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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神病院に入院中の患者が無断外出して自殺を図ったことについて,医師に患者の自殺を防止するための監護・監視義務違反が認められなかったケース

 

大阪地方裁判所
平成16年(ワ)第13389号,
平成17年(ワ)第6120号 損害賠償請求事件
平成18年2月8日判決 控訴
【入院管理】

<事案の概要>

患者(昭和8年生,女性)は,平成15年3月ころ,不眠,食欲不振,心身状態の異常などをきたし,自殺したい旨口走るようになった。患者は,4月1日,散歩中に電車に飛び込もうとしたり,ベランダから飛び降りようとする行為が見られた。5月1日,患者は,被告病院を受診したが,入院治療の意味を理解できる精神状態ではなかったため,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神福祉法」という)33条に基づき,患者の家族を保護者としてその同意を得て,被告病院に医療保護入院することとなった。同日,患者は,うつ状態等と診断され,閉鎖病棟に入院した。閉鎖病棟入院中,患者は,不眠,拒食傾向にあり,自殺企図を口にすることもあり,うつ状態が疑われ,妄想的な訴え,食欲不振,不眠の訴えが続いたが,6月には,食欲不振,不眠,だるさ等を訴えたものの,落ち着いており,周囲への関心が高まる様子があり,抑うつ感が改善傾向にあった。そのため,患者は,6月20日から精神福祉法23条の3に基づく任意入院に切り替えられ,開放病棟へ転棟した。その後も,患者は,食欲不振,妄想様の訴えを続け,言動は,依存的で,しんどい,できない等訴えたが,実際は自分でできていたり,院内散歩を開始するようになり,定められたルールも守り,無断で被告病院の敷地外に外出することもなかった。医療保護入院に際し,精神保健指定医はA医師,主治医はA医師,B医師であり,A医師が入院期間中の患者を診察していた。患者は,7月29日,被告病院を無断外出し,近接する団地建物4階から転落した。患者は,被告病院で応急処置を受けた後,救急センターに転送され,出血性ショック,頭蓋骨・頭蓋底骨折,脳挫傷(挫傷内血腫),急性硬膜下血腫,両側多発肋骨骨折等と診断され,緊急手術,開頭手術等の手術を受けて一命を取り留めたものの,12月28日,身体障害者1級の認定を受けた。患者は,刺激を受ければ,左目を開けて反応する程度で,ほとんど意識が回復していない状態であり,全介護を要する状態が続いている。

患者及び患者の家族は,患者が,被告病院入院中に,飛び降り自殺を図り,身体障害者1級認定の障害を受けるに至ったのは,A医師に,自殺企図を有していた患者の自殺を防止するための十分な監護・監視を怠った過失があったことによるとして,A医師及び被告病院を開設する医療法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計4375万円

結  論

請求棄却

争  点

患者の自殺を防止するための十分な監護・監視を怠った過失の有無
(1)開放病棟に転棟させた過失の有無
(2)開放病棟転棟後の監護,監視を怠った過失の有無

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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神科に入院していた患者が,外出中自殺したことについて,精神科医に,外出許可を取り消さずに外出させた注意義務違反,及び外出の際に精神病薬を携帯させなかった注意義務違反がいずれも認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成16年(ワ)第13921号 損害賠償請求事件
平成17年12月15日判決 確定
【入院管理】

<事案の概要>

患者(昭和58年生,男性)は,平成15年7月,精神疾患を理由に被告病院精神科に措置入院し,A医師及びB医師の診療を受け,同年9月ころから,A医師から外出許可を受けて外出していた。患者は,平成15年9月20日から21日にかけて,A医師の許可を受け,自宅に1泊した。患者は,翌22日,A医師より同月24日の外出許可を受け,24日当日,B医師の診察を受けて最終的な外出の許可を得た後,患者の姉とともに外出したが(薬は携行しなかった。),外出先で突発的に走り出し,その後,飛び降りて自殺したところを発見された。

患者の家族(父,姉2名)が,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計6562万8018円

結  論

請求棄却

争  点

①A医師又はB医師に,平成15年9月20日に外泊した後の患者の状態から,その後の外出許可をすべきではないのに許可した注意義務違反があるか。
②B医師に,平成15年9月24日の外出許可を決定した際,患者又は患者の姉に薬を携帯させなかった注意義務違反があるか。

