が認められ,手術による傷の部分のひきつれが残り,若干皮膚が感り上がった状態で平成12年11月17日に症状固定となった。

患者が,被告診療所を開設する担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

2200万円

結  論

一部認容(認容額110万円)

争  点

①手術前の説明において,陰茎の変形等の危険性を説明すべきであったか。
②手術後に包帯の巻き方等について十分な指導,説明をすべき義務を怠ったか否か。

認容額の内訳

①慰謝料

100万円

②弁護士費用

10万円

医療事故・医療過誤(医療ミス)について法律相談をご希望の場合には,『医療事故調査カード』をダウンロードし,必要事項をご記入の上,当事務所宛にご郵送ください 担当弁護士が内容を拝見した後,ご相談日をご連絡いたします 電話相談も可能です

 歯科・精神科・美容のご相談は受け付けておりません

光樹(こうき)法律会計事務所 

〒100-0005 東京都千代田区丸の内2丁目5番2号 三菱ビル9階 969区

※丸ビルの隣、KITTEの向かい

TEL:03-3212-5747(受付:平日10:30~17:00)

F A X  :03-3212-5740

医療事故・医療過誤(医療ミス)についての法律相談をご希望の場合には、下記『医療事故調査カード』をダウンロードし、必要事項をご記入の上、当法律事務所宛にご郵送ください。なお、歯科・精神科・美容相談は受け付けておりません

※担当弁護士が内容を拝見した後、ご相談日をご連絡いたします。