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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
肺癌手術に関し,説明義務違反が認められたケース
東京地方裁判所 平成14年(ワ)第3135号 損害賠償請求事件
平成15年10月9日判決
【説明・問診義務,手技,治療方法・時期,因果関係】
<事案の概要>
患者(大正13年生,男性)は,高齢者健診の胸部単純エックス線検査で右肺の陰影を指摘され,平成8年9月4日,被告病院の患者の娘の知人であるA医師の診察を受けた。検査の結果,胸部単純エックス線,胸部CTから,右肺下葉に直径27mmほどの腫瘍(本件腫瘍)が,右肺中葉には直径5mmほどの結節状病変(本件結節状病変)が見られ,縦隔リンパ節のうち3番リンパ節は約1cm大に腫大(本件リンパ節腫大)していることが判明した。
患者は同月9日,被告病院に入院し,A医師の紹介で,B医師(副院長)及びC医師が主治医になり,D医師(外科専門臨床研修医)も患者の診療を担当することになった。
9月18日,B医師が執刀し,C医師及びD医師が助手として,手術が行われた(第1回手術)。本件第1回手術では右肺中葉に小結節2個(迅速診断により乳頭状腺癌)を触知したため切除され,右肺中下葉切除及び第2b群リンパ節郭清(本件切除)が行われた。右肺上葉は結節状病変を触知しなかった。気管支断端部は有茎肋間筋膜で被覆して補強し,胸腔内にマイトマイシン等の抗癌剤を散布して閉胸された。
患者は,10月9日に被告病院を退院した。
患者は,同月25日,被告病院外来を受診し,気管支断端瘻又は肺瘻の疑いで被告病院に再入院することとなり,同月28日午後,気管支鏡検査が実施され,気管支断端瘻が判明したことから,気管支鏡下でフィブリン糊を注入し,瘻孔の閉塞がなされたが,翌29日に瘻孔が開き,同月31日午後にも瘻孔にスポンゼルを詰めた後,フィプリン糊を塗布したが,同日夕方には瘻孔が再び開いた。
患者は,呼吸状態や肝機能が悪化したが,その後,肝機能の改善が見られたことから,11月14日,B医師を執刀医,C医師及び、D医師を助手として,気管支断端瘻を閉鎖する手術が行われた(第2回手術)。第2回手術中,患者を背臥位から左側臥位にしたときに,左主気管支気管チューブの間から少量の右胸水が左肺内へ吸引された。患者は,第2回手術後,一時回復傾向が見られたが,平成9年4月には心配停止状態に陥り,蘇生したものの意識状態は回復することなく,平成11年2月死亡した。
患者の妻及び娘が,被告病院を開設している地方公共団体,B医師,C医師及びD医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 合計5000万円 | ||||
結 論 | 一部認容(認容額 合計275万円) | ||||
争 点 | ①第1回手術に関する説明義務違反の有無 ②第l回手術後に気管支断端瘻を生じさせた注意義務違反の有無 ③気管支断端瘻の発見・治療義務違反の有無 ④第2回手術において右胸水を左肺に吸引させた注意義務違反の有無 | ||||
認容額の内訳 | ①患者の慰謝料 | 200万円 | |||
②患者の娘の慰謝料 | 50万円 | ||||
③弁護士費用合計 | 25万円 |
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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
肺炎で入院していた患者に対する肺癌の検査・診断の過失,延命の蓋然性・相当程度の可能性が否定され,説明義務違反も認められなかったケース
大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第1038号 損害賠償請求事件
平成18年2月27日判決 控訴
【検査,治療方法・時期,因果関係】
<事案の概要>