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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神病院に医療保護入院中の患者が転倒して重傷を負ったことについて,薬剤の過剰投与の過失については判断されず,入院継続の違法性,及び,薬剤の投与と転倒事故との因果関係がいずれも認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第4625号 損害賠償請求事件
平成17年9月29日判決 控訴
【適応,治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和33年生,男性)は,昭和59年5月,甲病院(大学病院)において統合失調症と診断され,甲病院で入院(3回)及び通院して治療を受けていた。平成4年1月24日,患者は,甲病院の紹介で被告病院(精神病院)に入院した。同年6月23日,被告病院の医師らは,患者を精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく医療保護入院とした。その際,患者の弟が,被告病院に対し,患者の入院に関し,同月23日付け同意書を提出し,家庭裁判所から患者の保護者としての選任を受けた上で,同月29日付け同意書を提出している。患者は,平成5年3月18日,病室のベッドの上に立ち,上方の収納棚から荷物を取り出そうとした際,転倒してベッド上から転落し,頭蓋骨骨折,脳挫傷及び硬膜下出血の重傷を負った。被告病院では,患者に対しコントミン,フルメジン(抗精神病薬)及びウブレチド(神経因性膀胱等の治療薬)等の薬剤が投与されていたところ,転倒事故直前の投与量は,いずれも添付文書記載の最大用量を超えていた。

患者は,医師らが患者の意思に反して違法に入院を継続させた,薬剤の過剰投与の副作用による意識障害が本件転倒事故の原因であり,転倒事故により後遺症が残ったなどと主張して,被告病院を開設する医療法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計3626万7586円

結  論

請求棄却

争  点

①入院継続の適法性(医療保護入院以前の入院の性質及び医療保護入院の適法性)
②薬剤を過剰投与した過失の有無
③因果関係

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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神科通院中の患者が自殺したことについて,医師に,薬の処方及び患者に対する言動などの注意義務違反が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第22677号 損害賠償請求事件
平成16年11月1日判決控訴
【治療方法・時期,その他】

<事案の概要>

患者(昭和29年生,男性)は,青年期から躁うつ病等に罹患し,昭和50年ころ及び昭和54年ころ,自殺未遂歴があった。患者は,複数の病院を受診して薬剤の処方を受け,平成11年ころには,躁うつ病,統合失調症に対する処方薬であるテグレトールを投与されていた。患者は,平成11年10月15日,被告クリニック(個人病院)を受診し,統合失調症やうつ状態などと診断され,被告医師からテグレ卜ールあるいはバルネチール(躁病.統合失調症に対する処方薬)の投与を受けていた。処方内容は,10月15日テグレトール800㎎,同月25日パルネチール600㎎,11月 8日テグレ卜ール400㎎,バルネチール200㎎,平成12年1月18日テグレ卜ール350㎎,バルネチール200㎎,3月27日テグレトール400㎎,バルネチール600㎎,4月14日テグレトール800㎎,5月22日テグレ卜ール300㎎,同月30日テグレ卜ール200㎎であった。患者は,治療継続中の平成12年6月1日,投身自殺した。

患者の母親が,被告医師に対し,患者が自殺したのは,病名診断及び治療薬選択の誤り等の不適切な治療を行ったためであると主張して,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計3億円
(ただし,患者の逸失利益1億円並びに患者及び母親固有の慰謝料の合計額)

結  論

請求棄却

争  点

①被告医師の統合失調症との診断が誤りであったか。又,その診断がその後の不適切な治療の原因であったか。
②被告医師が,自殺未遂歴のある患者に,平成11年10月25日,テグレトールの処方を止め,パルネチールを処方したことが注意義務に違反するか。
③平成11年11月8日ころから患者に悪性症候群が発症しており,被告医師は,その時点で直ちにバルネチールの処方を止めるべきであったか。又,平成12年1月末以降,悪性症候群の発症を疑うべき患者の身体的変調がさらに著しくなったにもかかわらず,担当医師はこれに何ら対処しなかったといえるか。
④被告医師は,患者に精神的ダメージを与えるような不注意な言動をしたか。

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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

水中毒症状予防のための検査等を怠った過失は認められたが,当該過失と患者の死亡結果との因果関係が否定されたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第18085号 損害賠償請求事件
平成16年1月30日判決
【検査,治療方法,時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和29年生,男性)は,昭和48年ころ,破瓜型の統合失調症を発症し,その後,被告病院に入通院を繰り返していた。

