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産婦人科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

双胎の第2子が胎児仮死に陥ったことについて担当医師の不法行為責任が否定されたケース

 

東京地方裁判所 平成12年(ワ)第26241号 損害賠償請求事件
平成14年12月25日判決
【治療方法手術適応,時期】

<事案の概要>

患者は,双胎分娩目的で被告病院(大学病院)に入院していた。患者は,平成11年10月9日午後0時30分,分娩室に入室し(陣痛発来後17時間10分経過),同時点で第1子,第2子ともに頭位であった。午後3時40分,陣痛は微弱のまま推移し,担当医師は,患者の疲労が蓄積していたことから,吸引分娩の実施を決定した。午後3時50分ころ,第1子の胎児心拍数は,基線が毎分120回台であったが,90回以下まで下降し,第2子の胎児心拍数も,100回程度まで下降していた。

午後3時55分,担当医師は,吸引カップを2回目の試行で第1子の児頭に吸着させ吸引を行い,午後4時1分,第1子が娩出された。アプガースコアは1分後8点,5分後9点であり,問題はなかったが,2195gの低出生体重児であったため,新生児集中治療管理室で管理された。

午後4時4分,陣痛がほぼ消失し,第2子の児頭はステーションマイナス3以上と高い位置にあり,骨盤内に固定しない状態で,子宮口も狭窄していた。第2子の胎児心拍数は,午後4時10分ころまで,毎分100回から110回程度の軽度の徐脈であったが,基線細変動は存在した。午後4時10分ころから20分ころ第2子の胎児心拍数は,毎分90回以下の徐脈が出現する状態であったが,基線細変動は存在した。午後4時20分,陣痛は相変わらず微弱で,児頭は高位で,午後4時25分,児頭の位置に変化はなく,手も先進していた。担当医師は,有効な陣痛の回復を待つこととして,助産師に対し,分娩台上での経過観察を指示した。

午後4時20分ころから午後4時40分ころ,第2子の胎児心拍数は,子宮収縮のたびに,毎分80回から90回台までの下降と,150回から170回台までの上昇とを繰り返し,基線細変動は存在した。担当医師は,遅発一過性徐脈と考え,パルトグラムにその趣旨の記載をした。徐脈の際の心拍数が毎分60回を下回ることはなく,1分弱で回復していたことから,担当医師は,軽度の変動一過性徐脈と判断し,高度変動一過性徐脈が繰り返し出現する場合のみ胎児仮死と認めるという考え方に従い,この時点で第2子が胎児仮死に至ったとは判断しなかったが,徐脈が繰り返し出現したため,第2子に異常がないとはいえないと考え,監視を続けた。その後も有効な陣痛の回復は見られず,児頭の下降と子宮口の開大もなかった。

午後4時40分前後になると,毎分150回程度の胎児心拍数が,100回程度の徐脈になり,回復しても150回を超えることがほとんどなくなったため,担当医師は徐脈の回復が不良であると判断をした。基線細変動は存在したが,元気である(well-being)といえるほどではなかった。担当医師は,娩出方法について,母体の安全のため帝王切開術の実施には慎重であるべきと考えていた。そして,第2子が横位になるとか,臍帯脱出を起こすなどの帝王切開術の適応ではなかったこと,帝王切開術の準備には手術室への移動や麻酔の導入などで30分以上かかること,第1子が経膣で娩出されたことなどを考慮し,第2子の分娩はこのまま経睦分娩で行うとの方針を立てた。

午後4時53分ころ以降,胎児心拍数は毎分60回台まで下降して,回復にも時間を要するようになり,午後4時57分ころ以降は,記録もほぼ途切れるようになった。午後4時58分,児頭が骨盤に陥入してきたが,依然として手が先進していた。

午後5時ころ,人工破膜が行われ,その際,第2子の臍帯脱出が起こった。午後5時5分,担当医師は吸引カップの吸着を試みたが,子宮口が全開しておらず,先進していた手が邪魔になって,1回目は失敗し,午後5時7分,2回目も吸着できず児頭が浮遊してしまった。担当医師は,吸引分娩を断念し,鉗子分娩に切り替え午後5時8分,児頭は依然として高位であったが,鉗子で児頭を挟んで,クリステレル圧出法を併用して出口部分まで牽引し,午後5時10分,児頭に吸引カップを吸着させて吸引した。

担当医師は,児頭が高位にある状態で鉗子分娩を行うことについて,かなり危険が伴う処置であることを認識していたものの,第2子の娩出を急ぐために実行した。午後5時12分,第2子が娩出された。アプガースコアは1分後O点,5分後1点,10分後2点と非常に悪く,新生児仮死の状態であった。第2子は,すぐに小児科医に引き継がれ,新生児集中治療管理室で管理されたが,第2子は,重度の脳性麻痺により,現在まで寝たきりの状態で,常時,鼻や口にチューブがつながれ,酸素や栄養の補給を受けている状態である。

出生した第2子とその両親は,被告病院を設置する法人と担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計8729万3788円

結  論

請求棄却

争  点

①午後4時25分,午後4時40分の各時点で,担当医師に帝王切開術を決定をする義務があったか否か。
②午後4時25分までに,担当医師に帝王切開術の準備に着手する義務(ダブルセットアップの義務)があったか否か。

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