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産婦人科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

帝王切開術及び子宮筋腫核出術の術後,肺塞栓症を発症して死亡したことについて,人工呼吸器の設定に過失が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第25235号 損害賠償請求事件
平成16年5月27日判決 控訴
【手技,適応,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(昭和43年生,女性)は,平成9年10月11日,被告病院(大学病院)産婦人科を受診し,妊娠及び子宮筋腫と診断された。患者は,被告病院に通院し,平成10年5月25日,被告病院に入院した。担当医師らは,帝王切開術による分娩が望ましいと判断し,患者も,帝王切開による分娩に同意するとともに,子宮筋腫を取ることを希望した。5月27日午後3時ころ,帝王切開術が開始され,児が娩出され,担当医師らは,子宮筋腫が子宮収縮を妨げている可能性があると考え,漿膜下筋腫2個につき,子宮筋腫核出術を施行した。5月28日,担当医師らは,患者がやや肥満であったことから,血栓症予防のへパリン投与を検討した。帝王切開は血栓症の危険因子の一つであったが,患者は,妊娠初期に肥満が見られなかったこと,分娩前の体重増加は娩出した児の体重等を考えると著しい肥満化とはいえないこと,術前に血液濃縮が見られなかったことから,へパリン投与が必要なほどの血栓症の危険性はないと判断され,子宮筋腫核出術を行ったことを考慮し,ヘパリン投与は行わないことになった。患者は,5月28日午前11時30分ころに,嘔気,手のしびれ,軽度の胸痛,軽度の呼吸困難などの症状を呈したが,ビニール袋を使用してゆっくり呼吸をした結果,楽になったと述べるなどしていた。患者は,5月29日午前10時30分ころ,気分不快,冷感を訴え,午前10時50分,血圧が低下し,意識がやや不明確となり,顔色が蒼白で唇にはチアノーゼが認められる状態に至り,午前11時42分,一時的に心停止状態に陥った。患者に対し,抗凝固療法や血栓溶解療法が開始され,心エコー検査,心電図検査により,肺塞栓症と診断された。

患者には,5月29日午後0時5分,人工呼吸器が装着され,CMV(調節機械呼吸),呼吸回数10回/分と設定されたが,午後1時39分,SIMV(同期式間欠的強制換気),呼吸回数12回/分に変更された。設定変更の直前,酸素分圧136.2㎜Hg,炭酸ガス分圧67.9㎜Hg,酸素飽和度97.9であったが,午後3時49分,酸素分圧46.6㎜Hg,炭酸ガス分圧64.6㎜Hg,酸素飽和度70.7となり,午後4時には,酸素分圧46.7㎜Hg,炭酸ガス分圧66.7㎜Hg,酸素飽和度71.5となった。午後4時35分,人工呼吸器の設定がCMV,呼吸回数10回/分に戻され,その結果,午後4時52分には,酸素分圧246.0㎜Hg,炭酸ガス分圧49.5㎜Hg,酸素飽和度99.5となった。患者は,5月30日以降も治療を受けたが,意識が回復することはなく,6月25日,肺塞栓症に続発した多臓器不全で死亡した。

患者の母は,患者が死亡したのは被告病院の担当医師らに過失があったためであると主張して,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

1000万円

結  論

一部認容(認容額200万円)

争  点

①帝王切開術の際,子宮筋腫核出術を施術したことの適否

②術後,肺塞栓症発症の予防療法をとらなかったことの適否

③5月28日時点で
(1)肺塞栓症の鑑別診断のための検査の要否
(2)検査を実施しなかったことと患者の死亡との間の因果関係の有無

④5月29日午前10時50分時点で
(1)肺塞栓症の鑑別診断のための検査,肺塞栓症に対する治療の要否
(2)検査・治療が遅れたことと患者の死亡との間の因果関係の有無

⑤5月29日午後1時39分,人工呼吸器の呼吸条件の設定を変更して以降
(1)呼吸管理の適否
(2)呼吸管理が不適切であったことと患者の死亡との間の因果関係の有無

認容額の内訳

近親者としての慰謝料

200万円
(患者の母は,患者の相続人ではないため,患者の被った損害は相続できない。)

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