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消化器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

大腸癌及び肝臓癌の同時切除術を行ったことに過失はなく,説明義務違反も認められないとされたケース

 

大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第6841号 損害賠償請求事件
平成14年8月28日判決
【説明・問診義務,適応】

<事案の概要>

患者(死亡時64歳,男性)は,平成11年3月,甲病院において肝臓癌の疑いがあると診断され,同年4月20日,精査目的で,被告病院を受診した。

被告病院の医師は,腹部エコー,上腹部内視鏡の各検査,造影CT検査の結果,アルコール性肝硬変,肝細胞癌の疑いが強いと判断し,精査加療目的で,患者は,同年5月27日,被告病院に入院した。

被告病院の内科医師は,肝臓病変のうち,右葉前区域上部部分(S8),右葉後区域下部部分(S6)の生検の結果,S8には,中分化型肝細胞癌が見つかり,S6には,癌とは断定できないが前癌病変である腺腫瘍過形成が認められたため,同日から6月3日にかけて経皮的エタノール注入療法(PEIT)を3回施行した。

同年5月28日,便潜血検査で陽性となったため,被告病院消化器外科医師(担当医師)が同年6月2日,患者に対し大腸内視鏡検査を実施したところ,S状結腸に2個,上行結腸にも2個のポリープが発見され,S状結腸部分のポリープはポリペクトミーを施行したが,上行結腸部分のポリープは直径が大きかったため,ポリペクトミーができず,生検の結果,高分化腺癌であり,粘膜下層に達し,リンパ管を浸潤していることが判明した。その後,同部分をポリペクトミーして,ポリープの大部分を切除した。予後を観察するため,同年7月6日,ポリペクトミー及び大腸病変の精査を行うこととして,患者は,同年6月17日,いったん被告病院を退院した。

患者は,同年7月5日,被告病院に入院し,同月6日,大腸内視鏡検査が実施された。検査の結果,上行結腸の病変は肉眼的にはほぼ切除されていたが,肉眼では見えない癌組織が残存していないか精査するため,切除部分の生検が実施された。

担当医師は,患者とその妻に対し,上行結腸のポリープは切除できているが,組織検査の結果,大腸癌は粘膜下層まで浸潤しており,リンパ管を通じて転移している可能性が10%程度認められるから,治療のため開腹して大腸を切除し,リンパ節を郭清する手術を行うのが適当であること,又,肝細胞癌についても,外科的治療として肝切除を行うほうがよいなどと説明した。患者は,通院して経過観察をすることとなり,同年7月7日に退院した。

担当医師は,同年8月6日,来院した患者に対し,大腸癌と肝細胞癌について外科手術(本件手術)を受けることを勧め,患者はこれに同意して,同月31日,被告病院へ3回目の入院をした。

担当医師は,同年9月8日,患者に対し,大腸癌及び肝臓癌の同時切除術を実施した。

患者は,手術当日ICUで経過観察し,翌9日一般病室に転室したが,胸水貯留,腎機能低下,肝機能低下の症状が認められ,血液検査の結果,CRP,白血球数の上昇が認められ,体温も上昇するなど,感染症状が認められたことから,同月14日にはICUに転室して管理が行われたが,同月28日,多臓器不全により死亡した。

患者の妻が,被告病院を開設する地方公共団体に対し損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

2000万円

結  論

請求棄却

争  点

①大腸切除術と同時に肝切除術を行ったことが担当医師の過失ないし義務違反といえるか否か。
②説明義務違反の有無

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