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整形外科・形成外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

カイロプラクティックの施術により患者に頸椎椎間板ヘルニアを生じたことについて患者に対するリスク等の説明義務違反,及び施術時の圧迫の強さ等への配慮義務違反が認められたが,相当因果関係のある損害の範囲が限定されたケース

 

大阪地方裁判所 平成14年(ワ)第7451号 損害賠償請求事件
平成17年10月28日判決 確定
【説明・問診義務,手技,適応,因果関係,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和33年生,女性)は,被告施術者が開設していたカイロプラクター養成所で職員として勤務していたところ,平成7年11月19日ころ,養成所内において被告施術者により「ハンマーとノミ」の形態の器具を用いた施術(本件施術)を受けた。

患者は,施術後,首が痛くて下を向けなくなったため,平成7年11月29日,甲総合病院の整形外科を受診し,10日前から首に痛みがある旨訴えた。検査の結果,患者の頸椎に,C2・C3が先天的に癒合しているクリッペルファイル症候群が認められるとともに,C4/5及びC5/6の各椎間板が狭小化して骨棘が形成されていることが認められ,さらに正常であれば前弯している頸椎が,緩やかに後弯していることが判明した。患者は,同病院で何度か診察を受けたが,同年12月15日,乙病院(総合病院)の整形外科を受診した。患者は,症状として頸部痛のみを訴え,頸椎MRI検査の結果,C5/6の椎間板にヘルニアがあり,C6/7の椎間板には膨隆があると診断された。その後,患者は,乙病院を受診し,指のしびれ等を訴えたが,深部腱反射は,左右差がなく,正常であった。平成7年12月30日,患者は,丙病院(総合病院)の整形外科を受診した。他覚的な触覚,痛覚は正常範囲内であったが,患者は,左前腕から手の尺側及び左下腿のしびれ感を訴え,下肢腱反射の亢進が認められた。

患者は,甲,乙及び丙病院を受診していたが,平成8年1月21日,丙病院に入院した。入院時所見で,四肢の特に左側に強く軽度の知覚障害が認められ,深部腱反射の多くに亢進が認められたが,病的反射所見は陰性で,担当医は,患者のJOAスコア(日本整形外科学会による頸髄症治療成績判定基準)につき,11点と判定した。患者は,同年2月3日に丙病院を退院した。患者は,手術療法を希望して,大小様々の医療機関を受診する一方,丙病院の担当医に対しても外来受診の際その旨を訴えていた。同担当医が,患者に対し,手術療法には前方固定術と後方拡大術の2通りがあること,各々の長所短所について説明したところ,患者は,前方固定術を受けることを希望し,平成8年4月24日,同病院に再入院した。再入院時,患者は,時に頸部から左肩,胸部に痛みがあると訴え,スパーリングテストでは時に左上下肢に放散痛が認められ,各腱反射の亢進が認められたが,ジャクソンテストは陰性で,病的反射も,左のバビンスキー反射が擬陽性であったほか,陰性所見であった。JOAスコアは,発作時においては12点,通常時は15点と判定された。再入院の際,前方固定術の術式や,頸部脊柱管狭窄症が基礎にあるため,将来,頸部脊柱管拡大術(後方拡大術)を要する場合があることなどが記載された手術説明書が患者に交付され,医師から改めて前方固定術に関する説明がされた。

平成8年4月26日,患者は,丙病院の担当医師A(整形外科)の執刀により,C5/6椎間板ヘルニアに対する前方固定術(本件第1手術)を受けた。術後のX線写真では,移植骨の位置が良好であることが確認され,同手術において採取された,後縦靭帯を破り硬膜外に脱出していた組織を検査した結果,髄核と判明した。

