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■左右腎取り違え事件

腎臓は,血液から老廃物を取り除いて尿として体外に排出する血液浄化を行うソラマメの様な形をした臓器で左右一対あります。

患者さんは,60代後半の男性で,右腎臓に癌が見つかったことから右腎臓摘出術を受けることになりました。ところが,手術で誤って異常のない左の腎臓を摘出されてしまったという事件がありました。医師は,摘出してから左右取り違えに気が付き,急遽大学病院に応援を要請し自家腎移植を行ったのですが生着せず,結局再度左腎臓の摘出が行われました。癌のある右腎臓まで摘出してしまうと腎臓の機能が失われてしまうことから,癌のある右腎臓をそのまま残したところ癌が肺に転移に患者さんは亡くなりました。

■左右腎の取り違えは何故起きたか?

事故の原因は,単なる不注意でした。通常,左右取り違えないよう手術室入室前に手術部位に油性マジックで印をつけることになっているのですが,この患者さんの場合,術前のマーキングが忘れられていました。手術室で看護師が手術しようとした医師たちに,「左右逆ではありませんか?」と注意しましたが,執刀医と助手の医師は,手術室のシャーカステン(フィルムを見やすくする照明の付いたボード)に貼った患者のCTフィルムを確認して「いや,間違いない。」と言ってそのまま手術を開始してしまったのですが,実は,助手の医師がCTフィルムをうらおもて逆にシャーカステンに貼ったため左右が逆になっていたのです。本当は,注意してフィルムを見れば,例えうらおもて逆に貼ってあっても間違いに気づけるのですが,執刀医も助手も気づきませんでした。

■事件の結末

この事件が刑事事件になった詳しい経緯は分かりませんが,私が患者家族に頼まれ代理人に就いたとき,執刀医と助手の医師は既に業務上過失傷害罪で送検されていました。被害を受けた患者家族は大変優しい方々で,事故が起きたことは残念だけれど,事件のせいで先生方の医師としての人生が終わりになって欲しくないとおっしゃって検察庁に医師たちが罪に問われないよう手紙や嘆願書を提出しました。事故後,医師が真摯に謝罪したので,患者家族は罪を憎んで人は憎まずという気持ちになったそうです。

結局,執刀医だけが業務上過失傷害罪で罰金刑となり,その後,厚生労働省から医業務停止1年間の行政処分が下されました。

腎臓だけではない! 手術部位の取り違え事件

手術部位の左右取り違えは,腎臓だけではありません。膝(変形性膝関節症の手術)や眼(硝子体の手術)で異常のない方を手術してしまい,結局左右両方手術されたケースがあります。交通事故などで頭部を強く打ったとき急性硬膜下血腫になることがあります。血腫量が多くて脳を圧迫して危険な場合,開頭血腫除去術といって頭蓋骨に孔を開け血腫を除く手術をしますが,血腫があるのと反対側の頭蓋骨に孔を開け血腫がないので左右取り違えに気付き反対側の頭蓋骨にも孔を開けられてしまったというケースもあります。歯科では間違って違う歯を抜いてしまうことが結構ありますが,歯の場合すぐ戻せば生着するそうです。ただ,一度抜いた歯の寿命は短くなるので着いたから良いとは言えません。

■取り違え事件は年間どの位起きているか?

取り違え事件は年間どの位起きていると思いますか?日本医療機能評価機構の報告では,事故の報告義務のある274施設と任意に報告した医療施設だけで左右取り違えが年間5件程起きています(2007年1月1日〜2010年11月30日で21件)。この他,処置する部位の取り違えが27件/年,患者の取り違えが23件/年と報告されています。日本全国の医療施設数は17万8092(平成27年)ですので,毎年同じ割合で事故が起きているとすると取り違え件数は大変な数になります。

患者になったときのポイント

左右取り違えないよう,病院は,基本的に手術室入室前に患者にマーキングを行うこととされています。もし,手術室に入る前に手術部位にマーキングがされていないときは,要注意です。局所麻酔であれば患者は自分で左右逆だと医師に伝えられますが,全身麻酔の場合は意識を失ってしまいますから,もし手術部位にマーキングがされていなかったら,麻酔前に医師,看護師に手術部位を確認するなどアピールをした方が良いかも知れません。

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