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産婦人科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

出産後に産婦が死亡したことについて,被告の羊水塞栓症の疑いという主張を排斥し,弛緩出血による出血性ショックによる死亡と認め,担当医師に止血,輸血及び転送について適切な措置をとらなかった過失が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第12643号 損害賠償請求事件
平成17年5月27日判決 確定
【治療・方法時期,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和48年生,女性)は,平成14年3月25日,被告A医師が開設する産婦人科医院(被告医院)を受診し,妊娠と診断された。患者は,継続的に同医院を受診し,妊娠経過は概ね順調に推移していた。患者は,平成14年11月19日午後4時50分ころ,陣痛が発来したため,被告医院に入院した。担当医師は,当時週1,2回の割合で同医院の当直勤務をしていた被告B医師となり,患者は,同日午後11時53分に男児を出産し,子宮収縮剤(ア卜ニン)1アンプルが投与された。被告B医師は,胎盤娩出後の子宮硬度は良好と判断したが,出血量が通常よりも多く,300-400ml程度あると考え,子宮腔内に卵膜や胎盤片の遺残がないかを調べるためスポンジキューレットを施行し,これがないことを確認した。被告B医師は,患者に対し,膣内へのガーゼ挿入を行い,患者の膣・会陰部の縫合を開始したが,このころ患者の血圧は,131〜134/74〜91で,脈拍数は75ないし90であった。20日午前0時30分ころ,被告B医師は,縫合を終了し,患者の膣内のガーゼを抜去したところ,子宮の収縮はやや良好であった。患者に対し,500mlの電解質液の輸液のほか,止血剤1アンプルや子宮収縮剤(アトニン)1アンプル等が投与された。このころの患者の血圧は99/70,脈拍数は102であった。

患者は,20日午前0時35分ころ,不快を訴え,膣からの流血が多く(少なくとも500ml)認められた。子宮の収縮が不良であったため,同日午前0時37分ころ,患者に対し,子宮収縮剤(メテナリン)1アンプルが投与されるとともに,酸素投与が開始され,膣内に再びガーゼが挿入された。患者は,同日午前0時46分ころ,再び気分の不快を訴え酸素投与量が増加され,血漿剤(サヴィオゾール)500mlが投与された。20日午前0時50分ないし52分ころ,患者の膣内のガーゼを抜去したところ,子宮収縮が不良で,少なくとも500mlの出血が認められたことから,被告B医師は,子宮収縮剤(ア卜ニン)を3アンプル投与した。このころの患者の血圧は90〜92/70,脈拍は70であった。患者は,その後も気分の不快を訴え続け,20日午前1時20分ころ,患者に経皮酸素飽和度を測定するモニターが装着されたが,この時点の飽和度は100%であった。20日午前1時27分ころ,被告B医師が患者の膣内のガーゼを抜去したところ,子宮収縮は不良で,少なくとも500mlの出血が認められた。患者は,痛みを訴えるようになり,被告B医師は,患者に子宮収縮剤(メテナリン)1アンプルを投与したが,同日午前1時37分ころ,患者が,手足の痛みを訴え,助けを求めて叫ぶなど不穏状態となり,被告B医師は,輸血用血液MAP2単位(計400ml)のオーダーを看護師に指示し,患者の夫に対し,輸血の必要性等について説明した。このころ,患者に対し血漿剤(サヴィオゾール)500mlが投与された。20日午前1時50分ころ,被告B医師は,患者に不穏状態が続いたため鎮静剤(セルシン)2分の1単位を投与した。この時点で,経皮酸素飽和度は100%であったが,血圧は85/35に低下し,脈拍数は130に上昇していた。20日午前2時25分ころ,膣内からの出血量がやや減少したが,被告B医師は,患者に対し,右腕の点滴ルートからMAP200mlの輸血を開始し,左腕の点滴ルートから子宮収縮剤や電解質液500ml等が追加投与された。輸血は,20日午前2時40分ころに更新され,計400mlの輸血が午前2時56分ころまでに終了した。このころ,患者の経皮酸素飽和度は88ないし95程度で,呼名反応はあったが,口唇色やや不良,体動著明,背部痛を訴える状態にあった。被告A医師は,20日午前2時30分ころ,被告B医師から患者の出血が継続していることなどについて電話連絡を受け,被告医院を訪れた。被告A医師は,患者の不穏状態が継続しており,膣内に挿入されたガーゼを抜くと500mlには至らないが出血が確認されたことから,患者を緊急に他病院に搬送する必要があると判断した。患者に対し,上記輸血終了後,生理食塩水100mlが投与されていたが,500mlの電解質液の輸液に更新されるとともに,輸血用血液の追加オーダーが行われた。このときの脈拍数は120であり,約5分後の血圧は98/14であった。20日午前3時25分ころ,患者に生理食塩水100mlが投与され,午前3時33分ころ,MAP200mlの輸血が開始された。このころ,患者を甲公立病院に搬送することが決定されたが,この時点で血圧は測定不能の状態で,脈拍数は118であった。20日午前3時40分ころ,左腕の点滴ルートから,電解質液500ml及び子宮収縮剤(アトニン,メテナリン)が投与され,午前3時45分ころ,右腕の点滴ルートから通算4本目の輸血(MAP200ml)が開始された。

20日午前3時53分ころ,到着していた救急車へ患者を搬入する準備中,患者の容態が急変し,心肺停止状態となった。両医師は,直ちに,気管内挿管(ただし,片肺挿管),心臓マッサージ等の蘇生措置を施し,患者を救急車に搬入して甲公立病院に搬送した。患者は,20日午前4時過ぎ,被告医院を出て,午前4時18分ころ,甲公立病院に到着し,蘇生措置が継続されたが,蘇生することなく,同日午前5時34分ころ死亡した。

患者に対し,甲公立病院において病理解剖が実施され,羊水塞栓症の可能性について鑑別されたが,心臓にも肺動脈にも血栓は認められず,羊水塞栓症であれば基準値を超えることが多い母体血清中のSTN値は基準値以下であった。内子宮口に2か所の裂傷が認められ,その部分は,微小血管が破綻し,壊死が認められる状態であったが,著明な血腫は認められなかった。同病院は,患者の死因を弛緩出血を原因とする出血性ショックと診断した。

患者は,分娩後,被告医院で心肺停止状態となるまでの間,羊水込みで少なくとも3100ml出血した。この間の総輸液量は3200ml(分娩前の500mlの輸液を加えると3700ml),総輸血量はMAP4単位(計800ml。4本目の輪血途中で心肺停止状態となった)であった。

患者の夫,子及び両親が,被告A医師及び被告B医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計9214万0242円

結  論

一部認容(認容額7264万1498円)

争  点

①被告医師に,止血及び輸血の各処置並びに他病院への搬送について過失があったか。
②患者の死因について,結果回避の困難な羊水塞栓症である疑いはあるか。

認容額の内訳

①死亡逸失利益

 4154万1498円

②死亡慰謝料

2000万0000円

③患者の家族の固有の慰謝料

計300万0000円

④葬儀費用

150万0000円

⑤弁護士費用

計660万0000円

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