患者(大正10年生,女性)は,平成11年1月7日と8日,被告病院(総合病院)を受診し,検査の結果,胸部レントゲン写真上,左右肺下野に肺浸潤陰影が見られ,肺炎像を示していたため,肺炎で入院適応と診断された。被告病院に空室がなかったため,患者は,いったん甲病院(内科)に入院し,同月13日,被告病院に転院した。担当医師は,検査の結果,患者を肺炎と診断し,甲病院での加療が奏功し,肺炎は改善傾向にあるとの認識の下,抗生剤を投与し,血液検査,胸部レントゲン検査,必要に応じ胸部CT検査をすることとした。
担当医師は,同月18日,患者の肺炎に改善が見られ,発熱も収まったため,レントゲン上の陰影の確認と他の疾患の可能性を調べるため,胸部レントゲン検査と胸部CT検査を指示した。担当医師は,同月19日,レントゲン上,肺炎像が消えたが陰影の改善が悪いので肺癌の可能性を疑い,同月21日,胸部CT検査の結果,悪性腫瘍の存在と肺内転移を認識したが,同月22日,癌の場合,治療開始の数日のずれが治療効果に影響することはないため,侵襲度の大きい肺生検は家族への説明と承諾を得て行うこととした。担当医師は,同月25日,患者の喀痰細胞診,エコー下での肺生検,CT検査を実施することとした。喀痰検査の結果は陰性で,患者が,同月26日から左側胸部に強い痛みを訴え,同月28日,整形外科で肋骨骨折と診断された上,同月27日から再び肺炎の症状が見られ身体状態が悪化したため,担当医師は,肺生検を延期し,侵襲度の小さい検査から実施することとした。担当医師は,CT検査で胸水の増加が見られたため,同年2月1日,胸水試験穿刺による細胞診検査をしたが結果は陰性で,肺癌の種類を確定できなかったため,同月10日,肺生検を実施し,未分化扁平上皮癌との組織診断結果を得た。患者は,同月16日,死亡した。
患者の長女は,被告病院を開設する法人及び担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 合計400万円 | ||||
結 論 | 請求棄却 | ||||
争 点 | ①肺癌の検査・診断を遅滞したか否か ②肺癌を認識後の検査の適否 ③化学療法・放射線治療による延命の蓋然性又は相当程度の可能性の有無 ④説明義務違反の有無 |
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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
肺癌切除術における手技,フィブリン糊等の使用,術後管理の過失がいずれも認められなかったケース
大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第5406号 損害賠償請求事件
平成17年4月27日判決 控訴・控訴棄却
【手技,入院管理,治療方法・時期】
<事案の概要>
患者(昭和16年生,男性)は平成12年3月15日,被告病院(大学病院)において,肺癌切除術(左肺上葉切除術・縦隔リンパ節部清術)を受けた。手術経過は,以下のとおりである。医師が開胸したところ,左肺上葉の腫瘤(肺癌)が,前方S3の部位にくるみ大で存在していた。縦隔胸膜を切開し,肺門を露出し,上肺静脈を結紮して上葉から離断し,上葉に流れる肺動脈3本(A1+2,A3,A4+5)を2重結紮して上葉から離断した。医師は,A3がやや太いと思いながら上葉への気管支を縫合器で機械的に閉塞して離断し,上葉を切除した。左肺上葉の腫瘤(肺癌)は,下葉への連続浸潤が疑われ,分葉不完全な部位があったことから,下葉の一部を部分合併切除した。術中の迅速病理検査では肺門部のリンパ節への転移は認められなかったが,縦隔リンパ節の郭清の範囲をR2aとした。下葉の部分合併切除等による肺実質切離・縫合部の針穴から空気が漏れていたが,医師は,患者が喘息による肺気腫を患っており,術中に空気漏れを完全に止めることは極めて困難であったことから,針穴にフィブリン糊をスプレー散布し,オキシセルで被覆した。胸腔内を洗浄し,出血がないことを確認してドレーンを留置し,肋間,筋層,皮膚を縫合して閉胸した。
術後24時間で790ccの血性排液がみられたが,1時間当たりの排液量は最大で100mlであり,2時間続けて100ml以上排液されたことはなく,術後5時間以上経過後,最大で70mlの排液量であった。同月17日未明,ドレーンから大量の出血が見られ,心肺蘇生措置が施されたが,心停止となり,患者は,出血性ショックにより死亡した。
