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循環器外科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

大動脈弁狭窄症等の治療のために大動脈弁置換術を受けた患者が死亡したことについて,担当医師らの手技上の過失が認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第2581号 損害賠償請求事件
平成16年5月13日判決 控訴
【手技】

<事案の概要>

患者(昭和20年生,女性)は40歳ころから高血圧を,48歳ころから僧帽弁不全,不整脈の既往があり,平成11年4月から被告病院(大学病院)の内科に通院していた。患者は,平成12年2月23日,就寝時に動悸がして約10分間意識が消失したため被告病院内科の救急外来を訪れ,同月27日,精査目的で被告病院循環器内科に入院した。患者は,3月2日,心臓カテーテル検査の結果,重症大動脈弁狭窄症と診断され,大動脈弁置換術を受けることになり,同月14日,被告病院胸部外科へ転科した。

3月14日午前10時11分,A医師(胸部外科)の執刀により大動脈弁置換術が開始され,A医師らは,大動脈弁の置換を終えた午後1時15分,大動脈切開部の閉鎖に取りかかった。その際,A医師らは,左房べン卜による血液の吸入を中断し,血液が左房から左室,大動脈へと少しずつ満たされるようにしながら大動脈切開部の閉鎖を進め,大動脈切開部の閉鎖をほぼ終えると,大動脈の空気抜きのため大動脈べントを挿入し,患者の脳に空気が流れないように頭低位としながら,大動脈ベン卜から血液の吸入を行った。A医師らは,午後1時30分,大動脈切開部から血液が溢れるようにしながら大動脈切開部を閉鎖し,続いて,左房ベン卜と大動脈ベン卜を用いて空気抜きを行いながら,大動脈の遮断を解除した。患者は,午後1時31分,自拍動を再開したが,A医師らは,その後も,経食道エコーによって心臓内の空気の抜け具合を随時確認しつつ,左房べントと大動脈べントによる空気抜きや,ベッドを左右に振ったり,肺を膨らませたり,左心を圧迫するなど空気抜きを続けた。その後,患者の心臓の十分な回復が得られず,人工心肺を離脱できる状態に至らなかったため,A医師らは,午後3時30分,右大腿動脈からIABP(大動脈内バルーンパンピング)を装着し,午後6時30分ころ,人工心肺からPCPS(経皮的心肺補助装置)へ移行させた。午後8時21分,閉胸が行われ,本件大動脈弁置換術は終了した。

大動脈弁置換術後,患者は,血圧の上昇と循環動態の改善が確認されたが,3月16日午前4時,突然血圧が低下し,午前4時47分,高カリウム血症と軽度アシドーシスが認められた。A医師らは,患者が心タンポナーデから急性心不全となり,急性腎不全を発症したことを疑い,午前7時15分から再開胸手術を実施したが,心タンポナーデの原因となるような血腫の存在は確認されなかった。

患者は,3月16日午前11時10分,右膝窩動脈の拍動がドップラーで聴取されたが,同日午後10時には,右下肢に腫脹が見られ,右膝窩動脈の拍動が極めて微弱ないし聴取不能になった。A医師らは,右大腿動脈のIABP挿入部に血栓が形成されて動脈閉塞が発症したことを疑い,血栓除去のために17日午前0時10分から血栓除去術を行い,患者の右大腿動脈に血栓は認められなかったものの,IABP挿入部のシースと右大腿動脈がぴったり張り付いて右大腿動脈の血流が途絶している状態を確認した。A医師は,シースと右大腿動脈が張り付いた原因が,シースの曲がりにあるのではないかと考えシースを外したが,シースに曲がりは見られなかった。

その後,患者の右下肢末梢にチアノーゼが認められたため,同日午前10時から右下肢の血流の改善を図るため,筋膜切開術が行われたが,下肢筋肉崩壊物質の再潅流を窺わせる症状が現れ,3月18日には,右下肢腫脹に加え,左下肢の虚血も認められるようになった。患者は,下肢の筋組織の崩壊や横紋筋の融解が生じるなどして多臓器不全を発症し,3月19日に死亡した。

患者の家族(夫と子)は,主位的に,①大動脈弁置換術の際,A医師らが心臓内の空気抜きを十分にすべきであったのにこれを怠ったため,右冠動脈空気塞栓によって急性心筋梗塞を発症して死亡したと主張し,予備的に,②A医師らが大動脈弁置換術の際,手術器具の操作を誤って心臓の血管を傷つけたため,大量出血により死亡した,③A医師らは遅くとも3月16日午前11時10分までに患者の右大腿動脈閉塞を発見して手術等適切な処置をすべきであったのにこれを怠ったため,死亡したなどと主張して,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計6704万6500円

結  論

請求棄却

争  点

①空気抜きが不十分であった過失の有無
②手技上の過失の有無
③右大腿動脈閉塞の発見義務違反の有無

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