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脳神経外科における過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

初診時のMRl(FLAlR法)検査で出血所見が認められなかったことから,くも膜下出血の鑑別に必要な検査等を行わなかった医師に過失が認められたケース

 

大阪地方裁判所 平成15年(ワ)第4032号 損害賠償請求事件
平成18年2月10日判決 確定
【説明・問診義務,検査】

<事案の概要>

患者(昭和44年生,女性)は,平成13年8月17日ころから左眼窩部に針で刺すような痛みを覚えるようになり,同月19日,肩こりを感じてマッサージをしてもらうということがあったが,同日午後9時ころ,突然激しい頭痛を覚えたため夜間緊急医療機関を受診した。患者は,当直の内科医に対し,頭痛及び吐き気を訴え,頸椎の圧痛が認められるとされたが,同医師は,頭痛が続いたときCT検査を行うこととして,鎮痛剤の坐薬等を処方しただけで特に検査を行わずに患者を帰宅させた。患者は,坐薬で頭痛が緩和されたため,8月20日以降,医療機関を受診しないでいたが,同月22日ころまで頭痛は続いており,同月21日ころから左眼瞼の下垂が生じ,同月23日ころから複視も出現し,左眼窩部痛も継続していた。患者は,8月20日から実家に帰り,同月23日夜,自宅に戻ったが,夫と相談し,翌24日,被告病院(大学病院)を訪れ,病院側の指示でまず眼科を受診し,その後,脳神経外科で担当医師の診察を受けた。担当医師は,患者に対する問診で患者が8月17日に針で刺すような左眼窩部痛が生じ,同月19日,肩こりのためマッサージを受けた6時間後,歯磨き中に突然重度の頭痛が生じたことから,救急病院を受診し,坐薬を処方されて頭痛は治まったが,同月22日まで頭位によって頭痛があり,同月21日からは左眼瞼下垂,同月23日からは複視が現れ,眼窩部痛が継続している状態であることを認識した。診察の結果,患者に,左眼瞼下垂・対光反射遅延,瞳孔不同(左が右よりも大きい)等の症状を認めたことから,担当医師は,「卜ローザハント症候群疑い 除外すべきもの・動脈瘤」と診断し,直ちにMRI及びMRA検査を行う必要があると判断し,近接するクリニックで検査ができるように手配した。患者は,同クリニックで,8月24日昼過ぎころから,頭部MRI検査及び頭部MRA検査を受けた。MRI検査では,T1強調,T2強調,FLAIR法で撮影され,軸断,冠状断方向及び造影の有無で計7回撮影が行われたが,FLAIR法で損影されたのは,軸断方向1度のみであった。

患者が,MRIフィルムを持参して同日再度担当医師の診察を受けたところ,担当医師は,フィルムを見て,明らかな海綿静脈洞部の異常はなく,MRAについて特記すべきものはないと診断をした。担当医師は,MRI上は異常がないが,症状から,患者につきトローザハント症候群が強く疑われると考え,同症候群に効果のあるステロイド(リンデロン)を処方して経過を観察することとした。担当医師は,次回外来担当日である8月29日に受診するよう患者に指示するとともに,同月27日にも外来を受診するよう指示し,同日の外来担当医にも,患者が同日に受診予定であること及び症状を見てステロイドの減量を指示することを依頼した。患者は,帰宅後も頭痛が治まらないことから,2人の子どもを夫の両親に預け,患者の母に泊まり込みでの付き添いを頼んだ。患者は,8月25日未明,意識障害を窺わせる言動をし,同日の日中も頭痛を訴え横になっていたが,同日夜,頭痛がこらえられなくなり被告病院に電話をし,頭痛がひどくて我慢ができない,このまま死ぬようなことはないかなどと問い合わせたが,当直の脳神経外科医は,処方された薬を飲んでおくようにとの指示をしただけであった。患者は,電話の際,同日未明の意識障害を窺わせる言動については,特に伝えなかった。患者は,被告病院で処方されたステロイドを指示どおり服用し続けたが頭痛は軽快せず,ほとんど横になった状態で,食欲もない状態であった。8月27日,患者は,被告病院を再診し,初診時とは別の医師の診察を受けた。同医師は,患者の動眼神経麻痺が悪化している上,8月24日に撮影されたMRAに動脈瘤の可能性のある所見を認めたことから,担当医師にその旨を連絡した。担当医師は,直ちに患者を診察し,患者から,週末ずっと寝ており,眼瞼下垂の増悪のほかには症状の変化は自覚していないことなどを確認し,他覚所見として,眼瞼下垂の明らかな増悪,動眼神経麻痺の悪化等を認め,リンデロンがまったく無効であったと認識した。担当医師は,初診時に撮影されたMRAを再確認し,左内頸動脈後交通動脈分岐部付近に,4㎜X8㎜大の動脈瘤の可能性のある所見を認めたため,3D-CTによってこれを確認することとした。

8月27日午前11時前ころから,患者に対する3D-CT撮影が開始されたが,同日午前11時05分ころ,患者はCT台上で突然全身痙攣を起こし,意識レベルが低下した。担当医師は,直ちに挿管の上,単純CT撮影を行ったところ,くも膜下出血が認められ,3D-CTにより左内頸動脈後交通動脈分岐部に動脈瘤が確認された。緊急開頭クリッピング術が実施されたが,患者には,右上肢機能全廃及び両下肢機能全廃,高次脳機能障害等の後遺障害が残った。

患者及びその夫が,被告病院を開設する地方公共団体及び担当医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億8786万3549円

結  論

一部認容(認容額 1億5999万7915円)

争  点

①初診時に,くも膜下出血を疑いさらに検査すべき義務の有無
②担当医師に,初診後帰宅した患者から被告病院に症状に関する問い合わせがあった場合に備え,くも膜下出血を疑うべき所見があることを診療録等に記載し,他の医師等に伝えるべき義務を怠った過失があるか。

認容額の内訳

 

1 患者本人の損害

(1)治療費等

計37万0378円

(2)退院時までの付添看護費

178万2000円

(3)将来の付添看護費

5399万9560円

(4)入院雑費

42万1200円

(5)休業損害

310万5251円

(6)後遺症逸失利益

5727万9526円

(7)入院慰謝料

364万0000円

(8)後遺症慰謝料

2600万0000円

(9)弁護士費用

900万0000円

2 患者の夫の損害

(1)慰謝料

400万0000円

(2)弁護士費用

40万0000円

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