病理解剖の結果,肉眼的所見では,左肺動脈A3を含む3本の上葉枝にかかる結紮糸に脱落やゆるみはなく,左肺動脈A3の分枝部末梢側から約5㎜にわたり亀裂が生じており,同部より出血したものと考えられた。組織学的所見では,肺動脈の中膜が菲薄で,左肺動脈の亀裂部を中心として切り出された肺動脈には,弾性線維の発達不良な部分が認められ,特に亀裂近傍は,中膜構築が乱れ不規則になっている場所があった。右肺動脈も組織学的に中膜が軽度菲薄で,弾性線維の発達不良な部分が認められ,それらの分枝である両側肺門部の肺動脈では,菲薄は明らかでなかったが,弾性線維の発達不良な部分が認められた。患者の左肺動脈の亀裂部周辺には,中膜の外側1/3に平滑筋細胞の変性と消失を示す部分が存在し,左肺動脈の亀裂部の極めて近傍に内膜の炎症細胞浸潤を伴う肥厚が認められた。
患者の家族(妻及び子ら)が,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 合計6364万4600円 | ||||
結 論 | 請求棄却 | ||||
争 点 | ①手術において操作を誤り血管を損傷した過失又は術部の観察を怠り血管損傷を見逃した過失があるか。 ②フィブリン糊等の使用方法を誤り血管の破綻を招いた過失の有無 ③術後,経過観察を怠り再開胸による止血措置を講じなかった過失の有無 |
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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
縦隔の未分化胚細胞腫に対し,担当医師が化学療法・放射線治療を行わず,腫瘍切除術を実施したことについて,過失が認められなかったケース
東京地方裁判所 平成14年(ワ)第22454号 損害賠償請求事件
平成16年12月27日判決 確定
【説明・問診義務,適応,治療方法・時期,転医義務,因果関係】
<事案の概要>
患者(昭和49年生,男性)は,平成12年12月初旬ころから血痰等があったため,同月7日,被告病院(大学病院)内科に入院した。検査の結果,前縦隔から左にかけて腫瘍が認められ,縦隔(左肺)の未分化胚細胞腫(疑い)・DICと診断された。患者は,喀血,血痰,呼吸苦,発熱が持続し,DICの治療も効果がないため,内科医師は内科的治療には限界があると判断した。患者は,外科に転科し,腫瘍切除術を受け,傷が回復し次第抗癌剤の治療を受けることになった。患者は,手術後,いったんDIC状態を脱したが,同月下旬ころから汎血球減少症の状態となった。外科医師は,患者の汎血球減少症の原因として,血液疾患の可能性を考え,血液疾患を扱う病院への転院を検討したが,複数の病院から転院を拒絶された。患者は,平成13年1月15日,未分化胚細胞腫(非セミノーマ)によって死亡した。
患者の両親が,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 合計3244万円 | ||||
結 論 | 請求棄却 | ||||
争 点 | ①未分化胚細胞腫の治療として,化学療法・放射線治療を行わずに腫瘍切除術を実施したことの適否 ②患者の予後等について説明義務違反の有無 ③転院義務違反の有無 ④因果関係の有無 |
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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
肺癌の疑いで開胸肺生検を行い,肺の一部を切除したことについて,担当医師の検査義務違反,説明義務違反等が否定されたケース
東京地方裁判所 平成14年(ワ)第14090号 損害賠償請求事件
平成15年12月22日判決
【説明・問診義務,手技,検査】
<事案の概要>
患者(昭和7年生,女性)は,平成9年12月24日,A病院の定期検診で胸部X線検査を受け,異常陰影があると診断されたことから,精査のため被告病院(総合病院)を受診した。CT検査等の結果,腫瘤が見つかり,肺癌の可能性があるとして,平成10年3月18日,開胸手術が実施された(本件手術)。手術で右肺のS6区域を切除されたが,採取された細胞の迅速検査の結果では,壊死及び腫瘍を疑わせる異型細胞を認めるが,癌であるかどうか判明しないというもので,術中迅速組織検査の結果は,肺クリプトコッカス症であり,病理検査最終報告では,腫瘍とアミロイド沈着を伴った異物性の肉芽腫(肺クリプトコッカス症を含むもの)とされた。
