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呼吸器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

肺炎で入院していた患者に対する肺癌の検査・診断の過失,延命の蓋然性・相当程度の可能性が否定され,説明義務違反も認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第1038号 損害賠償請求事件
平成18年2月27日判決 控訴
【検査,治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(大正10年生,女性)は,平成11年1月7日と8日,被告病院(総合病院)を受診し,検査の結果,胸部レントゲン写真上,左右肺下野に肺浸潤陰影が見られ,肺炎像を示していたため,肺炎で入院適応と診断された。被告病院に空室がなかったため,患者は,いったん甲病院(内科)に入院し,同月13日,被告病院に転院した。担当医師は,検査の結果,患者を肺炎と診断し,甲病院での加療が奏功し,肺炎は改善傾向にあるとの認識の下,抗生剤を投与し,血液検査,胸部レントゲン検査,必要に応じ胸部CT検査をすることとした。

担当医師は,同月18日,患者の肺炎に改善が見られ,発熱も収まったため,レントゲン上の陰影の確認と他の疾患の可能性を調べるため,胸部レントゲン検査と胸部CT検査を指示した。担当医師は,同月19日,レントゲン上,肺炎像が消えたが陰影の改善が悪いので肺癌の可能性を疑い,同月21日,胸部CT検査の結果,悪性腫瘍の存在と肺内転移を認識したが,同月22日,癌の場合,治療開始の数日のずれが治療効果に影響することはないため,侵襲度の大きい肺生検は家族への説明と承諾を得て行うこととした。担当医師は,同月25日,患者の喀痰細胞診,エコー下での肺生検,CT検査を実施することとした。喀痰検査の結果は陰性で,患者が,同月26日から左側胸部に強い痛みを訴え,同月28日,整形外科で肋骨骨折と診断された上,同月27日から再び肺炎の症状が見られ身体状態が悪化したため,担当医師は,肺生検を延期し,侵襲度の小さい検査から実施することとした。担当医師は,CT検査で胸水の増加が見られたため,同年2月1日,胸水試験穿刺による細胞診検査をしたが結果は陰性で,肺癌の種類を確定できなかったため,同月10日,肺生検を実施し,未分化扁平上皮癌との組織診断結果を得た。患者は,同月16日,死亡した。

患者の長女は,被告病院を開設する法人及び担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計400万円

結  論

請求棄却

争  点

①肺癌の検査・診断を遅滞したか否か
②肺癌を認識後の検査の適否
③化学療法・放射線治療による延命の蓋然性又は相当程度の可能性の有無
④説明義務違反の有無

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