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■気管切開患者の入院中窒息死事件

入院中の患者さんが,元の病気と関係なく喉に痰を詰まらせて窒息死することがよくあります。窒息死事件の法律相談を年4回受け,何人かの医師に伺ったところ入院患者では珍しくないとのことでした。病院は,患者家族に急変しましたと説明し,死亡診断書には呼吸不全と書かれることが多いようです。大抵は闇から闇へ葬られますが,家族が事故だと気がついたときも,病院は基本的に過失を認めません。痰で窒息するなんて想像しただけでも恐ろしいことですが,病院に入院しているのに助からず,補償もされずに泣き寝入りとはいったい病院はどうなっているのでしょうか?

なぜ痰詰まりで窒息するの?

そもそも,なぜ気管切開患者は,痰詰まりで窒息するのでしょうか?

気管切開とは,気管に孔を空けカニューレと呼ばれる管を挿入し気道確保する方法です。重度意識障害で長期間人工呼吸管理が必要な場合の他,喉の炎症や術後など気道が狭くなって気道閉塞の危険性がある時,気道を確保するため一時的に置かれることがあります。カニューレを付けると普段痰の出ない人でも痰が増えますが,気管切開をすると自分で痰を喀出できなくなるため,痰の排出は看護師さんに委ねられます。カニューレをつけると空気が鼻を通らないので乾燥しやすく痰が硬くなります。又,術後で血液が痰に混ざると凝血痰塊が形成されやすくなります。看護師さんは,細い管をカニューレに挿入して痰吸引をしてくれますが,高粘稠性の痰は吸引しても上手く吸い上げることができず痰が排出されないまま貯留し続け,痰がカニューレを詰まらせ窒息する危険があります。

そのため,ネブライザーで加湿して痰を柔らかくして排出しやすくしたり吸引しても除去しきれないときは気管支鏡で除去する等の方法がありますが,医師や看護師の認識不足から適切な呼吸管理がなされず,痰による窒息事故が後を絶ちません。           

入院中の窒息死事件を3例,ご紹介します。

入院中の窒息死事件①−医師を呼ばない看護師!

喉が腫れたため排膿と気管切開術を受けた患者が,看護師による痰吸引中,看護師が吸い上げた痰塊によりカニューレが詰まり窒息した事件です。

患者は,70代後半の実業家男性,現役で仕事をされていた方です。ゴルフ中に喉に痛みを覚え大学病院附属病院を受診したところ頸部膿瘍と診断されました。丁度ゴールデンウイーク前で病院が長期休診になるため,2週間の予定で耳鼻咽喉科へ入院し膿を出す手術を受けることになりました。喉の手術をすると手術部位が腫れて気道が狭くなることがあるので気道確保の目的で一時的に気管切開をしてカニューレが挿入されました。喉が腫れただけの患者ですから経過は順調で,気管切開をして話せませんでしたが院内を歩き回り,見舞客の対応をしたり,ホワイト−ボードを使って仕事の指示をしたりと,いたって元気に過ごしていました。

ところが,術後5日目の夜7時30分ころ,A看護師がカニューレから痰を吸引し始めたところ窒息しそうになりました。患者の傍で様子を見ていた妻が,もう一度痰吸引をしたら患者が窒息してしまうと心配し,A看護師に医師を呼ぶように頼みました。A看護師が,先生はもう帰りましたと言うので,救命救急科の先生ならいらっしゃるだろうから呼んでと頼みましたが,A看護師は,耳鼻咽喉科の先生の許可がないと救命救急科の先生を呼べませんと答えました。そこで患者の妻が,耳鼻咽喉科の先生に電話をして救命救急科の先生の診察を受ける許可をもらってくれと頼んだところ,A看護師は分かりましたと言って退室しました。しばらくしてA看護師が戻ってきたので妻が耳鼻咽喉科の先生の許可をもらったか尋ねると,A看護師は,先生に報告したこところ度々痰を取れば大丈夫といわれたと答え,痰吸引を中断したままそのまま退室してしまいました。

夜8時55分,B看護師が来室し痰吸引をしようとしたので,患者の妻が,先ほど窒息しそうになり耳鼻咽喉科の先生への報告を頼んだことを再度確認したところ,B看護師が,度々痰を取れば固まらないと言われましたと答えたため,患者と妻は,先生がそうおっしゃるなら仕方がないとB看護師が痰吸引をするのを許しました。後で分かったことですが,いずれの看護師も耳鼻咽喉科の医師に報告しておらずナースセンターで看護師同士で申し送りをしたのみでした。患者の妻は,もし看護師が医師に報告していないことを知っていたら,けして痰吸引を許さなかったと悔しがっておられました。

さて,8時55分に来室したB看護師が痰吸引を開始したところ,途端に痰の塊がカニューレを詰まらせ,患者はベッドから転がり落ちるように飛び起き,喉を掻きむしって苦しがっていましたが次第に意識を失いよろよろと個室トイレの方の壁に寄りかかったのでB看護師と妻が患者を支え個室トイレの便器に座らせましたが,患者は意識を失い動かなくなりました。その間,B看護師は,医師を呼ばずにナースコールをし,呼ばれたC看護師は,B看護師に酸素ボンベを持ってくるよう指示しました。暫くしてB看護師が酸素ボンベを持ってきましたがボンベとカニューレの間を繋ぐ管がないのに気付きまたナースステーションに取りに戻り,それから酸素を投与しましたが,カニューレは痰が詰まって閉塞していますから酸素は通りません。それからようやくドクターコールをし,医師は数分で駆けつけましたが,患者は既に心停止状態で,心肺蘇生しましたが,窒息により脳に酸素が行かない状態が続いたため低酸素脳症となり約1か月後に死亡しました。

看護師は,患者が窒息しているのにナースステーションに酸素ボンベを取りに行って時間を無駄にしていますが,持ってくるべきだったのは強制換気に使う蘇生バッグと救命救急に必要な道具が入った救急カートでした。医師は,ドクターコールを受けてすぐ来室していますので,もし看護師が,直ちにドクターコールをしさえすれば患者は助かったはずです。

大学病院附属の大病院で看護師がいながら痰を詰まらせただけの患者を救えないなど,あってはならないことです。しかし,病院側は一切の過失を否定し裁判をするならやってみろという態度を取り,裁判で争うことを望まなかった妻は謝罪も何の補償も受けられませんでした。

妻は事故現場に立ち合っており一部始終を目撃していましたが,事故後の病院側の説明で看護師が口裏を合わせて嘘ばかりつくので本当に悔しかったと語っていました。

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