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消化器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

中心静脈栄養のチューブを抜去する際,チューブを固定する糸を切断しようとして誤ってチューブ自体を切断し,チューブを体内に残留させたことについて過失が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第8066号 損害賠償請求事件
平成16年7月12日判決 控訴・控訴棄却
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(男性)は,平成11年8月19日,被告病院(総合病院)において,胃癌に対する幽門側胃切除術を受けた。同年9月9日以降,患者がイレウスを発症したため鎖骨下静脈から中心静脈栄養(IVH)が実施された。担当医師は,同月25日,患者のイレウスが軽快したためIVHを抜去しようとして,チューブを固定する糸を切断しようとして,誤ってチューブ自体を切断し,チューブを体内に残留させてしまった。チューブは,上大動脈を経由して右心房から右心室に達していたたため,切開された右鼠径部から挿入した心筋生検用カテーテルによってチューブを右心室内から右大腿静脈まで誘導し,鼠径部から体外に取り出された。

患者は,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計730万円

結  論

請求棄却

70万円の慰謝料が認められたが,口頭弁論終結直前に被告が70万円を超える金員を弁済供託したため,患者の損害賠償請求権は消滅した。

争  点

①チューブ切断に係る過失の有無

②損害額及び損害賠償債務の消滅

判  断

①鎖骨下静脈に切断されたチューブが残留すると,血流によってチューブが心臓内に至り,感染や血栓を生じる危険があるため,IVHを抜去するためチューブを皮膚に固定する糸をを切断する際は,誤ってチューブを切断することのないよう十分な注意を払いつつ,糸のみ切断すべき注意義務がある。担当医師には,注意義務に違反した過失がある。

②担当医師の過失により,患者は,本来必要のない心臓カテーテル術を受けることとなり,退院が本来より20日余り遅れたが,心臓カテーテル術は成功し,チューブが心臓内に入ったことで患者の健康が害される事態には至らず,右鼠頚部の切開痕も殆ど分からない程度に治癒したことから,被告病院は,患者の精神的苦痛を慰謝するため70万円の慰謝料を支払うべきである。

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