医学の基礎知識『脳塞栓症について』

■脳塞栓症とは

心臓内や血管内で形成された血栓が遊離し,末梢の脳動脈を閉塞するもので,心原性脳塞栓と動脈性脳塞栓に大別される。心原性脳塞栓症の原因となる心疾患は,非弁膜症性心房細動の頻度が高い。心原性脳塞栓症は,心臓内で形成された血栓や静脈系から遊離した血栓が心臓経由で脳動脈を閉塞して生じる。動脈原性塞栓症の塞栓源は,大血管のアテローム硬化病変である。動脈原性脳塞栓症は,アテローム硬化病変から遊離した血栓が遠位側の脳動脈を閉塞して生じる。

■脳塞栓症の検査

@頭部CT 
超急性期では,梗塞巣は検出されないが,早期虚血性変化を認めることがある。発症から6時間以降で梗塞巣は皮質を含む境界鮮明で比較的均一な低吸収域を示す。

A頭部MRI・MRA

MRI拡散強調画像で,発症から1時間ころから細胞傷害性浮腫が高信号として描出される。灌流強調画像は脳循環低下領域の検出に有用。T2強調画像とFLAIR画像で,発症3〜4時間ころから梗塞巣と脳浮腫が高信号域として描出される。MRAは,主幹動脈の狭窄や閉塞病変の非侵襲的診断に有用である。

B神経超音波検査

動脈原性脳塞栓症の塞栓源となる頸動脈の高度狭窄病変や不安定プラークの検索に有用。頭蓋内内頸動脈の高度狭窄や閉塞例において,頸動脈ドプラ血流測定で障害側の拡張末期血流速度の低下や消失を認める。

C脳血管造影

脳血管の閉塞や狭窄病変の診断に利用される。心原性脳塞栓症では,栓子陰影,閉塞部位の末梢への移動・消失,動脈硬化性変化の欠如が特徴である。

DSPECT検査

脳血管閉塞による脳血流低下領域や程度の診断に用いられる。

E凝固線溶系分子マーカー

心原性脳塞栓症の急性期や静脈血栓症で凝固線溶系分子マーカー(TAT,D-ダイマー)が高値を示す。

■脳塞栓症の診断

塞栓源となる心疾患を有する場合,心原性脳塞栓症と診断する。塞栓源となる心疾患がなく,大動脈や頸動脈に高度狭窄,潰瘍形成,不安定プラークを認める場合,動脈原性脳塞栓症と診断する。

■脳塞栓症の治療

(1)超急性期〜急性期治療

@抗浮腫療法

頭蓋内圧亢進を伴う大きな脳塞栓に,高張グリセロール10〜12ml/kgを数回に分割し静脈内投与する。

A抗血栓療法

経静脈的血栓溶解療法:発症3時間以内の脳塞栓症で頭部CT上早期虚血性変化を認めないか軽微の場合に適応。症候性頭蓋内出血の危険性を伴う治療法であるため,多くの使用禁忌と慎重投与の基準がある。血栓溶解薬アルテプラーゼ(組織プラスミノゲンアクチベーター)0.6mg/kgを経静脈的に投与する。総投与量の10%を1〜2分かけて静注後,残りを1時間で点滴静注する。

 

抗凝固療法:心原性脳塞栓症で,発症後24時間以降のCT検査で出血性梗塞がないことを確認し,再発予防としてヘパリン1万単位/日の持続静注を行う。動脈原性脳塞栓症では,アルガトロバン(選択的トロンビン阻害薬)60mg/日2日間,以後20mg/日5日間。

 

抗血小板療法:動脈原性脳塞栓症の急性期再発予防として,トロンボキサンチンA2合,ないしアスピリン160〜300mg/日の経口投与。

B脳保護療法

発症後24時間以内の脳塞栓症に対し,抗酸化薬のエダラボン60mg/日を点滴静注。副作用に急性腎不全があるため,腎機能障害がある場合慎重投与。

(2)慢性期治療

心原性脳塞栓症の慢性期再発予防はワルファリンが第一選択で,至適投与量は国際標準率INR2.0〜3.0になるようにコントロールする。INR2.6を超えると出血性合併症が急増するため,70歳以上の高齢者ではINR1.6〜2.6でコントロールする。抗凝固療法が行えない場合や動脈原性脳塞栓症では,アスピリン75〜150mg/日,チクロピジン200mg/日,又はシロスタゾール200mg/日での抗血小板療法を行う。

参考文献:内科学 朝倉書店

 

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