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小児科・新生児科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

新生児一過性多呼吸,大量羊水吸引症候群に罹患していた患者に対し,より早期に人工換気療法や胸部レントゲン撮影などを行わなかったことに過失は認められないとされたケース

 

東京地方裁判所 平成11年(ワ)第23764号 損害賠償請求事件
平成14年9月25日判決
【検査,治療方法・時期,転医義務】

<事案の概要>

患者(平成10年生,男児)は,出産予定日の4日目前(妊娠39週3日),被告甲診療所(産婦人科)において帝王切開により出生した。出生時の体重は3426gで,出生1分後のアプガースコアは9点で,全身色は良好であった。

患者は,午後2時48分に出生した後,新生児室に移されたが,午後7時,血液混入物を嘔吐し,過呼吸とチアノーゼが出現しているのが発見された。被告甲診療所のA医師は,吸引などの処置を行うとともに,肺出血を疑い,新生児科のある被告乙病院(総合病院)のB医師に患者の往診を依頼した。

B医師が到着した午後8時時点で,患者には多呼吸があり,SPO2(血液酸素飽和度)が90%強とやや低かったため,B医師は患者を入院させる必要があると判断し,酸素投与を行いながら患者を被告乙病院へ搬送した。

患者は,午後8時40分,被告乙病院の新生児病棟に入院し,B医師は,患者を新生児一過性多呼吸,大量羊水吸引症候群と診断し,保育器に収容して30%濃度で酸素投与を行った。

被告乙病院入院後,患者の多呼吸は徐々に増強し,翌日午前0時の時点でSP02が90%弱に低下し,TcP02(経皮酸素分圧)が50mmHg弱,TcPCO2(経皮炭酸ガス分圧)が50mmHg弱となったため,酸素濃度が40%に上げられた。午前1時10分,SPO2が90%,循環状態にやや改善が見られたため,B医師は,酸素濃度を45%に上げて様子を見ることにし,改善が見られない場合は気管内CPAP(持続陽圧呼吸法)を行うことにした。

午前2時30分,患者のSPO2が70%台まで低下し,TcPO2は54〜56mmHgとやや上昇したため,午前3時10分,気管内チューブの挿管と100%酸素濃度による気管内CPAPが開始され,以後,SP02は92%前後で経過した。B医師は、午前4時ころから,人工呼吸管理と出血に対する影響把握などのため,血圧連続モニタリングと動脈血検査を実施することを検討し,患者の臍動脈ラインを確保することを試みたが,確保できなかった。

午前5時10分,B医師は,気管吸引時に肺が重く,血性の吸引物もあったことから,先天異常としての肺静脈血環流障害による肺欝血の可能性があると考え,酸素化の改善と肺欝血の進行を阻止するために,換気療法をCPAPからHFO(高頻度振動換気法)に切り替えるとともに,血液ガス分圧の厳重な管理を行うため,午前6時ころから末梢動脈ラインの確保を試みたが確保することができなかった。

午前7時30分ころ,B医師が,胸部レントゲン検査を施行したところ,患者の両肺は真っ白で,十分に空気が入っていない状態であった。

患者は,午前7時30分以降,状態が急速に悪化して著しい徐脈となり,心肺蘇生が行われたが反応がなく,午前9時24分に死亡した。

病理解剖の結果,患者の左右両肺に大量羊水吸引症候群による新生児肺炎の所見が認められ,両肺とも含気に乏しく水に浮遊しない状態であった。又,肺硝子膜がかなり完成されていることが認められた。消化管や気道からの出血はなく,嘔吐した血液は患者のものではないことが確認された。

患者の死亡原因は,大量羊水吸引症候群と新生児一過性多呼吸により出生後早期から出現した呼吸障害に,細菌感染を起こしていた羊水を肺内に吸引したことにより生じた肺炎,肺欝血,肺硝子膜症が加わって呼吸不全を起こしたことによるもので,急速に呼吸障害が進行して死亡したのは,肺炎,肺欝血などの合併症が強く影響したものと認められた。

患者の両親が,被告甲診療所を開設する医療法人及び被告乙病院を開設する地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計 4627万5606円

結  論

請求棄却

争  点

①被告甲診療所のA医師に患者の転院を遅延させた過失があるか否か。
②出生翌日の午前O時の時点で,被告乙病院のB医師が,重度の一過性多呼吸や胎児循環残遺症の発症を疑って,動脈血の血液分析や人工換気療法を行わなかったことに過失があるか否か。
③出生翌日の午前2時30分,B医師がHFOを実施しなかったことに過失があるか否か。
④出生翌日の午前3時10分時点で,B医師が胸部レントゲン検査を行わなかったことに過失があるか否か。

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