患者は,平成12年7月18日10時20分,10回目の入院をし,同日12時に昼食を全量摂取した後,水を多飲する傾向があったことから,看護師から注意を受けた。患者は,翌19日,水を大量に飲み,同日15時40分の時点で,担当医師が,多飲による腹部膨満,嘔吐等を認めた。患者は,同日16時50分の時点で13kgも体重が増加し,同日17時,保護室に隔離されたが,17時45分,窒息又は肺水腫により死亡した。

患者の母親が,被告病院を開設する地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

4237万4325円

結  論

請求棄却

争  点

①担当医師らに,患者の水中毒を診断,治療しなかった過失があるか。

  • ア 平成12年7月19日15時40分の時点において,検査を怠った過失があるか。
  • イ 上記時点にで,個室や隔離室を利用した強制的な水分制限を怠った過失があるか。
  • ウ 上記時点あるいは同日16時50分の時点で,塩化ナトリウムの経口投与,高張食塩水輸液,利尿剤使用等の治療を怠った過失があるか否か。

②①の過失と患者の死亡との因果関係の有無

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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神科医が,患者の臨床所見や両親の説明等を総合して患者は統合失調症の可能性が高く,入院加療が必要であると判断し,患者の身体を拘束した措置が違法ではないとされたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第23612号 損害賠償請求事件
平成15年8月29日判決
【精神保健福祉法24条,医療保護入院】

<事案の概要>

患者(昭和52年生,男性)は,平成10年12月ころ,弟と喧嘩をして,鉄アレイで殴る事件を起こし,平成11年12月ころ,寮の隣室の学生がうるさいと隣室に押し入って,ナイフで相手方学生に傷を負わせるという事件を起こした。患者は,その後,実家に戻り,両親と3人暮らしになったが,両親に対しでも敵愾心をあらわにするようになった。患者の言動を心配した両親が,精神科等に相談したが,本人の受診を勧められるにとどまった。平成12年11月,患者の父親は,患者の攻撃的傾向がさらに著しくなったため,患者が家族や他人に物理的危害を加えるのではないかとおそれ,同月30日,警察に通報して保護を要請した。

警察官は,患者の精神障害を疑い,知事に対して精神保健福祉法24条に基づく通報を行うとともに,患者を被告病院(総合病院)へ同行した。

担当医師は,両親から事情を聴取して患者を診察し,統合失調症である可能性が極めて高く,入院加療のため医療保護入院が必要であると判断し,ドルミカム及びハロベリドールを注射して,四肢を拘束した。

翌12月1日,患者は,身体を拘束された状態で救急車で甲病院へ移送され,同病院でも統合失調症の疑いがあると診断され,平成13年2月3日まで入院した。

患者が,被告病院を開設している地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

700万円

結  論

請求棄却

争  点

①担当医師が,患者を統合失調症と診断して医療保護入院させたことが違法か。
②担当医師が,被告病院での入院中,患者を拘束したことが違法か。
③担当医師が,甲病院への移送の際,患者を拘束したことが違法か。
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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神科病院中,患者が呼吸停止状態に陥ったことについて,担当医療従事者らに適切な監視や救命措置を怠った過失が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第15057号 損害賠償請求事件
平成17年3月28日判決 控訴
【入院管理】

<事案の概要>

患者(昭和37年生,男性)は,14歳の時に統合失調症を発症したが,その後,社会人として生活を送っていたところ,平成12年5月25日,患者の妻が強盗被害に遭ったことを契機に不穏・不眠状態に陥り,6月13日,被告病院(精神科単科病院)を受診し,医療保護入院となった。被告病院入院後,患者は,抗精神病薬,抗不安剤,眠剤等の処方を受け,6月16日午前10時ころから栄養剤の点滴も受けていたが,同日正午過ぎころ,呼吸停止状態に陥った。午後1時05分,被告病院から甲消防署に救急要請があり,午後1時13分ころに救急車が被告病院に到着し,午後1時28分ころ患者は救急車で乙病院救命救急センターに搬送され,午後1時37分ころ,乙病院救急救命センターに到着した。患者は,蘇生後脳症と診断され,11月15日,乙病院から丙病院に転院したが,平成13年1月23日に死亡した。