患者は,本件手術後,呼吸不全,切除部分の痛みなどが発生したため,被告病院退院後にも,甲病院及び乙大学病院ペインクリニック科に通ったが,呼吸不全,切除部分の痛み,身長の低下等の後遺障害が残った。
そこで,患者が,被告病院を開設する法人に対し損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 4042万8451円 | ||||
結 論 | 請求棄却 | ||||
争 点 | ①本件手術前に非侵襲的方法による検査(再度のX線・CT検査,血清学的方法,気管内採痰・気管支肺胞洗浄法〔BALF〕による細胞診)を行うべきであり,仮に肺生検が必要であるとしても,開胸手術よりも患者の負担が少ない侵襲的方法による検査(経気管支肺生検〔TBLB〕,CTガイド下肺針生検,胸腔鏡下肺生検)を行うべきであったか否か。 ②本件手術の必要性等についての説明義務違反 ③本件手術の開胸及び(肺の)切除範囲が必要な範囲であったか。 |
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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
肺腫瘍に対する外科的切除術に関し,開胸生検,肺切除術の適応があり,肺切除術の切除範囲も適切であって,開胸生検及び肺切除術実施前の説明義務違反もないとされたケース
大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第5895号 損害賠償請求事件
平成15年9月29日判決
【説明義務・問診義務,適応,治療方法・時期】
<事案の概要>
患者(大正12年生,男性)は,平成5年11月,定期健康診断で,胸部レントゲン上,左下肺野に腫瘤陰影を指摘されたため,近医の紹介により,同年12月15日,被告病院(総合病院)内科を受診した。被告病院内科のA医師は,画像所見上肺癌の疑いがあると考え,精査加療目的で,患者を入院させた。
A医師は,腹部CT検査等によって,癌の転移を疑わせる所見が認められないことを確認する一方,同月20日,画像検査で陰影が見られた部分の気管支鏡生検を試みたが,同陰影部分に生検器具を到達させることができなかったため,病理組織検査による確定診断ができなかった。
A医師は,肺癌の確定診断をすることができなかったが,肺癌の疑いが認められる以上,病理組織検査による確定診断の必要があると考えたが,針生検では腫瘤陰影近くの嚢胞を破裂させる可能性があると判断し,開胸生検によって組織採取を行い,術中迅速診断で肺癌であるとの診断がされた場合,引き続き,左肺下葉切除,嚢胞切除等の根治手術を行う治療計画を立てた。
A医師は,平成6年1月8日には,患者とその妻に対し,治療計画を説明した。患者は,開胸生検及び手術に対し,恐怖や迷いを覚えたため,いったん退院したが,同年2月1日に被告病院外科に入院し,同月23日,開胸生検及び左肺下葉切除等の手術を受けた。被告病院外科のB医師及びC医師は,D医師(病理医)の術中迅速診断によって,悪性線維性組織球腫(MFH)の可能性が最も高いとの診断が得られたことからMFHに対する根治手術として,左肺下葉切除,右肺上葉部分切除及び肺門・縦隔のリンパ節郭清を行った。
患者は,同年4月8日,被告病院を退院したが,平成9年6月ころから労作時に呼吸困難を覚えるるようになり,次第に症状が悪化し,平成13年12月には,呼吸器機能障害による身体障害3級の認定を受けた。
患者は,被告病院を開設する地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 2528万9272円 | ||||
結 論 | 請求棄却 | ||||
争 点 | ①開胸生検の適応があったか,肺切除術の適応があったか,肺切除術の切除範囲は適切であったか。 ②開胸生検及び肺切除術実施前の説明義務違反の有無 |
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