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循環器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

抗凝固療養中の患者が大腿骨頸部骨折後,一時投与を中止していたワーファリンの投与再開に当たりへパリンを並行投与すべきであった過失が認められたが,死亡との間の相当因果関係は認められず,相当程度の可能性が肯定されたケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第2807号 損害賠償請求事件
平成19年3月30日判決 控訴(後控訴棄却〔原告〕,原判決取消,自判〔被告〕,上告〔後上告不受理〕)
【治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

 患者(明治45年生,女性)は,平成5年より甲老人ホームに入所した。
 患者は,昭和50年,完全房室ブロックを発症し,乙病院(総合病院)で心臓ペースメーカーの植え込み手術を受け,乙病院に通院して,心房細動及び一過性脳虚血性発作が認められたので,ワーファリンによる抗凝固療法を受けていた。患者は,平成5年10月,血栓が原因と考えられる右上腕動脈閉塞を発症し,平成6年1月当時,ワーファリンを1日に2.5錠服用していた。平成6年1月31日,患者は,入所していた甲老人ホームの自室前で転倒し,右腰部を床に打ち付けた。患者は右大腿骨に激痛を訴え,2月2日に甲老人ホームに併設されている甲診療所でレントゲン検査を受けたところ,右大腿骨頸部の骨折が認められたので,翌3日,被告病院(総合病院)整形外科に入院した。
 A医師(整形外科)は,患者の大腿骨頸部骨折について,人工骨頭置換術の適応と判断した。A医師は,乙病院医師からの紹介状により,患者が,高血圧症,狭心症,房室ブロック等の疾患を有し,ペースメーカーを装着していること,血栓傾向があるためワーファリンを内服中であることを知った。そこで,A医師は,患者を被告病院の内科に紹介し,手術の可否及び注意点についてコンサルトしたところ,B医師が,内科における患者の主治医となった。B医師は,2月5日,骨折後間もないことから,患者に対するワーファリン投与を中止することとし,同様の理由でへパリンの投与も行わないこととした。2月7日,A医師は,患者及びその家族に対し,大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術の必要性及び危険性,人工骨頭置換術を行わなかった場合の予後等について説明した上,同手術を受けるよう勧め,2月9日にも同様の説明をしたが,患者及びその家族は手術を拒否した。A医師は,人工骨頭置換術を中止することとし,B医師の意見に従ってワーファリンの投与を再開することとした。A医師は,患者に対し,2月10日朝,ワーファリンを2錠投与し,11日以降,夕食後にワーファリンを1日2.5錠投与した。
 2月13日,患者の家族が患者の様子がおかしいと看護師に連絡し,看護師が患者の状態を確認したところ,患者は,収縮期血圧110で,左片麻痺及び尿失禁が認められたが,呼名に対する返答ははっきりしていた。当直のC医師が呼ばれ患者を診察したところ,嘔気や嘔吐は認められず,簡単な返答はできる状態であった。C医師は,脳梗塞の発症を疑い,絶食とした上,経鼻カテーテルによる酸素投与及び脳圧降下剤のグリセオール,抗生物質等の点滴投与を開始し,ワーファリン等これまでの内服薬の服用を中止するよう指示した。患者に対し,頭部CT検査が実施されたが,明らかな高吸収域は認められなかった。
 2月14日,患者は内科へ転科し,B医師が患者を診察したところ,対光反射は左は正常であったが右では認められず,左顔面麻痺が認められ,左上肢が弛緩していたことから,B医師は,塞栓による脳血管障害であり,広範囲に及んでいる可能性が高いと判断した。
 B医師は,輸液に脳循環代謝改善剤レコグナンを追加するなど脳血管障害に対する治療を行ったが,脳血管障害に対する治療について,出血性梗塞を起こす危険があることから,抗凝固剤は使いにくいと考え,ワーファリンの投与の中止を継続した。
2月21日,B医師は,患者が変わりなく経過していると判断し,流動食を開始するなどしたが,2月24日,両下肢のチアノーゼが出現し両下肢の大腿動脈について,急性動脈閉塞症と診断された。患者は,急性動脈閉塞症による両下肢の壊死が進行したため,肝障害,腎障害と感染症により全身状態の悪化を来し,その後,多臓器不全の状態となって3月19日に死亡した。
 患者の家族(子)が,被告病院を設置する法人に対し,A医師らは,ワーファリンを適切に投与し,脳梗塞に対する抗凝固療法を実施すべきであったのにこれを怠ったとして,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計3479万3094円

結  論

一部認容(認容額220万円)

争  点

①ワーファリン投与中止についての過失の有無
②ワーファリン投与再開における過失の有無
③脳梗塞に対する抗凝固療法不実施について過失の有無
④①〜③の過失と患者の死亡との間の因果関係の有無

認容額の内訳

①慰謝料

200万円

②弁護士費用

20万円

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