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小児科・新生児科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

単心室等の先天性心臓奇形を有する男児が心臓カテーテル検査後に死亡したことについて,死亡原因は心臓奇形に起因する心不全である判断され,担当医師の過失が認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第8427号 損害賠償請求事件
平成16年10月1日判決 控訴・控訴棄却
【説明・問診義務,検査,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(平成11年生,男性)は,平成11年3月1日に出生し,生後4時間ころからチアノーゼ,心雑音が出現したため,翌2日,精査目的で母子保健総合医療センター(母子センター)に入院した。患者は,入院時の心エコー検査,同月17日の心臓カテーテル検査及び心血管造影の結果,左心房と右心室が小さく(右心室が小さく機能していないことから,左心室型単心室と呼ばれる),その間が閉鎖し,左心房と右心房の間に心房中隔欠損,右心室と左心室の間に心室中隔欠損があるため,全身から右心房に戻る酸素の少ない静脈血(体静脈血)と,肺から左心房に戻り心房中隔欠損を通して右心房に流れる酸素の多い動脈血(肺静脈血)が右心房で混合し,左心室から全身に駆出されていることが明らかとなった。左心室から駆出される血液は,大動脈を経て全身に送られるほか,僧帽弁(解剖学的には僧帽弁だが,患者の心臓の場合,右心房の出口という機能面に着目すれば三尖弁に相当する)閉鎖不全のため右心房に逆流するもの及び心室中隔欠損から右心室を経て肺動脈に流れるものがあった。

なお,心奇形を持つ患者の心臓に対しては,フォンタン手術(右心バイパス手術とも呼ばれ,唯一の心室は大動脈ヘ血液を送る体心室として使用し,上大静脈と下大静脈を肺動脈に直接つないで体静脈血が体静脈血圧の下で肺動脈ヘ流れるようにする手術)を行う。フォンタン手術のうち,上大静脈のみを肺動脈につなぐ手術をグレン手術といい,フォンタン手術が困難な場合,フォンタン手術を2回に分け,第1期手術としてグレン手術が行われるが,フォンタン手術後もグレン手術後も,体静脈血圧で肺動脈へ血液が流れることから,肺動脈血圧が体静脈血圧より高い場合は,いずれの手術も困難となる。

患者は,4月5日,母子センターをいったん退院し母子センターに通院したが,5月27日の診察で,3月17日には65%であった心胸郭比が77%にまで拡大し,口唇にチアノーゼも認められたことから,心不全軽減のため利尿剤が増量とされた。6月3日,心エコー検査の結果,状態の悪化が認められたことから,患者は,6月8日,母子センターに再入院した。患者は,再入院時,チアノーゼがあり,啼泣,哺乳時に強くなる状態であった。6月10日,患者の両親が,患者に対する利尿剤投与の意義を十分に理解しておらず,退院後患者に対し適切に利尿剤の投与が行われていなかったことが判明したことを契機に,同月14日,患者は母子センターを退院し,同日,被告病院(公立病院)の外来を受診した。担当医師は,患者の全身状態が比較的安定していたことなどから,利尿剤等を処方した上,外来で患者の診祭を続けることとした。

9月7日,担当医師は,患者の顔色が啼泣時に灰白色となることを認め,泣くという運動負荷だけで酸素不足になる状態を解消するため手術方針を立てる必要があると考え,改めて心臓カテーテル検査を行うことを提案し,同月24日,心臓カテーテル検査及び心血管造影が行われることとなった。同月22日,担当医師は,患者の両親に対し,心臓カテーテル検査及び心血管造影の内容,必要性,危険性等について説明した際,起こり得る合併症として,出血,感染,血栓・塞栓,不整脈,チアノーゼの増強などを挙げたが,それほど詳細な説明はせず,上記検査が死に至る危険性を有する旨の説明はしなかった。患者の両親は,既に3月17日のカテーテル検査を受けていたこともあり,担当医師にさらに説明を求めることはしなかった。

9月24日,患者に対し心臓カテーテル検査及び心血管造影が行われたが,右肺動脈が検出できず,1週間ほど後,改めて超高速CTを行うこととなった。患者は,その後,容態が悪化し,同月30日午後4時5分に死亡した。担当医師らは患者の両親に対し,死因を特定するため解剖に承諾するよう求めたが,患者の両親は,死因はMRSA腸炎だと断じ,解剖を拒否した。患者の死亡前の便培養においては,MRSAは検出されていなかった。

患者の両親が,被告病院を開設する地方公共団体に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計8858万1798円

結  論

請求棄却

争  点

①死亡原因は,腹腔内出血及び腹膜炎の発症か,重篤な先天性心奇形による心不全の悪化か。
②心臓カテーテル検査の危険性に関し,説明義務違反があったか否か

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