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消化器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

イレウスを発症し入院3日後に死亡した患者の治療について,イレウス管の挿入時期・方法,挿入後の監視等につき,担当医師の過失が認められなかったケース

 

大阪地方裁判所 平成16年(ワ)第7721号 損害賠償請求事件
平成17年7月20日判決 控訴後和解
【治療方法,時期】

<事案の概要>

患者(昭和3年生,男性)は,平成15年9月14日昼ころ心窩部痛を覚え,翌15日午前11時10分,被告病院(総合病院)へ緊急搬送され,単純性イレウスと診断され,入院となった。絶飲食,点滴治療,投薬が開始され,16日午前中,主治医であるA医師が患者を診察したところ右側下腹部の圧痛と腹部の膨満が認められ,腹部CT検査では,小腸内に多量の腸液貯留が認められた。B医師は,同日午後2時15分ころ,X線透視下でイレウス管を挿入したが,十二指腸まで挿入できず,イレウス管を胃内に留置した上で120㎝まで挿入し,同日午後7時35分ころ,C医師がX線透視下でイレウス管を再挿入した。その際、患者が多量に嘔吐したため,C医師は,イレウス管をトライツ靭帯より肛門側へ20㎝挿入したところで中止した。患者は,同日,3度自己抜去し,その都度C医師が再挿入した。患者は,9月17日午前3時15分ころ,心拍数下降,呼吸停止,瞳孔散大し,同日午前3時16分ころ,心停止した。C医師は,蘇生措置を講じたが状態は改善せず,同日午前9時52分ころ,患者の死亡が確認された。

患者の子2人が,被告病院を開設する法人に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計4648万1124円

結  論

請求棄却

争  点

①初診時,胃管挿入をしなかった注意義務違反ないし過失の有無
②9月16日午後2時15分までの間に,イレウス管の挿入や開腹手術を行わなかった注意義務違反ないし過失の有無
③イレウス管の初回挿入時の手技を誤った注意義務違反・過失の有無
④初回挿入時の失敗後,直ちに再挿入あるいは開腹手術を行わなかった注意義務違反ないし過失の有無
⑤9月16日午後8時ないしその数時間以内に開腹手術を行わなかった注意義務違反・過失の有無
⑥9月16日夜から同月17日未明にかけて,患者の監視を怠った注意義務違反・過失の有無

判  断

①初診時,患者は,腹部レントゲン所見でガス量が少なく,筋性防御所見,ブルンベルグ徴候・電解質異常は認められず,腹部膨満は認められたが元気な状態でショック症状はなく,担当医師が過去に胃癌で開腹手術した点を考慮し胃管挿入を行わず身体への侵襲性の低い絶飲食・輸液の実施という保存的治療方法を採用した判断は相当である。
②患者には,腸管穿孔,腸管壊死などの腹膜炎や絞扼性イレウスを疑う徴候は認められず,患者の胃癌摘出の既往や高齢であること,開腹手術に予測される危険性を考慮すれば注意義務違反があるとは認められない。
③胃癌で胃の3分の2を切除しており,通常の患者に比べイレウス管んぼ挿入が困難であったことに照らせば,担当医師が十二指腸ないし小腸まで挿入できなかったことに注意義務違反があるとはいえない。
④9月16日時点で患者は元気な状態であり,B医師が癒着性イレウスを想定し開腹後の癒着によりイレウスを繰り返す危険を考え減圧処置による改善を期待したことを考慮すれば注意義務違反は認められない。
⑤2回目のイレウス管挿入で排出量が増量し,減圧効果が認められていたこと,高齢で胃癌摘出の既往で開腹手術に危険を伴ったことを考慮すれば,注意義務違反は認められない。
⑥患者がイレウス管を自己抜去した後,医師・看護師らはイレウス管の必要性を患者に説明した後,繰り返し管を挿入するなどイレウス管が適切に機能するよう監視管理していたのであるから,注意義務違反は認められない。患者が,嘔吐した胃液を気管に誤嚥して窒息した可能性があるとは認めるに足りない。

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