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耳鼻咽喉科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

甲状腺癌摘出手術について,その必要性及び危険性に関し,説明義務違反が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第5782号 損害賠償請求事件
平成16年1月26日判決
【説明義務,問診義務,手技,検査,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和19年生,女性)は,平成11年11月,甲病院(大学病院)において甲状腺癌摘出手術(前回手術)を受けたが,頸部左側リンパ節の郭清は行われなかった。患者は,平成12年2月,下頸部中央に腫瘤が発見され,不安を感じており,前回手術創のケロイドを気にしていたため,手術がうまいと聞いていた被告病院(甲状腺の専門病院)を,平成12年11月7日,受診した。

同月20日,エコー下での左鎖骨状のリンパ節及び右総頸動脈背側リンパ節から穿刺吸引細胞診が行われ,その結果,本件左側リンパ節から癌細胞が発見され,甲状腺乳頭癌の転移であると診断されたが,本件右側腫瘤からは癌細胞は認められず、癌と診断するには不十分であるとされた。

患者は,手術を受けることとし,平成13年3月7日,被告病院に入院し,同月9日A医師の執刀により甲状腺癌摘出手術(本件手術)が実施された。午後2時45分,A医師は,鎖骨上2横指頭側(前回手術の手術創と同位置)に襟状切開を置き,皮下を剥離した後,癒着の強度を確認し,本件右側腫瘤の摘出を行うかどうかを判断するべく,同腫瘤を検索するため,右頸動脈の拍動を確認した後,ケリー鉗子を使用し,本件右側腫瘤の1.5〜2cm頭側から,鉗子の彎曲部分を下に向けて入れて開き,上から下へ向かつて繊維性癒着と頸動脈の剥離操作を開始した。本件右側腫瘤に至る以前の剥離操作開始後5分後から10分後(午後2時55分ころ),右総頸動脈の右鎖骨下動脈との分岐部の損傷(本件頸動脈損傷)が確認された。損傷部位を縫合したが,癒着がひどく,動脈硬化が強かったため,クランプするのに手間取り,出血が多かった。A医師は,本件右側腫瘤の摘出を断念し,全身状態が落ち着いたところで,左頸部の郭清を行い,午後5時7分,本件手術を終了した。

本件手術後,患者に,左半身の動作が見られない状況が続き頭部MRIによって右大脳に多発性の梗塞を認めた。

患者は,同月19日,被告病院を退院し,丙病院に入院し,その後,丁病院に転院したが,同年10月28日,丁病院を退院し,現在は自宅で介護を受けている。

患者は,同年7月19日,脳梗塞による体幹機能障害及び左上肢機能障害により,身体障害程度等級1級の認定を受けた。

患者及びその家族(夫及び子2人)は,被告病院を開設するB医師及び担当医師であったA医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億0654万6681円

結  論

一部認容(認容額合計170万円)

争  点

①本件手術前に説明を怠った注意義務違反の有無
②本件手術を中止して説明を行わなかった注意義務違反の有無
③右頸部の腫瘤の再発について,十分な検査をせずに本件手術を行った注意義務違反の有無
④手術準備上の注意義務違反の有無
⑤剥離に関する注意義務違反の有無
⑥本件頸動脈損傷後の修復処置を誤った注意義務違反の有無

認容額の内訳

①患者本人の慰謝料

150万円

②弁護士費用

20万円

判  断

頸動脈損傷の原因

頸動脈損傷が癒着剥離操作中に発生したことから,癒着剥離操作が原因となったことは推認されるが,頸動脈損傷からの出血の態様から,A医師の癒着剥離操作が,直接頸動脈損傷部位に及んだとは認めがたく,他の可能性も推論の域を出ず、剥離操作から頸動脈損傷が発生した具体的な機序は明らかでない。

①右側腫瘤は癌の確定診断が得られおらず手術の必要性が低い一方,右総頸動脈背面に接して存在することが判明しており,再手術で癒着が生じていることが予測され,左側リンパ節の郭清より難度・危険性が高いことが予測された。頸動脈損傷発生の具体的機序が明らかでなく,A医師がその具体的危険性を説明することは不可能であるが,患者が手術を受けるかどうか判断する要素となる本件手術の必要性,特に右側腫瘤摘出の必要性とともに、それに伴う危険性についても十分説明すべき義務があったにもかかわらずこれを怠った。
②否定
③否定
④否定
⑤否定
⑥否定

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