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産婦人科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

分娩2時間後に昏睡状態に陥り死亡したことについて,担当医師に適切な輸液及び輸血を怠った過失が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第6022号 損害賠償請求事件
平成17年9月30日判決 控訴
【治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和49年生,女性)は,平成14年8月22日,分娩のため被告病院(産婦人科)に入院した。同日21時25分,患者は分娩室に入室し,22時18分,担当のA医師の立ち会いの下,吸引分娩によって女児を娩出した。22時33分,胎盤娩出の際,819g(凝血約569g,羊水を含めた出血約250g)の出血が認められ,22時55分,意識はあるが,血圧70/50,心拍数が微弱となった。23時15分,担当のB医師が来室し,子宮底マッサージを施行し,23時15分までに約550gの出血が認められたが,その後出血は少量となった。23時06分,血液検査でヘモグロビン値9.7g/dl,へマトクリッ卜値28.4%であった。23時21分,血圧が70/42に低下し,B医師はエフェドリン投与,ヴィーンFの輸液を行い,経膣超音波測定法により子宮内を確認した。明らかな胎盤の遺残はなく,腹腔内出血は生じていなかったが,その後も収縮期血圧は70台で推移した。患者の顔色は不良であったが,意識は認められ,両鼠径部痛を訴えていた。23時55分,患者の血圧が110/50,心拍数が154となったため,B医師は患者を帰室させたが,患者は,0時07分ころから胸部痛を訴え,意識が混濁し,刺激にも反応しなくなり,Sp02が40%前後となり,0時25分,自発呼吸が消失した。B医師はアンビュー,挿管などを施行し,甲病院への搬送を要請し,患者は,0時32分,救急車で甲病院へ搬送された。被告病院で行われた輸液総量は,ヴィーンF1030mlで,輸血は行われなかった。

患者は,甲病院到着時,心電図上心室性頻脈を生じ,脈が触知できない状態で,当直のC医師らは心臓マッサージ,ボスミン投与,徐細動などの救命措置を行い,蘇生後,MAP及びFFPの輸血やFOYの投与などが行われたが,同日5時ころから出血,DIC傾向が生じ,翌24日5時ころから収縮期血圧が40台に低下し,患者は,同日13時15分,急性呼吸循環不全により死亡した。甲病院において採取した血液からは,亜鉛コプロポルフィリンが63pmol/ml,シアリルTn抗原が13U/ml検出された。

患者の家族(夫及び子)は,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計7797万0208円

結  論

請求棄却

争  点

①出血性ショックを看過し,適切な輸液及び輸血を怠った過失の有無
②患者に本件の症状が生じた原因及び救命可能性

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