光樹(こうき)法律会計事務所 医療事故・医療過誤の法律相談 全 国 対 応 電話相談可

お問合せ
平日10:30~17:00
03-3212-5747
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

消化器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

肝細胞癌の治療のために肝右葉切除手術を受けた患者が死亡したことについて,手術適応,手術の手技上の過失,説明義務違反等がいずれも認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第21942号 損害賠償請求事件
平成16年5月31日判決 控訴
【説明・問診義務,手技,適応,入院管理】

<事案の概要>

患者(昭和28年生,男性)は,慢性肝炎等の既往があったが,平成12年6月5日,被告病院(総合病院)内科を受診し,肝腫瘍の疑いと診断された。同病院で6月14日に実施されたCT検査の結果,肝右葉に長径約10cmの巨大な腫瘍が肝外に突出する形で発育していることが明らかとなった。A医師(内科)は,肝細胞癌である可能性が高いと判断し,患者とその妻に対し,肝臓に10cmほどの腫瘍ができており,内科的治療法(TAI,TAE,PEI)もあるが,腫瘍が大きいために治療効果が得られにくく,第1選択は手術であることなどを説明し,患者の妻にのみ,進行癌であることを説明した。患者の妻は,A医師に,患者本人には癌の告知をしないように依頼した。

6月20日,腹部血管造影検査が実施され,肝細胞癌と診断された。A医師は,患者が被告病院内科に入院してから,被告病院外科のB医師やC医師らと連絡を取り合い,手術適応について相談していたが,インドシアニングリーン(ICG)検査(肝臓の異物排泄機能を調べる検査)の結果について兵庫医大方式の計算式を用いて計算したところ,手術適応があると考えられたことから,6月28日,患者を外科に転科させた。被告病院外科のB医師,C医師らも,兵庫医大方式の計算式を用いて手術適応があることを確認し,7月6日に肝右葉切除術を実施することとした。B医師は,手術前日の7月5日,患者と患者の妻に対して術前説明を行い,本件腫瘍が肝蔵癌であることを告知した。

7月6日午後2時ころから,B医師,C医師らによって患者に対し肝右葉切除術が開始された。手術では,ベンツ型切開法が採用され,B医師らは,患者の肝臓を周囲から剥離する作業を進めたが,肝静脈周囲を剥離したところ,肝腫瘍が肝静脈の根部に膨張するように被さっていて右肝静脈と中肝静脈の分岐部分が確認できず,肝実質内へ向かう部分を剥離しようとしたところ,腫瘍を露出しそうになったため,このまま肝静脈の処理を進めると,肝静脈を損傷して大出血を招く危険があると考え,肝静脈の処理を断念し,肝実質の切離を先行し,午後8時ころ,手術は終了した。

術後,7月10日午後6時ころから,患者の体温は38度を超えるようになり,同月12日には,37度台半ばを推移し,白血球数が1万1900に増加した。B医師は,感染巣は不明であったものの,腸管から細菌が入り込むなどして何らかの感染が生じている可能性を考え,それまで投与していたセフメタゾン(抗生剤)に代え,予防的に,カルベニン(抗生剤),ダラシン(抗生剤)の投与を開始した。7月17日,患者に頻呼吸が現れ,白血球数が2万を超え,手術創に汚れが見られたため,B医師らは,ジフルカン(抗真菌薬)の投与を開始した。同日,B医師らは,患者に対し,正中創ドレナージを行い,1400g近い腹水の排出をみたが膿性腹水は認められなかった。7月19日,患者の手術創部の膿の培養検査の結果,MRSAが検出されたため,B医師らは,患者に対して,テイコプラニン(抗生剤)の投与を開始した。B医師らが抗生剤としてテイコプラニンを選択したのは,患者に腎障害が見られていたため,腎毒性が少ないテイコプラニンが有効と考えたためであった。7月21日,患者の喀痰培養検査の結果,MRSAが検出され,B医師らは,患者に対して,パンコマイシンの吸入を開始した。7月25日,持続援助式血液ろ過透析が開始され7月26日から,パンコマイシンの投与が開始されたが,患者は,同月30日午後7時30分死亡した。

患者の家族(妻と子)は.患者に手術適応がなかったにもかかわらず,担当医師らが手術を実施したなどと主張して,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計7000万円(8197万3209円のうち一部請求)

結  論

請求棄却

争  点

説明義務違反の有無

判  断

①手術適応の有無
②説明義務違反の有無
③手技上の過失(右肝静脈の先行処理をしなかった過失,開胸開腹切開法を選択しなかった過失)の有無
④感染症に対する診療上の過失の有無

  1. 7月10日の時点で,感染症の発症を疑うべきであったか否か。
  2. 7月17日の時点で,MRSA感染に対してドレナージを行い膿瘍を排出すべきであったか否か。
  3. 7月19日の時点で,MRSA惑染に対してパンコマイシンの投与を開始すべきであったか否か。

医療事故・医療過誤(医療ミス)について法律相談をご希望の場合には,『医療事故調査カード』をダウンロードし,必要事項をご記入の上,当事務所宛にご郵送ください 担当弁護士が内容を拝見した後,ご相談日をご連絡いたします 電話相談も可能です

 歯科・精神科・美容のご相談は受け付けておりません

光樹(こうき)法律会計事務所 

〒100-0005 東京都千代田区丸の内2丁目5番2号 三菱ビル9階 969区

※丸ビルの隣、KITTEの向かい

TEL:03-3212-5747(受付:平日10:30~17:00)

F A X  :03-3212-5740

医療事故・医療過誤(医療ミス)についての法律相談をご希望の場合には、下記『医療事故調査カード』をダウンロードし、必要事項をご記入の上、当法律事務所宛にご郵送ください。なお、歯科・精神科・美容相談は受け付けておりません

※担当弁護士が内容を拝見した後、ご相談日をご連絡いたします。