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神経内科における過去の医療事故・医療過誤(医療ミス)の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

未決勾留中に脳梗塞を発症した患者の治療につき,国に転医義務違反があり,期待権を侵害したとして,患者の損害賠償請求が一部認容されたケース

 

東京地方裁判所 平成13年(ワ)第22501号 損害賠償請求事件
平成16年1月22日判決
【説明・問診義務,適応,転医義務,損害論,その他】

<事案の概要>

患者(昭和24年生,男性)は,東京拘置所に未決勾留中の平成13年4月1日午前7時30分ころ脳梗塞を起こして布団の上に半身を起こしているところを発見された。

同日午前7時50分ころ,東京拘置所職員である准看護師が,患者の独房に赴き,診察したところ,その症状から脳内出血等も考えられたため患者を直ちにストレッチャーで医務部へ搬送した。患者は,同日午前8時O分ころ,東京拘置所医務部外科医Aの診察を受け,脳内出血又は脳梗塞の疑いがあったため,午前8時10分ころ,同拘置所のICU(医師や看護師が常時勤務するなどの要件を満たしていない)に収容された。A医師は,救命措置を行い,同日午前8時30分ころ,中心静脈栄養(IVH)を施行した。

東京拘置所精神科医Bは,同日午前8時30分ころ,A医師から引継を受けて患者を診察したが,「問いかけに答えず。痛み刺激で手足を動かす。右半身麻揮。発語不能。瞳孔は正円。両眼の対光反射は迅速。」という状態であった。

B医師は,患者の症状から,脳内出血又は脳梗塞のいずれかと考え,午前10時7分,診断のため患者の頭部CT検査を実施した(「第1回CT」)。同CTの画像は,患者が動いたため,アーチファクトが写るなど画質は悪かったが,低吸収域が写っており,B医師は,東京拘置所医務部放射線技師Cに登庁を依頼した。B医師は,准看護師に対し,呼吸,心拍,血圧に注意して患者を観察するように指示し,第l回CTの画像に高吸収域がなかったことから,患者が脳梗塞であると判断し,グリセオールの投与を開始するように指示をした。

同日午後0時19分ころ,C技師により頭部CT撮影が行われ,B医師は,その画像所見でも低吸収域が認められたことから,脳梗塞の可能性が高いとの判断を確認した。

それ以後,B医師や准看護師が患者を頻繁に診ることはなく,同日午後11時30分ころ,東京拘置所医務部職員が事務室内のモニターの電源を切り,同時点以後翌2日朝まで,准看護師や医師による巡回はなくなった。

医務部長であるD医師は,4月2日午前7時50分ころに患者を診察し,同日午前9時27分ころ,頭部CT撮影を行ったところ,左,中大脳動脈,後大脳動脈に広範な脳梗塞があり,一部出血性梗塞となっているなどの結果が得られたため,東京拘置所で保存的治療を継続することは不適当であると判断した。

D医師は,同日午前11時5分ころ,患者を重症指定とし,11時55分ころ気管切開を終了した。同日午後O時23分ころ,看守長が患者の父に対し,電話で,患者の状態について連絡した。D医師は,同日午後O時ころ,甲病院に対して患者の受入の可否を照会したが同日午後2時ころに拒否する旨の回答があり,すぐ乙病院に連絡したが拒否された。そこで,D医師は,丙病院(大学病院)に連絡をしたところ,受入が可能との回答があったので,同病院へ転医させることとし,同日午後3時20分ころ救急車で出発し,3時41分に丙病院に到着した。到着時点での患者の状態は,意識レベルJCS-100(GCS-E4VTM5)で,同日午後4時30分の頭部CT上,左中大脳動脈領域に広範な脳浮腫が出現し,左半球は脳溝は狭小化し,脳室は拡大するなど増悪傾向にあった。付添った刑事弁護人等に対して病状説明がされ,患者に対し,同日午後10時15分ころから前側頭部の緊急開頭減圧手術が行われたが,失語,失読,失書,右半身完全運動麻痺等の後遺障害が生じた。

患者が,患者には血栓溶解療法の適応があった可能性があり,東京拘置所の担当医師らは,4月1日午前8時ころ,患者が脳卒中であるとの疑いをもった後,速やかに専門病院へ転医させるべきであり,仮に血栓溶解療法の適応の可能性がなかったとしても,患者に適切な治療を受ける機会を与えるために,速やかに専門病院へ転医させるべきであったのに,これを怠ったと主張して,期待権が侵害されたことによる慰謝料の支払を,患者の父が説明義務違反に基づく慰謝料の支払を,国に対して求める損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計 3750万円

結  論

一部認容(認容額 120万円)

争  点

①血栓溶解療法の適応の可能性の有無
②転医義務違反の有無
③未決勾留中の者が最高水準の医療を受けることの期待権の有無
④本件における期待権侵害の有無及び損害額
⑤患者の父に対する説明義務違反の有無

認容額の内訳

患者本人分

①慰謝料

100万円

②弁護士費用相当損害額

20万円

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