医療コラム『危ない患者弁護士の見分け方!?』

医療法律相談を受けて医療ミスがない場合は,医療ミスはなく法的責任追及は出来ないとはっきり伝えます。患者や遺族からは,医療専門弁護士から医療ミスではないとはっきり言ってもらい気持ちの整理がつきましたと言われることが多いです。医療ミスがなければ受任しないというのは,患者弁護士として当たり前のことだと思います。しかし実際は,医療ミスがないのに弁護士が受任して証拠保全や裁判をするケースがあり,患者や遺族は,無用な紛争で時間とお金を無駄にすることになります。医療ミスに遭った後,さらに弁護ミスに遭うとはやり切れない話です。患者や遺族は,どうやって危ない弁護士を見分けたら良いでしょうか?

■危ない患者弁護士の見分け方(1) 自分より医学知識のない弁護士

コラム『医療事故からどうやって身を守るか?』で,医師に全てお任せにするのは危険で,自分の病気を知り主体的に病気とかかわることの大切さを述べました。弁護ミスに遭わない方法も同じことが言えます。弁護士に全てお任せにするのは危険です。弁護士が何でも知っている訳ではなく,まして医療紛争の相手は専門家ですから,弁護士に医学の知識と理解力がなければ病院を説得して過失を認めさせることはできません。患者や遺族は,医学知識のない弁護士に頼んでしまうと勝てるはずの紛争に負け,本来受けられるはずの補償を受けられないばかりか,払った弁護士費用も無駄になります。弁護ミスに遭わないために,患者や遺族は弁護士に依頼する前に,病気と治療法について良く調べ,少なくとも自分より医学知識のない弁護士には依頼しないことです。

■危ない患者弁護士の見分け方(2) 不必要な証拠保全をする弁護士

医療法律相談の9割は,そもそも医療事故ではないのに患者や遺族が医療事故だと思い込んでいるケースです。医学の知識や理解力のある医療専門弁護士は,患者や遺族から話を伺えば明らかに医療ミスではないケースは直ぐ分かります。しかし,医学知識の乏しい弁護士は,臨床上全く問題のないケースであっても医療ミスか否か判断することが出来ず,無用な医療紛争を引き起こしてしまいます。

医療ミスの可能性がある場合,カルテの改ざん・隠匿を防ぐため証拠保全という裁判所の手続きにより診療記録一式のコピーを入手しますが,申立費用,弁護士費用,カメラマン費用等でかなりの費用がかかります。医療事故が起きて診療録を精査しなければ過失の有無が判明しない場合は,証拠保全を実施すべきですが,医療事故ですらないのに証拠保全をすれば,弁護士が利益を得るだけで,患者や遺族は無用な出費をさせられます。不必要な証拠保全をされては,病院や医師も業務に支障を来たし他の患者に迷惑がかかる場合もあるでしょう。不必要な証拠保全の申立てが増えれば,裁判所も証拠保全に消極的となり,証拠保全をすべき場合に認めて貰えない事態が生じる可能性も否定できません。

患者や遺族は,自分のケースで証拠保全が必要か考え,疑問に思ったときは契約をする前に弁護士になぜ証拠保全をするのか説明を求めた方が良いです。

■危ない患者弁護士の見分け方(3) 協力医がいない弁護士

なぜ証拠保全をするかというと,全ての診療記録を漏れなく入手し,専門医による過失調査を行い医療ミスの有無を判断するのが目的です。ところが,医療法律相談で,「他所の法律事務所で証拠保全をやってもらったが,過失調査を依頼する協力医がいないので自分で探せと言われた。医師の知り合いがいなくて困っている。」という患者や遺族が時々訪れます。協力医がおらず専門医による過失調査を実施できないのに,証拠保全だけやって後は知らん顔をするような弁護士が存在する実態に愕然とします。専門医による過失調査ができない弁護士は,始めから証拠保全を実施すべきではないのです。過失調査をするつもりのない弁護士に依頼し,証拠保全は実施されたものの,過失の有無を判断するのに必要な診療記録が保全できていなかったという場合もあります。これでは証拠保全を実施した意味がありませんから,証拠保全にかかった費用が無駄になります。足りない診療記録は,病院にカルテ開示請求をして任意に開示して貰う他ありませんが,改ざんや隠匿がされれば過失を証明できなくなり患者や遺族は本来受けられたはずの補償を受けられなくなります。

このような被害に遭わないため,患者や遺族は,弁護士と契約をする前に証拠保全の契約の中に過失調査が含まれるのか,また,過失調査を頼める協力医がいるのかを確認したほうが良いです。

■危ない患者弁護士の見分け方(4) いきなり提訴する弁護士

専門医による過失調査の結果,過失がある場合,病院へ受任通知を送り示談交渉を開始します。損害賠償額には裁判所基準の算出方法があり示談でも裁判をしても賠償額は変わらず裁判費用・弁護士費用を考えると裁判所基準の損害賠償額で示談をすることが患者に最も有利です。また,裁判所は,裁判に至るまでの当事者双方の交渉経緯を重視し,事前の話し合いを全くしないままいきなり提訴するのを嫌います。病院弁護士が,明らかな過失があっても一切交渉に応じない方針の場合,患者は提訴せざるを得ませんが,この場合は原因が病院側にあるので事情を訴状に記載すれば良いわけです。ところが,特段の事情がないのに示談交渉を全く行わず,いきなり提訴する患者弁護士がいます。医療法律相談で,本人は医療ミスだと思い込んでいるけれど全く医療ミスのないケースの相談を受けたのですが,なんと弁護士が証拠保全を実施しており,過失調査を依頼する協力医はいないが裁判をすると言われ着手金の支払いを求められたということでした。医療ミスがないのにいきなり提訴するとはどういうことでしょうか。仮に,医療ミスがあるとその弁護士が考えたのだとしても,専門医による過失調査を経ず十分裁判の準備をしないまま裁判を起こしても勝訴の見込みはありませんから,提訴自体が目的と考える他ありません。医療裁判の場合,弁護士の着手金が高額なため,着手金目的で提訴している可能性も否定できません。

事故は起きるものだから補償すべきは補償し,事故の再発防止に繋げることで安心して医療を受けられるようにしたいという思いから医療事件を専門としている立場からは,どんなことがあっても医療事故を金儲けの道具にして欲しくないと思います。

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