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入院中の窒息死事件②−看護師のうっかりミス!

患者は,70代半ばの女性で,入院中にくも膜下出血を起こし気管切開して人工呼吸器が繋がれていましたが,気管切開術後5日目,看護師が体位変換をした際,カニューレが抜けそうになり,無造作に入れ直したところカニューレが気管ではなく皮下へ入ってしまい,誤挿入に気付かずそのまま退室したため患者が窒息死した事件です。ご遺族によると,ご遺体は,人工呼吸器から皮下に送り込まれた空気で膨れあがり大変痛ましい様子だったといいます。

最終的には示談がまとまりましたが,病院側は,当初,患者が咳き込んでカニューレが勝手に皮下に迷い込んだと弁解し,過失を認めませんでした。    

気管切開1週間以内が危ない!
長い時間寝たままですと循環障害を起こして床ずれ(褥瘡)ができるので寝たきりの患者の場合,看護師が褥瘡を防止するため定期的に体位変換を行います。気管切開をしてカニューレに人工呼吸器が繋がっている患者では,カニューレが抜けないようにカニューレを保持するか,カニューレと人工呼吸器回路の接続部を外して体位変換を行わないと人工呼吸器回路の重みでカニューレが抜けてしまうため注意が必要ですが,カニューレの抜去事故は頻繁に起きています(PMDA医療安全情報No.36 2013年3月)。

そして,看護師が,抜けたり抜けかかったカニューレをそのまま押し込んで気管ではなく誤って皮下に挿入し窒息死させる事故が起きており看護師に対し注意喚起がなされています(気管カニューレの皮下誤挿入事故/一般社団法人日本医療安全調査機構医療安全情報No.1 2012年9月)。

気管切開をして頚部に開けた孔(気管切開孔)は,時間が経つと固まってカニューレの出し入れは容易になりますが,気管切開術後1週間以内の時期は孔が固まっていないためカニューレが抜けると孔が塞がってしまい再挿入に難渋することがあるため,抜けないようにしっかり固定することが重要とされています。カニューレが皮下に迷入してしまう皮下誤挿入事故は,気管切開術後1週間以内に多く起きていますが,気管切開孔が固まっていないことが原因です。

カニューレの内部は,痰などで次第に狭窄するため定期的にカニューレを交換する必要がありますが,気管切開後1週間以内は再挿入が難しいことから,気管切開後1週間経過するまで交換しないことが多く,そのため,適切な痰吸引が行われないと貯留した痰でカニューレが詰まって窒息する危険があります。カニューレの痰詰まりによる窒息事故も,気管切開術後1週間以内に集中しており,術後一週間は特に注意が必要です。

看護師はどうすべきだったでしょうか?

本件事故は,看護師が,患者に人工呼吸器回路が繋がっていたのに不注意に体位変換をしてうっかりカニューレを抜いてしまい,そのまま無造作にカニューレを押し入れて皮下に挿入し,患者の状態を観察せず退室してしまったことが原因で起きました。

では,看護師はどのように行動すべきだったでしょうか?

看護師は,気管切開術後1週間以内の時期は,気管切開孔が固まっておらずカニューレの再挿入が困難で皮下に迷入する危険のあることを認識する必要があります。その上で,体位変換を行うときは,カニューレと人工呼吸器回路の接続部をはずして体位変換を行うか,複数の介助者でカニューレを保持して体位変換を行い,カニューレが抜けないよう注意することが大切です。術後1週間以内は皮下迷入の危険がある為,カニューレが抜けかけたり抜けてしまったときは直ちに医師を呼ぶべきです。又,カニューレから人工呼吸器回路をはずして痰吸引を行った場合や体位変換を行った場合などカニューレを触ったときは,患者の状態や人工呼吸器の表示を観察し,換気がなされていることを確認してから患者のそばを離れる必要がありました。

うっかり患者を死なせるなどあってはならないことで,いったいどんな看護教育を行っているのかと疑問に感じますが,事故を起こしたのは大学病院の附属病院でした。

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