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高齢者は放置!?術後管理不足により死亡した事件

患者は80代女性,胆のう摘出術を受けた後ショック状態に陥りましたが放置され処置の遅れから死亡した事件です。

患者は,胆のう結石症による胆のう炎の診断で相手方病院に入院し,腹腔鏡下胆のう摘出術を受けました。術後,呼吸状態が悪く尿量も少なく収縮期血圧が60台に低下し患者はショック状態に陥っていましたが,看護師が何度主治医にドクターコールをして報告しても,主治医は患者を診察せず,ショックに対する措置は講じられませんでした。患者はショック状態に陥ってから20数時間放置され,患者家族が見舞いに訪れたときにはナースステーションから最も遠い病室に置かれ低血圧でモニターのアラームが部屋中に鳴り響いている状態でした。家族は,看護師に直ぐに救急措置を実施するよう何度も求めましたが,看護師は「先生に報告しています。」と答えるのみで何の処置もされず1時間半ほどしてようやく医師が昇圧剤の点滴を開始しましたが患者の呼吸状態は更に悪化し下顎呼吸となり,家族はこの病院に置いておいては患者を死なせてしまうと考え,家族の要請で大学病院の救命救急センターへ緊急搬送されました。転院時,患者は腹膜炎による敗血症性ショックに播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発した重篤な状態に陥っており,後医で手厚い治療を受けましたが敗血症により亡くなりました。

専門医に過失調査を依頼

患者家族は,患者が治療目的で手術を受けたのに,腹膜炎による敗血症性ショックにDICを併発した状態になるまで放置され処置の遅れから死に至らしめたことに憤り,相手方病院に対し,術後管理義務違反を理由に損害賠償を請求しました。これに対し,病院側は,過失を否定したのみならず,患者はもとから重篤な胆のう炎があり,術後の対応の如何に関わらず敗血症による死亡は避けられなかったと主張して治療行為と死亡との因果関係も否定しました。そこで第三者である消化器外科の専門医に腹腔鏡の手術動画,病理解剖報告書を含む全ての診療記録を調査して頂いたところ治療行為に不適切な点があるのみならず不適切な治療と死亡との間の因果関係も明らかという結果が得られました。調査のポイントは,(1)手術に手技上の過失はあったか,(2)術後管理に問題はあったか,(3)術前に重篤な胆のう炎が存在したかの3点です。専門医の意見は,相手方医師は手術操作の際,胆のうを穿孔し膿性胆汁を流出させてしまいましたが,これ自体は手術の合併症であって手技上の過失ではないが(1),その後の洗浄不足・ドレナージの不備,及び,術後管理不足が過失であり(2),術前には病院が主張するような重篤な胆のう炎は存在せず,適切な術後管理がなされていれば患者が死亡することはなかった(3)という結論でした。

紛争を大きくする病院ないし病院弁護士

第三者である消化器外科医による医師意見書を提出し,相手方病院の説得を試みましたが,病院側は過失・因果関係を認めなかったばかりか,こともあろうに,転院させなければ救命出来た可能性が十分あったのに転院先の救命救急センターの治療が不適切だったせいで患者は死亡したと反論してきました。術後患者が危篤状態に陥ったのは自分たちの診療行為が原因なのに,治療が難しい患者を引き受けてくれた後医に医療過誤の責任を転嫁するとは信じがたい暴挙です。そのようなことをすれば,以後後医である大学病院は,相手方病院からの患者依頼を引き受けてくれなくなることが分からない病院あるいは病院弁護士は愚かとしか言い様がありません。医療事故で紛争を大きくするのは,実は病院や病院弁護士であることを示す良い例です。

■示談までに3年以上

相手方病院が,過失・因果関係を認めないため,更に第三者である複数の消化器外科の専門医に再反論の医師意見書を作成頂いたほか,後医である救命救急センターの医師に医療照会(患者の病状に関する質問書を送り回答を依頼すること)を行い医療照会回答書を作成して頂いて相手方病院へ提出したところ,交渉に3年以上かかりましたが最終的には3000万円で示談することができました。

この事件で裁判を回避し示談による円満な解決に至った決め手は,第三者である消化器外科の専門医の医師意見書と後医である救命救急科医師の医療照会回答書でした。医療事件は素人が手ぶらで闘っても交渉は上手くゆきませんが,専門医による詳細な過失調査を経て医学的問題点を明らかにすることにより早期円満解決に繋がることが多いです。同業者から誤りを指摘されるのが一番辛いといえましょう。

示談に3年以上かかっているのにどこが早期解決だと叱られそうですが,医療事件では交渉に3年かかることは珍しくありません。特に損害賠償額が高額になるほど時間がかかります。示談交渉が不調に終わった場合,提訴して裁判に2〜3年かかることを考えれば3年かかっても示談がまとまれば早期円満解決と言っても許されるのではないでしょうか?

高齢者は見殺し?

法律相談で,遺族から高齢の親が病院で見殺しにされた,というご相談を受けることが多いです。老衰で亡くなっており医療過誤とは言えない場合が殆どですが,中には患者が高齢者であるために放置されたケースもあります。本件のように,高齢の患者であっても手術をするということは生かす目的の治療ですから,術後管理は患者の年齢にかかわらず適切に行う必要があります。本件患者の看護記録には,看護師が主治医にドクターコールをし,血圧が60台に低下し尿量が少ないと報告したところ医師が「『もうそのままだね』と答えて指示を出さなかった。」とあり,数時間後,再度看護師がドクターコールして血圧60mmHg/30mmHgで声をかけても反応がなく尿が出ていないと報告しましたが,「『あとで行くから』と答えて指示を出さなかった。」と記録されており,主治医が患者の治療を放棄していたことが分かります。医師が,患者の状態が悪くなったことを知りながら診察をしないのであれば,なんで手術をしたのかと思います。手術をして治療費を得るのが目的だったのでしょうか。看護師は,医師の態度がよほど腹に据えかねたのか看護記録に記録を残しましたが,看護師も患者がショック状態に陥っており救命措置が必要であることを知りながら主治医に報告しただけで何の措置も講じず患者を放置していますので,患者を看護すべき注意義務に違反しているといえます。           

患者が高齢者の場合,本当はあってはならないことですが,現実には医療従事者の中に高齢だから亡くなっても仕方ないという暗黙の了解のようなものがあり放置するケースがあります。高齢の患者にとっては恐ろしい話ですが,放置されないためには,患者や患者の家族が医師・看護師とできる限りコミュニケーションをとり,入院加療の目的が「看取りではない」ことをはっきりと伝えることが大切です。

主治医についての後日談

本件の主治医は,事故当時外科部長の立場にありベテランの医師でした。事件の解決の為,複数の消化器外科医に過失調査と医師意見書の作成を依頼したのですが,相談した医師の中に偶々本件の主治医を知っている医師がいました。どんな医師か尋ねたところ,若い頃は仕事熱心な優秀な外科医だったと言われました。そんな医師がなぜ患者の診療を放棄する医師になってしまったのかと残念に思いました。

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