患者は,本件第1手術後,頸部を固定され安静状態に置かれたが,術前以上の胸苦しさや息苦しさを訴え,27日未明,患者の希望により酸素投与が開始されたが,なお息苦しさを訴え続け,「麻酔したときに胸が何か痺れたようで。内科の先生に診てもらいたい。」などと訴えた。同日早朝には,本件第1手術により痛みがひどくなったと訴え,しびれがずっとある,耐えられないとも訴えた。その後も同様の訴えが続いたものの,同年5月1日のX線検査では状態良好で,同月3日,担当医師Bから患者に対し,脊椎からの神経症状で患者が訴えるようなチック様ピクツキは認められず,ヒステリー様症状であるとの説明がされ,患者は,いったん納得したような表情となったが,その後,看護師に繰り返し内科医による診察を求めた。同日午後,担当医師Aが患者を診察し,患者の握る・離す動作が円滑かつ速やかであることを確認し,患者に対し,上肢の不随意運動は,脊髄からの症状としては非定型的で,会話,質問の返答を聴いている際には生じない,神経の働きより精神的,心理的な側面が強いと考えていることを説明した。患者は,下腹部の圧迫感が残存していることや,椎間板造影が悪化の原因ではないかといった訴えをしたが,担当医師Aは,前者については,以前には自覚していなかったものを自覚するようになったのではないか,後者については,神経学的には悪化の原因とは思わなかったが,検査が途中で中止されたこともあり術式選択が不能となることに不安を募らせた結果ではないかと説明した。患者は,医師から説明を受けても同様の訴えを繰り返し,後方拡大術を希望するようになったが,丙病院では後方拡大術を直ちに行うことに消極的であったことから,患者は,丙病院に入院中,他院を受診するようになった。

平成8年5月29日,患者は,丁病院の担当医師C(整形外科)の診察を受けた。C医師は,腿反射(両上腕二頭筋,右膝蓋)の亢進を認めるとともに,病的反射であるバビンスキー反射とホフマン徴候がいずれも陽性で,腹部以下で痛覚の鈍麻があると認め,MRI写真上,C4/5レベルで脊髄の圧迫があり,C3/4からC6/7にかけて脊髄の前方が狭くなっていると認めた。担当医師Cは,患者に対し,今すぐ手術をする必要はなく,しばらく経過観察をするよう説明し,精神安定剤(ドグマチール)を処方した。患者の主訴については,心因性の疑いがあったが,担当医師Cは,心療内科医から,整形外科的に症状を説明することのできる圧迫があるなら手術適応がある旨の回答を得たことから,同年10月7日,同医師の執刀で,患者に対し,C1〜3の椎弓切除術及びC4〜7の後方拡大術(本件第2手術)を実施した。患者は,平成9年6月2日,C3/4及びC4/5で前方から圧迫があるとの所見が認められたためC3〜C5にかけての前方固定術を受け,術後の頸椎MRI検査でC4/5になお脊髄の軽度の圧迫が認められたことから,同年8月18日,前回手術と同様の前方固定術を受け,同年10月21日には,C3〜C5の2椎間前方固定術を受け,平成10年3月18日には同2椎間のプレート固定術を,平成12年5月10日にはC1硬膜拡大術を受けるなどし,その間多数の病院を受診した。平成16年5月11日以降,患者は,戊病院脳神経外科で,患者の症状が脳脊髄液減少症によるとの診断を受けた。

患者が,被告施術者に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計7600万円

結  論

一部認容(認容額1476万4428円)

争  点

①本件施術が頸椎椎間板ヘルニアの原因か
②被告施術者は,施術に当たり圧迫の強さ等に配慮したか
③本件施術により生じた椎間板ヘルニアと患者の現在の症状との相当因果関係の有無
④損害の範囲

認容額の内訳

①治療費

34万6207円

②入院雑費

7万6700円

③装具・器具購入費

1万0000円

④休業損害

121万8778円

⑤後遺症逸失利益

1030万3851円

⑥入通院慰謝料

140万0000円

⑦後遺症慰謝料

340万0000円

⑧弁護士費用

170万0000円

⑨素因減額

20%

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