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夜間救急外来で不安定狭心症が見落とされ翌朝心筋梗塞で死亡した事件

患者は50歳男性,働き盛りのサラリーマン,数日前から胸痛・背部痛を覚えるようになり,痛みが酷くなったため仕事帰り,夜間救急病院を受診しました。当直医はベテランの外科医で,患者の症状から心筋梗塞と大動脈解離を疑い心電図,胸部レントゲン,胸腹部造影CT,血液検査を実施しました。CT検査の結果,大動脈解離を示唆する所見なく,心電図検査の記録紙に異常の心電図ST−T異常と印字されていましたが,医師は心筋梗塞に特徴的な波形が見られなかったことから緊急性がないと判断し患者をそのまま帰宅させました。患者は帰宅後も胸痛を訴えていましたが,医師から心筋梗塞ではなく緊急性がないと説明されたため我慢していたところ,翌朝,ベッドの脇で上体をのけぞらせた状態で死亡しているのを家族に発見されました。解剖の結果,死亡推定時刻は午前4時ころ,死亡原因は急性心筋梗塞でした。

■不安定狭心症は心筋梗塞の一歩手前の状態

病院が,外科医の診断に問題はなかったと過失を争ったため,第三者である循環器科医に診療録と検査結果を分析して貰ったところ,心電図の異常は明らかで患者は救急外来受診時,不安定狭心症という心筋梗塞の一歩手前の状態にあり,外科医が循環器科医に連絡し入院させるか,循環器専門病院へ転院させていれば患者を救えたことが分かりました。

病院は,第三者である専門医の医師意見書の内容を真摯に受けとめ,過失・因果関係とも認めたため遺族との間に示談が成立しました。

■狭心症と心筋梗塞の違い

心臓は,周囲を冠動脈という心筋に酸素や栄養素を供給する血管で取り巻かれています。狭心症は、冠動脈の血管が狭くなり心臓へ送る血流量が少なくなって心臓が一時的に酸欠状態となって胸痛発作を起こすものです。心筋梗塞は、冠動脈の血管が完全に閉塞して,心筋が壊死してしまう状態で胸骨下部ないし左前胸部を中心とした激烈な疼痛が30分から数時間持続します。

急性心筋梗塞の死亡率は30%程で大半は病院へ到着する前に死亡しますが,病院へ到着できた症例の死亡率は10%未満とされます。

この事件の患者は,心筋梗塞になる前に病院に到着していますから,当直医が不安定狭心症の診断を誤らず入院させ適切な治療をしていれば患者は死なずにすんだのです。

狭心症にもいろいろある!?

狭心症の診断で重要な点は,直ちに緊急処置が必要な不安定狭心症の鑑別診断です。安定狭心症は,狭心症発作の誘因や頻度が変化せず,一定以上の労作で生じる狭心症で緊急性はありません。これに対し,不安定狭心症は,狭心症発作の誘因が変化し頻度が増すなどの増悪性変化を認め,急性心筋梗塞や突然死に至る可能性が高い重症の狭心症で入院が原則です。

この事件の患者は受診時不安定狭心症の状態ですから,診察した当直医が循環器科医に相談するか循環器専門病院へ転院させていれば命が助かったのですが,当直医は,急性心筋梗塞と連続線上にある不安定狭心症が全く念頭になく,心筋梗塞ではないから緊急性がないと誤った判断をして患者を帰してしまいました。

患者がもし自宅で救急車を呼んでいたら助かっていたかも知れません。しかし,当直医から緊急性がないと告げられたため,痛みを我慢してしまいました。夜間救急病院を受診したことで救急車を呼ぶチャンスを奪われる結果となりました。

■患者になったときのポイント!

当直医のベテラン外科医は,若いときに不安定狭心症を勉強したはずですが,専門外の事に疎くなるのが世の常で,すっかり忘れていたようです。一般の方は,医師ならなんでも知っていると思いがちですが,専門外のことは殆ど知らないと考えたほうが良いです。ですから,医師にお任せにしてはいけないのです。自分の身を守れるのは自分だけですから,未だかつて経験したことのないような異常を感じたら自分の直感を信じ,医師に遠慮をしないで入院や転院を希望するなり救急車を頼むなりした方が良いです。

本当は体調が酷く悪いのに診察のとき緊張しているためか医師に「大丈夫です。」などと言ってしまいがちですが,顔を見ただけで病名が分かる医師は映画やテレビの中だけで,実際は重症感があるとか,典型的症状を訴えるなどしないと重大な疾患が見過ごされてしまいます。診察のときは,大げさなくらいが丁度良く,我慢をしないで症状を伝える努力をすべきです。もし持病があれば日ごろから典型的症状を調べておいて,診察のとき伝えられれば医師の見落としは減るかも知れません。

直感を信じることの大切さ!

循環器疾患の医療ミスのケースで,もう一つ患者が直感を信じていたら助かっていた事件を紹介します。患者さんは50代男性,メタボ体型でしたが健康に対する意識は高く,毎年一泊二日の人間ドックを受診していましたが循環器の異常を指摘されたことはありませんでした。患者は,最後の検査から11か月後に心筋梗塞で死亡しました。不信に思った家族が人間ドックの検査結果と心電図を取り寄せ第三者である循環器科医に調べてもらったところ,3年前から毎年心電図の異常が見落とされていたことが分かりました。協力医によれば,患者が精密検査を受け経皮的冠動脈形成術,ステント留置術などの治療を受けていれば心筋梗塞で死ぬことはなかったとのことでした。家族の話では患者は亡くなる数日前から胸痛が続き,前胸部の重い感じ,背部痛があり肩もこると訴えていましたが人間ドックで毎年循環器は異常なしと診断されていたのでまさか心筋梗塞になるとは夢にも思わなかったそうです。家族は,人間ドックで異常なしと診断されたことで,患者が循環器科を受診する機会が奪われたことを悔やんでおられました。

患者本人も,異常を感じていたようですが,人間ドックで異常が指摘されなかったことで循環器に問題は無いという先入観を持ってしまったことが不幸な結果に繋がりました。大切なのは,自分の直感を信じることです。たとえ人間ドックで正常と診断されても,異常を感じたら放置せず専門の医療施設で精密検査を受けたほうが安心です。精密検査の結果,異常がなければ安心して過ごせますから無駄にはならないのではないでしょうか。

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