患者の妻及び母が,被告病院の担当医療従事者らに患者に対する適切な監視や救命措置を怠った過失があったなどと主張して,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億2086万1445円

結  論

請求棄却

争  点

①担当医療従事者らが,6月16日の点滴治療中に,投与された薬剤の副作用によって患者が呼吸停止状態に陥ることを予見した監視態勢を敷くべきであったにもかかわらずこれを怠ったといえるか。
②担当医療従事者らが,6月16日の点滴治療中に患者が呼吸停止に陥った際,救急救命措置を怠った過失があるか
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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

急性骨髄性白血病の治療を受けていた患者が入院中の病院から失踪したことについて,医師らに,患者をに神科に受診させなかった過失や患者の精神状態に対する配慮を欠いた病状説明をした過失が認められなかったケース

 

東京地方裁判所
平成14年(ワ)第22232号 慰謝料請求事件(第1事件)
平成16年(ワ)第1542号 慰謝料請求事件(第2事件)
平成17年2月23日判決 控訴
【入院管理,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(昭和38年生,女性)は,平成11年1月,急性骨髄性白血病であると診断され,被告病院(国立病院)の血液内科に入院した(第1回入院)。血液内科のA医師が担当医,B医師が副担当医となり,患者に対し,抗癌剤を投与する化学療法(寛解導入療法)が開始され,白血病細胞がほぼ消失する完全寛解状態になり,その後,白血病細胞根絶のための化学療法が開始されたが,患者は,平成11年4月,点滴にうがい薬を注入して自殺を図った。患者は被告病院の精神科を受診し,抑うつ状態と診断され,週数回の面接(精神療法)と抗うつ薬,抗不安薬の投与を受けることになった。患者は,完全寛解の状態が維持されたため,平成11年7月に退院した。

平成11年9月,患者の急性骨髄性白血病が再発し,被告病院血液内科に緊急入院となった(第2回入院)。患者に対し,治験薬を使用した治療が実施されたが,寛解には至らなかった。そこで,末梢血幹細胞移植療法を実施することとなり,患者は,平成12年5月にいったん退院した。患者は,第2回入院の間,精神科を受診し,精神療法と抗うつ薬・催眠薬の投与を受けていた(抗うつ薬は,患者の精神状態が安定したため平成12年2月で打ち切られた)。患者は,平成12年5月,被告病院血液内科に入院し(第3回入院),末梢血幹細胞移植療法を受け,完全寛解の状態となったため,平成12年8月に退院した。患者は,第3回入院の間,精神科を受診し,精神科のC医師とD医師の診察を受けていた。精神科における治療は精神療法のみで,抗うつ薬や抗不安薬の投与は行われなかった。平成12年11月,患者は,急性骨髄性白血病が再発したため被告病院血液内科に入院した(第4回入院)。再発した急性骨髄性白血病に有効と考えられる標準的治療法は存在せず,予後は絶対的に不良と判断される状況にあったため,A医師やB医師は,転院が可能なうちに自宅付近の病院に転院し,家族と過ごす時間を作れるようにするのが最善の選択肢であると考えた。第4回入院期間中,患者が精神科を受診することはなく,精神療法や抗うつ薬,抗不安薬の投与も行われなかった。患者は第4回入院後,泣いたり看護師に不安を訴えることもあったが,体調の良いときなど笑顔が見られることも多く,治療に積極的な言動も見られた。患者は,平成13年1月中旬ころから,夜間尿などのため不眠を訴えるようになり,不眠でいらいらする様子も見られたため,催眠薬の投与,尿量を抑える点滴量の変更などの対処がされた。平成13年2月1日,A医師は,患者とその夫に対し,今は白血病の勢いがあまりなく,動くこともできる一番良い状態だが,次の治療を行うと状況は厳しくなること,自宅近くの病院に転院し,輸血を受けながら様子を見る選択肢もあり,そうすれば外泊も簡単にできることなどを説明したが,患者が退院せず治療を続けることを希望したため,患者の意向を容れ,他の医師とも相談して治療方針を決定すると回答した。A医師の説明の後,患者の夫から,患者の言動に理解できないところがあるので精神科を受診させてほしいと要望があり,A医師はC医師に対し,翌2月2日に患者を診察するよう依頼した。ところが,患者は,2月1日の夜,点滴を外した上,被告病院からタクシーに乗って無断外出し,そのまま失跡してしまった。

