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産婦人科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

死産について,重症妊娠中毒症を前提とする対応を怠った過失が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第3537号 損害賠償請求事件
平成17年6月24日判決 控訴・控訴棄却
【説明・問診義務,検査,治療方法・時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和45年生,女性)は平成12年12月25日,近医で妊娠の診断を受け,平成13年1月18日,被告病院を受診した。当初,患者が申告した最終月経開始日を基準に,妊娠週数を9週O日,分娩予定日を8月23日と判断されたが,その後,妊娠週数9週4日,分娩予定日8月19日に訂正された。患者は,7月3日,自宅近くのクリニックで妊娠後初めて尿蛋白「+」と判定され,浮腫も「±)」と診断されたため,同クリニックの医師は,診療情報提供書に,傷病名として「蛋白尿」,治療経過として同月3日に尿蛋白が「+」であったこと,浮腫が「±」で,これに対する漢方薬を処方したことなどを記載した。患者は,同月10日にも上記クリニックを訪れたが,このときも尿蛋白は「+」と判定された。患者は,7月16日(妊娠35週1日),上記診療情報提供書を持参して被告病院を受診し,被告病院での検査の結果,尿蛋白が「++」(100mg/dl)と判定された。超音波検査による胎児の計測値に基づき算定される推定児体重は2302gとなり,平均体重との偏差が-0.6SDと正常範囲内にあると判断され,特に異常があるとの診断はなされなかった。その後,被告病院では,胎児の超音波検査は実施されず,推定児体重が算定されることはなかった。7月24日(妊娠36週2日),患者は,被告病院を受診し,手足の浮腫を訴え,現に浮腫が認められたが,顔面,眼瞼その他全身には浮腫は及んでいなかった。尿蛋白は「+++」で,体重は,同月16日より400g多い68.7㎏,血圧は110/70であった。血液検査の結果,腎機能の指標となる尿酸値が7.5mg/dlと正常値を超え,尿素窒素(BUN)も17mg/dlと正常妊婦の正常上限値(15mg/dl)を超えていたが,電解質(Na,K,Cl)の値は正常であった。検査結果を踏まえ,被告病院は,患者に対し,減塩食を指示した。7月31日(妊娠37週2日),患者は,被告病院を受診し,腹部の緊満感を訴えた。尿蛋白は「「++++」(1000mg/dl)とさらに悪化し,浮腫も認められ,被告病院は,患者に対し,ノンストレステスト(NST)を行い,胎児の状態につきリアクティブと診断したが,24時間蓄尿して尿検査を行うほか,連日NSTを行うなどの検査のため,患者は,8月2日(妊娠37週4日),被告病院に入院した。

患者は,入院時,浮腫「±」であったが,尿蛋白は「+++」で,血中総蛋白量は,正常値の下限である6.5g/dlであった。患者は,入院時から蓄尿し,8月4日に24時間尿量約1800mlのうち400mlが蛋白定量検査に回され,蛋白量は,48mg/dlであった。入院後,試験紙法による尿蛋白検査では,同月3日以降,「++」から「+」へと減少傾向にあったが,同月6日朝の検査で,再び「+++」となった。8月3日以降浮腫は認められず,体重も減少傾向にあったが,入院全期間を通して,尿蛋白定量検査は行われず、腎機能検査は1度も行われなかった。入院期間中の血圧は,収縮期血圧が概ね100〜120程度,拡張期血圧が概ね50〜70程度であったが,同月3日に138/70,同月4日に150/80,同月6日に128/60であった。被告病院は,8月3日から6日にかけて,連日NSTを行い,いずれもリアクティブと判定した。基線細変動については,カルテ上,同月3日から5日までの3日間は「+」と記載されていたが,実際には,少なくとも同月5日の基線細変動は確認されていない。8月6日(妊娠38週1日),担当医師は,患者は妊娠中毒症であるが軽症で,腎機能の悪化も見られず,胎児の状況も良好と判断し,退院を許可し,患者に対し,同月11日に診察を受けに来院するよう指示した。担当医師は,退院の際,患者に対し,尿蛋白を検査するための試験紙を渡し,毎日の尿検査を指示するとともに,安静及び食事に留意することを指示し,異常があれば被告病院に連絡するように伝えたが,包括的な連絡指示にとどまり,どのような所見が認められたときに連絡をするのかについて具体的な指示はしなかった。

退院後,患者が,試験紙を用いて尿蛋白の検査をしたところ,連日,「+++」又は「++++」の結果が出た。しかし,患者は,検査結果について,次回の診察時に報告すれば足りると認識しており,特に被告病院に連絡しなかった。8月9日(妊娠38週4日),患者は,午前6時ころから活発な胎動を感じた後,胎動をほとんど感じなくなり,腹部に痛みや緊満感を感じるようになったが,出血も破水もなかったため,被告病院には連絡をしなかった。同日午後11時過ぎ,患者は,腹部の痛みが強くなってきたことから,被告病院に電話をし,看護師に対し,陣痛が始まったようだとして同日朝からの経緯を説明した。対応した看護師は,直ちに来院する必要はないと判断し,痛みが5分間隔になったら来院するよう答えた。8月10日午前2時10分ころ,患者は,突き上げるような出痛みを感じ,出血量を確認するためトイレに入ったところ,同日午前2時15分ころ,胎児を娩出してしまった。胎児は,救急車で市民病院に搬送され,死産と判断されたが,胎盤や臍帯はほぼ正常で,胎児仮死状態は極めて短時間であったと推測される所見が認められた。胎児の身長は43.5cm,休重は1850gであった。患者は,腎機能も含めて概ね良好であったが,血圧1が76/116と極めて高値を示していた。

患者及びその夫が,被告病院を開設する医療法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計3300万円

結  論

一部認容(認容額 1100万円)

争  点

①被告病院は,重症妊娠中毒症を前提に対応すべきであったか。 
②重症妊娠中毒症を前提に対応していたとすれば,胎児が死産となることはなかったといえるか。

認容額の内訳

①患者の慰謝料

800万円

②患者の夫の慰謝料

200万円

③弁護士費用計

100万円

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