医療コラム『治療終了後,患者や遺族は医師に説明を求められるか?』

医師は,治療終了後,事の顛末を患者家族へ報告する義務がある!?

医療法律相談で,遺族から「入院中,患者が急変して亡くなったのに医師から何の説明もなかった。なぜ患者が死亡したか分からない。医療ミスではないか。」という相談を時々受けます。患者が亡くなり治療が終了した場合,遺族は医師に対し急変時の状況や死亡原因などの説明を求めることができるでしょうか。医師の説明義務は,患者の自己決定権を守るためにあり,医師は,患者が診療に関し自己決定するのに必要な情報を提供する義務がありますが,患者が亡くなると,もはや自己決定できないため医師には説明義務はないのではないかが問題となります。治療が終了した場合医師には,患者の自己決定権を守るための説明義務はありませんが,患者との間で診療契約を締結しているため事の顛末を報告する義務があります(受任者の顛末報告義務【民法第645条】受任者は,委任者の請求があるときは,いつでも委任事務の処理の状況を報告し,委任が終了した後は,遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。)。又,診療契約に付随する義務あるいは信義則上の義務としても医師は患者に対し診療結果を報告する義務があります。患者が死亡した場合も,診療契約に付随する義務ないし信義則上の義務として家族に対する説明義務があります。          

従って,遺族は,患者死亡後も,医師に対し,診療経過や死亡原因等の説明を求めることが可能です。

医師は死亡原因を解明する義務がある!?

遺族が,患者の死亡原因を明らかにするため病理解剖を希望した場合,医師に応じる義務があるでしょうか(死因解明義務といいます)。診療契約上,医師は患者や家族に対し顛末報告義務がありますが,死亡原因を解明しなければ医師は事の顛末を報告できませんから,死亡原因が不明で遺族から病理解剖等の要望があったときには,診療契約に付随する義務として死亡原因を解明する義務があるといえます。更に,医師に,遺族に対し病理解剖等死因解明に必要な措置を提案すべき義務まであるかについては,裁判所の判断は分かれています(東京地判平成9年2月25日判例タイムズ951号258頁,東京高判平成10年2月25日判例タイムズ992号205頁,判例時報1646号64頁)。医療事故の可能性がある場合には,医師が,死亡原因を解明する措置を遺族に提案し実施した方が,無用な医療紛争の発生や拡大を避けることができます。なお,遺族が解剖を承諾しない場合は医師に解剖する義務はありません。          

家族としては,患者の死を悼む感情から病理解剖の実施に強い抵抗を感じる場合が多いと思いますが,医療事故かなと思ったときは,事故の真相解明のため,又,仮に医療ミスがあった場合には病理解剖結果が重要な証拠になる可能性がありますので病理解剖やAi(オートプシー・イメージング:死亡時画像診断。CTやMRIで遺体を検査する方法)等,死亡原因を解明する措置をとるよう医師に要請した方が良いでしょう。

▲TOPへ戻る

医療過誤 医療事故 弁護士