患者の夫と子が,第4回入院の際,A医師,B医師,C医師,D医師には,患者の精神状態に配慮して精神科を受診させる義務があったのにこれを怠った過失があり,又,平成12年2月にA医師が患者の精神状態に配慮せず退院を迫るような言動をしたことについても過失があるとして,A医師,B医師,c医師,D医師に対し,患者が失跡したことによる慰謝料の支払を求めて損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1200万円

結  論

請求棄却

争  点

①第4回入院当初,医師らに,患者を精神科に受診させる義務があったか否か
②患者に不眠などの症状が現れていた平成13年1月26日の時点で,患者を精神科に受診させる義務があったか否か
③平成13年2月1日のA医師の病状説明に不適切な点があったか否か
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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

患者が,PTSDとの病名を記載した診断書の交付を医師に要求したのに対し,医師が理由を説明した上で要求を拒絶したことが正当であるとされたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第476号 慰謝料等請求控訴事件
平成15年7月16日判決(原審・東京簡易裁判所 平成14年(ハ)第10776号)
【診断書作成,治療】

<事案の概要>

患者(昭和54年生,男性)は,平成13年8月,交際していた女性から身上関係等を偽られて精神的に不安定になったなどと訴えて,被告病院(大学病院)精神神経科を外来受診し,担当医師に対し精神状態を安定させてほしいと依頼した。

担当医師は,患者に対し,パシキルの投与が適切であると説明し,強迫性人格障害と診断した。

患者は,その後,月に1〜2回の頻度で被告病院を受診していたが,担当医師は,患者の症状が安定化に向かっていると判断し,平成14年8月19日で診療を終了した。

患者は,最終診療日において,担当医師に対し,上記女性に作成させた念書,示談契約書,死因贈与契約書等(患者に対し数百万円の金員の支払等を約束する内容)を提示した上,PTSD,パニック障害,強迫性障害及びうつ状態の病名を記載した診断書を書くよう依頼した。

担当医師は,患者はPTSDではないとして病名をPTSDと記載した診断書の作成に応じなかった。その際,担当医師は,患者に対し,上記女性から多額の賠償金を受け取ることは常識的に考えて妥当でないこと,患者(法学部在籍)が勉強した法律知識を自己図利目的で用いるのは了解し難いことなどを告げ,病名を強迫性障害及びうつ状態とする診断書を作成し,患者へ交付した。

患者が,担当医師に対し,治療が不適切であったとして損害賠償請求訴訟を提起したところ,第1審で請求が棄却された。患者は控訴し,控訴審において請求を交換的に変更し担当医師の暴言等により精神的損害を被ったとして慰謝料を請求した。

請求金額

90万円

結  論

請求棄却

争  点

①最終診療日における担当医師の発言は違法か
②担当医師が,患者にPTSDの病名で診断書を交付しなかったことが違法か
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脳神経外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

精神科医の処方薬についての説明,及び,診察における患者とのやりとりについて注意義務違反が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成13年(レ)第432号 損害賠償請求控訴事件
平成14年1月31日判決(原審・東京簡易裁判所 平成13年(ハ)第1516号)
【説明義務,問診義務,治療】

<事案の概要>

患者(女性)は,平成12年4月から8月ころの間,甲クリニックのA医師の診察を受けた。A医師は,心因反応(うつ状態)と診断し,デパス(抗不安楽),デプロメール(抗うつ剤)及び睡眠導入剤を処方していた。

その後,患者は,同年11月から12月まで,被告医院に通院し,被告医院担当医師(精神科医)の診察を合計4回受けた。

患者は,担当医師に対し,薬の副作用についての説明義務違反があり,又,担当医師が精神科医として不相当な発言をしたことにより,体調を崩すとともに,精神的苦痛を受けたとして,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

60万円

結  論

請求棄却

争  点

①担当医師が,患者に薬を処方する際に,その副作用等について十分な説明をしたか否か
②担当医師が,患者の診察に際し精神科医として適切な治療行為を行うための注意義務を尽くしたか
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精神科・心療内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

アルコール依存症を合併した境界性人格障害の患者が他県の病院への搬送途中に窒息死したことについて,搬送を指示した精神科医に,窒息の危険性のある搬送方法をとったのに搬送に随行しなかった過失が認められたが,損害が患者本人の慰謝料等に限定されたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第27819号 損害賠償請求事件
平成16年10月27日判決 控訴・和解 判タ1196号168頁,判時1887号61頁
【損害論,その他】

