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耳鼻咽喉科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。
扁桃摘出手術の6日後に手術部位からの出血で死亡したことについて執刀医の債務不履行責任,不法行為責任が肯定されたケース
東京地方裁判所 平成13年(ワ)第1455号 損害賠償請求事件
平成15年2月24日判決
【手技,術後管理,因果関係】
<事案の概要>
患者(昭和30年生,男性)は,平成10年8月4日,被告病院(総合病院)の耳鼻咽喉科において,扁桃摘出手術を受けた。患者の扁桃肥大は第2度(前口蓋弓より強く突出している状態)で,習慣性扁桃炎の影響で扁桃床との癒着が非常に強く,埋没していた。執刀医は、平成8年4月に医師免許を取得し,平成10年8月までに3件の扁桃摘出手術の執刀経験があったが,本件のような扁桃と扁桃床の癒着が非常に強い症例は初めてであった。
執刀医は,午前10時10分,右扁桃を摘出し,次いで,左扁桃を摘出したが,左扁桃の剥離の際,扁桃床の筋層を一部切除してしまった。その切除部位は,肉眼で見てもへこみが判別できた。左扁桃の摘出を終えたのは,午前10時30分であった。摘出後に見た扁桃の埋没部分は,執刀医が予想していた大きさを上回っていた。執刀医は,ボスミン綿球で圧迫止血をした上で,ウージングに対し,モノポーラ(単極)型の電気凝固器である吸引コアギュレーターを使用して,出血を吸引しながら,両側の扁桃床を広範囲にわたり焼灼止血した。執刀医はバイポーラ(双極)型の電気凝固器の使用は想定しておらず,準備をしていなかった執刀医55分かけて止血し,午前11時25分に手術を終了した。執刀医の指導医が,最後に止血状態を確認した。扁桃と扁桃床の癒着が非常に強かったこともあり,出血量は多く,術中に吸引した血液量は約300mlに達した。
扁桃摘出手術中,扁桃床周辺に血管の拍動は見られなかった。指導医は,術後カルテに「型通りの術式,特に問題なし」と記載した。執刀医は,翌8月5日,患者を診察した際,指導医から指摘を受けて,左扁桃床に扁桃組織の遺残が疑われるものを発見した。術後,患者は,咽頭痛や嚥下時痛を訴え,時々茶色痰を吐出したが,同月10日午前9時の診察時には,出血は認められず,扁桃を摘出後の扁桃床には白苔の形成が認められた。
患者は,同日午前10時15分,突然,咽頭から噴水状の大量出血をし,圧迫止血が試みられたが効果なく,間もなく意識レベルが低下して呼吸停止となり,午前10時20分,人工呼吸や心臓マッサージなどの蘇生措置が開始されたが心停止となり,午後O時57分,死亡した。出血原因は,扁桃床の背後を走行している内頚動脈が破綻したものと考えられている。
患者の妻子は,被告病院を設置する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。
請求金額 | 合計1億4499万8662円 | ||||
結 論 | 一部認容(認容額合計1億3142万1572円) | ||||
争 点 | ①扁桃摘出手術について担当医師の手技上の過失の有無 | ||||
認容額の内訳 | ①逸失利益 | 9000万0594円 | |||
②患者の慰謝料 | 2800万0000円 | ||||
③葬儀費用 | 142万0978円 | ||||
④弁護士費用 | 1200万0000円 |
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