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内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

乳癌患者に対し一般的でない癌治療方法である免疫療法を実施するにつき,担当医師に説明義務違反があり,同医師と実質的に一体となって健康食品を販売していた薬局にも責任があるとされたケース

 

東京地方裁判所 平成16年(ワ)第1746号 損害賠償請求事件
平成17年6月23日判決 控訴 判例時報1930号108頁
【説明・問診義務,因果関係】

<事案の概要>

患者(昭和29年生,女性,エホバの証人信者)は,平成9年6月,左乳房の腫瘤を訴えて甲病院(大学病院)を受診し,検査の結果乳癌の疑いがあると診断された。患者は,同年7,8月ころ,テレビや書籍等で知った新免疫療法に関心を持ち乙病院(大学病院)のA医師を受診した。その時点で患者の左乳房の乳癌の大きさは3.5㎝X2.7㎝X1.8㎝で,近傍のリンパ節転移はなく,腹部内臓にも異常は見られず,炎症性乳癌ではなく,ステージⅡであった。患者は,平成14年8月まで,乙病院,被告診療所及び丙病院において,A医師から新免疫療法を受けた。

平成13年7月14日,被告診療所においてB医師は,患者を診察し,左乳房の癌が皮膚表面に侵食露出し,腐敗して出血を伴う状況(カリフラワー状)になっているのを認めた。B医師は,患者を自らが勤務する丁病院(総合病院)に紹介し,外科手術の検討のために諸検査を行ったが,左乳房の癌が胸壁筋肉へ浸潤し,他臓器への転移も認められたため,ホルモン治療,抗癌剤治療を実施した。患者は,乳癌が悪化し,本件訴訟係属中の平成16年2月18日に死亡した。

A医師は免疫学を専門とする医師で,平成7年,大学医学部助教授,平成10年5月から平成16年8月まで大学研究所教授として研究・診療に従事し,平成9年9月から被告診療所を開設して同クリニックでも診療をするようになった。A医師は,癌患者に対し新免疫療法と称する治療を実施し,一般向けに新免疫療法に関する書籍を出版し,講演等を行っていたほか,新免疫療法の実績等を示すウェブサイトを公開し,被告診療所を受診する患者に「新免疫療法(NITC)のご案内」と題するパンフレッ卜等を手渡していた。それらには,新免疫療法の内容・メカニズムの説明,新免疫療法の特徴として患者によっては劇的な治療効果が得られていること,癌の種類に関係なくどんな癌にも対応できること,抗癌剤と異なり副作用がほとんどないこと,QOL(生活の質)が高まること,抗癌剤や放射線治療の副作用も軽減することができることなどが記載され,驚異的な治療効果と題し,CR(著効。4週間以上癌が消失している状態)やPR(有効。癌が半分以下に縮小し4週間以上保てた場合)等の用語を用い,数値を挙げ画期的な実績があがっていることが記載されていた。 

被告診療所において実施された新免疫療法は,診察,腫瘍マーカーの測定等の検査,医薬品としてSPG(ソニフィラン),OK-432(ピシバニール),PSK(クレスチン),ビタミンD3(活性型ビタミンD),ウルソデオキシコール酸等の処方,被告薬局における健康食品であるILX,ILY,ベターシャークMC・LO,OG1・3A(ニゲロオリゴ糖),SIA,イミュトール,総合ビタミン等の処方というものであった。

患者(本件訴訟係属中に死亡し,患者の家族が承継)が,A医師及び被告薬局に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

A医師に対し合計5407万6838円
(うち135万4919円については被告薬局と連帯) 
被告薬局に対し合計135万4919円
(A医師と連帯) 

結  論

一部認容(認容額 A医師に対し合計4991万4822円,被告薬局に対し合計135万4919円〔135万4919円についてA医師と連帯〕)

争  点

①A医師が,患者に対し,乳癌に手術適応があること及び新免疫療法の効果が低いことを説明せず,治療効果のない新免疫療法を勧めて手術を受ける機会を失わせた。 
②被告薬局は,患者に対し,自ら販売する健康食品等が,医薬品ではなく癌の治療効果を持たないことを告知すべきであったのにこれを怠り,新免疫療法の効果について患者が誤信しているのに乗じて高額の健康食品等の販売を行ったか。

認容額の内訳

1 A医師が賠償すべき損害

(1)逸失利益

2855万9903円

(2)慰謝料

2000万0000円

2 被告らが連帯して賠償すべき損害

医療費,薬品・健康食品購入費等

135万4919円

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