<事案の概要>

患者(昭和44年生,女性)は,境界性人格障害の症状が現れたため,平成10年11月から被告医師(被告クリニック開設者)の下で診療を受るようになったが,症状が改善せず,アルコール依存症を合併するなどして悪化傾向をたどり,自傷行為を繰り返し,自殺を図ることすらあった。被告医師は,患者の症状はアルコール依存症を合併した境界性人格障害であって重篤な状態であり,入院治療が必要と判断し,他県の病院へ医療保護入院(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律33条参照)させようと考え,平成13年1月13日,患者を甲病院へ搬送することとした。患者が,出発の際,入院を嫌がり,口を切るなどして出血したことから,ティッシュペーパーを口に入れ,タオルを猿轡のように噛ませてガムテープで固定し,呼吸抑制作用のある薬剤を含む注射(テラプチク,強力ミノファーゲンシー,セレネース5,ホリゾン10及びアキネトン)をした上,手足をタオルできつく縛って,車の後部座席に寝かせて搬送した。被告医師は,搬送には同行せず,当時被告医師の下で勤務していた看護学校の学生と事務員の2名が搬送を担当した。患者は,搬送途中,脈が弱くなり,呼吸が感じられなくなり,目的の病院へ搬入直後,心肺停止状態となり,蘇生措置が施されたが死亡した。

患者の両親が,被告医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億2437万4632円

結  論

一部認容(認容額 1780万円)

争  点

①患者の死因
②本件搬送における被告医師の過失の有無
③損害額

認容額の内訳

 

①患者本人の慰謝料

1500万円

②葬儀費用

120万円

③弁護士費用

160万円

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精神科・心療内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

患者の自殺を防止するための監護・監視義務違反が認められた一方,患者側の過失も認められ過失相殺されたケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第704号 損害賠償請求事件
平成16年2月9日判決
【入院管理,監護義務,監視義務,損害】

 

<事案の概要>

患者(昭和47年生,女性)は,平成12年3月ころから抑うつ状態となり,自殺企図が見られた。患者は,同年8月,被告病院(大学病院)精神科を受診し,以後,担当医師の投薬治療を受けるようになった。平成13年5月2日から同年12月17日まで,患者は,被告病院の閉鎖病棟に入院し,退院時にうつ病性障害と診断された。

患者は,平成14年2月5日,自宅マンションのベランダから飛び降り自殺を図ったため,同月6日,被告病院を受診した。担当医師は,患者が入院の適応であると考えたが,閉鎖病棟が満床であったため,入院予約して待機することとなった。

患者は,翌7日,自宅で酒と一緒に大量に薬を飲み,甲病院に救急搬送されたが,甲病院に閉鎖病棟がなかったため,甲病院医師は,被告病院の担当医師に対し,被告病院への転院を要請した。担当医師は,看護師長と相談し,閉鎖病棟に空きが出るまでの間,家族が24時間付き添いをし,モニター付きの個室で,家族の不在時及び夜間は施錠するという条件の下であれば受け入れ可能と判断し,担当医師から患者の母親に対しその旨を説明した上で,同月8日,患者を被告病院の開放病棟の個室に入院させた。

患者は,同月17日午前7時10分ころ,施錠中の病室で,カーテンレールに備え付けてあった点滴装着用の台フックにヘアードライヤーのコードを掛け,ベッドを踏み台にして縊死自殺を図り,心肺停止状態のところを看護師に発見された。

患者に対し,直ちに人工呼吸がなされ,救命救急センターに搬送されたが,蘇生後脳症の障害を負った。

患者が自殺に用いたヘアードライヤーは,患者が入院準備のために自ら詰めた荷物に入っていたもので,患者の母親が患者の妹に指示して,入院当日に病室に持って来たものであった。

患者が,被告病院を設置する国に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

1億0425万7864円

結  論

一部認容(認容額 3135万9860円)

争  点

①被告病院担当医師,看護師らの,患者の自殺を防止するための監護・監視義務違反の有無
②患者側の過失による過失相殺の可否・過失割合
③損害額(逸失利益の算定)

認容額の内訳

 

①逸失利益

3226万6434円

②慰謝料

2000万0000円

③以上の合計額

5226万6434円につき,4割の過失相殺

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