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呼吸器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

入院患者の病状を当直医に引き継がなかった過失,ハロペリドール(抗精神病薬)の適応外使用及び慎重投与義務違反の過失がいずれも認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第13753号 損害賠償請求事件
平成18年6月30日判決
【入院管理,適応,治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

 患者(当時31歳,女性)は,平成10年ころより,市が設置・運営する被告病院(公立病院)のA医師(内科医)を含む複数の医師から,自己免疫疾患の疑いがあると診断された。A医師は,シェーグレン症候群を疑ったものの確定診断には至らず,甲国立病院の医師は成人スチル病であると診断していたが,検査結果や臨床症状等は,いずれの病型にも典型的に当てはまるものではなかった。
 患者は,自己免疫疾患に対し効果があるとされるステロイド剤による治療を受けないまま,自宅療養を続けていたが,平成13年10月14日,意識消失発作を起こして被告病院内科に入院した。A医師は,意識消失発作の原因や自己免疫疾患の病型等を診断するため,検査等を行ったが,確定診断には至らなかった。検査結果等によれば,患者には,るいそう(高度な蛋白カロリ一栄養失調症)及び低栄養状態,強度の貧血,GOT値及びALP値の上昇,慢性腎不全,肝臓腫大等の異常が認められ,貧血に関する検査数値が徐々に悪化する傾向にあった。
 患者は10月25日,38.6℃,同月30日,38.1℃の発熱がそれぞれ認められ,11月1日午後4時15分ころには38.8℃まで熱発し,咳,発赤,残尿感,頻尿,肺雑音,息苦しさ,チアノーゼは認められなかったものの,SpO2が89%〜91%,頻呼吸,頻脈を生じていた。A医師は,自己免疫疾患の増強又は感染症の発症を疑い,翌日血液検査,細菌培養検査及びレントゲン検査を行うこととした。
 11月2日午前6時,患者の体温は36.8℃になり,呼吸状態は,午前6時の時点でSpO2が85%で依然として頻呼吸ではあったが,呼吸数は毎分28〜26回へ回復し,呼吸苦は見られず,入浴したり,デイルームで昼食を取ることができる状態であった。同日実施された血液検査の結果,白血球数は1万7080,CRP値は10.98であった。同日午前中に実施された胸部レントゲン検査の結果,A医師は,左下肺野に認められた粒状ないし線状の浸潤影から軽い気管支肺炎を,右下肺野に認められた胸膜の変化像から胸水ないし胸膜炎を疑い,間質性肺炎の鑑別のため午後に胸部CT検査を実施することとし,同日午後から抗生物質(ベントシリン,トブラシン)の点滴投与を開始した。
 同日午後に撮影された胸部CT写真上,間質性肺炎像は認められなかった。
 A医師は,上記各検査の結果に加え,患者の呼吸困難・肺雑音の不存在の事実や午後の体温等から,重症化する所見はないと判断し,同日午後6時ころ被告病院を退出した。このころ患者はリハビリを受けていた。同日に実施された細菌検査の結果,咽頭粘液及び便の培養検査等でいくつかの細菌が検出され,同日に撮影されたレントゲン及びCT検査の結果,間質性肺水腫又はリンパ増殖性疾患の可能性が疑われたが,A医師が上記細菌検査の結果及び放射線科医師の所見について報告を受けたのは,患者の死亡後であった。
 患者は,11月2日午後8時36分以降,呼吸苦で何度かナースコールをし,同日の当直医であったC医師が診察したところ,過換気症候群が疑われ,酸素投与等を行いながら経過観察となった。
 翌3日午前2時45分ころ,看護師は,過換気状態でパニックになっている患者に対し,C医師の指示により,アタラックスP1アンプルを筋肉注射した。午前4時25分ころ,患者からナースコールがあり,呼吸苦を訴えた。看護師は,C医師の指示によりハロペリドール(抗精神病薬)を投与した。
 同日午前9時ころ,B医師(内科医)はC医師から当直を引き継ぐ際,C医師から当直日誌の記載を示されながら患者の病状について,過換気症候群が出現したので,アタラックスPを投与したが,余り効かなかったため,ハロペリドールを筋肉注射したところ,睡眠が取れた旨申し送りを受けた。
 同日午前11時過ぎ,B医師は,心電図検査に加え,血液ガス分析検査を実施し,過換気状態の他,重篤な代謝性アシドーシスと低酸素血症を発症していると判断し,毎分5リットルの酸素を酸素マスクにより投与して経過観察することとした。
その後,看護師から患者の病状や検査結果の連絡を受けたA医師からの指示で,午後1時30分ころ,患者に対しケイテン(第4世代の抗生物質)及び生理食塩水の点滴投与が実施された。
 午俊3時過ぎころ,D看護師は,B医師に対し,上記抗生剤の点滴とその後の患者の過換気状態と頻繁な訴え,SpO2(94%〜96%),血圧(88/68),脈拍(130台)の値を報告し,指示を求めた。B医師は,申し送りの際にC医師から,ハロペリドールで鎮静効果があったことを聞いていたことから,代謝性アシドーシスを防止するために頻呼吸による低換気状態を改善し,かつ,頻呼吸による呼吸筋の疲弊を予防するために,ハロペリドールを投与し鎮静化させる必要があると判断したが,被告病院内の別の場所において,脳梗塞により被告病院に入院することとなった他の患者の処置を行っていたこともあって,電話でD看護師に対し,ハロペリドール1アンプルを筋肉注射するよう指示し,午後3時15分ころ,D看護師により,患者に対しハロペリドール1アンプルが筋肉注射された。
 午後3時30分ころ,患者の姉が,患者の目が上転し,手を胸の前でグーの状態で握りしめるなと硬直状態にあるのに気付き,直ちに部屋を出て廊下にいた看護師に異常を訴えた。看護師が訪室したところ,患者は「うーうー。」とうなりながら眼球が上転した状態であったため,他の看護師を呼び,B医師に連絡するよう指示した。
 看護師らは蘇生のための機器を準備し,心電図モニター等を設置したところ,患者は,心停止及び呼吸停止の状態であった。B医師は,間もなく患者の下へ駆けつけ,患者が心肺停止状態にあることを確認したことから,看護師らとともに,心臓マッサージを行い,アンビユーバッグによる送気を行った。午後3時35分ころ,B医師は,看護
師らに対し,エピクイック(昇圧剤)2アンプルを側管より注入し,メイロン250mlの点滴を急速に静脈から投与するよう指示し,これらの処置により,患者の心拍数は100台で再開し,自発呼吸も出現した。このころ,集中治療室の当直医師であったE医師が,B医師の指示に応じて駆けつけ,午後3時45分ころ,患者に対し気管内挿管を行ったが,自発呼吸があったので,アンビューバッグによる呼吸コントロールを行った。そのころF医師も患者の救命措置に加わった。
 午後4時ころ,状態が安定したため,患者は個室に移された。しかし午後4時11分以降,心拍数が30台に低下したため,人工呼吸器を装着するなどしたが,午後9時1分,患者の死亡が確認された。
 翌4日,被告病院において実施された患者の病理解剖の結果,両側気管支肺炎及び肺鬱血水腫,るいそう等とされたが,間質性肺炎とはされなかった。
 患者の両親は,被告病院を設置・運営する市に対し損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計8384万円

結  論

請求棄却

争  点

①A医師の当直医に対する引継ぎにおける過失の有無
②B医師のハロペリドールの適応外使用に関する過失の有無
③B医師のハロペリドールの慎重投与に閲する過失の有無
④A医師及びB医師の各過失と患者の死亡との間の因果関係の有無

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