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消化器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

免疫療法を末期癌患者に実施するにつき,担当医師に説明義務違反があり,患者が自らの意思で治療方法を決定する機会を奪われたことについての精神的損害を賠償する責任が認められたケース

 

東京地方裁判所 平成16年(ワ)第2952号 損害賠償請求事件
平成17年6月23日判決 控訴
【説明・問診義務,因果関係,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和21年生,女性)は,平成13年5月11日,甲病院(総合病院)において緊急手術を受け,卵巣・肝転移・腹膜播種を伴った回盲部大腸癌である術中診断され,卵巣・子宮切除及び大腸回盲部切除術を受けたが,肝転移については処置がなされなかった。患者は,その後,甲病院外科に外来通院し抗癌剤である5-FU,アイソボリンの点滴投与を受け,同年9月時点では肝転移は縮小し,腫瘍マーカー(CEA)も低下した。患者が,抗癌剤の副作用がつらいと訴えたため,抗癌剤を内服薬フルツロンに変更したところ,腫瘍マーカー(CEA)が上昇したため,同年11月から,再び5-FU,アイソボリンの点滴投与が開始されたが,肝転移は増大した。平成14年1月28日,甲病院で肝臓部分切除・胆嚢摘出手術が実施されたが,取りきれない肝転移があったので,5-FU,アイソボリンの点滴投与が続けられたが,同年5月15日には肝転移・肺転移の増大が確認され,翌16日から,抗癌剤CPT-11(カンプ卜)を追加投与したが,副作用が生じ始めた。

患者は,被告診療所から取り寄せた資料やA医師の書籍等を読み,同年5月31日にA医師の診察を希望して被告診療所を受診した。同日時点で患者には大腸癌(結腸癌)の遠隔転移があり,病期(ステージ)はⅣであった。患者は,同年10月30日まで,被告診療所等で新免疫療法を受けたが,同日,被告診療所で患者の診療を担当したB医師は,自ら勤務する乙病院(総合病院)に患者を紹介した。患者は以後,乙病院においてB医師から種々の抗癌剤の投与を受けたが,平成15年9月3日に死亡した。

A医師は免疫学の専門医であり,平成7年には大学医学部助教授に就任,平成10年5月から平成16年8月まで、大学研究所教授として研究・診療に従事し,平成9年9月からは被告診療所を開設して診療をするようになった。A医師は,癌患者に対し,新免疫療法と称する治療を実施し,一般向けに新免疫療法に関する書籍を出版し,講演等を行っていたほか,新免疫療法の実績等を示すウェブサイトを公開し,被告診療所を受診する患者等に「新免疫療法(NITC)のご案内」と題するパンフレット等を手渡していた。パンフレットには,新免疫療法の内容・メカニズムの説明のほか,新免疫療法の特徴として,患者によっては劇的な治療効果が得られていることや癌の種類に関係なくどんな癌にも対応できること,抗癌剤と異なり副作用がほとんどないこと,QOL(生活の質)が高まること,抗癌剤や放射線治療の副作用も軽減できること等が記載され,驚異的な治療効果と題し,CR(著効。4週間以上癌が消失している状態)やPR(有効。癌が半分以下に縮小し4週間以上保てた場合)等の用語を用い,数値を挙げて画期的な奏効率の実績が記され,大腸癌を含む各種癌に新免疫療法又は新免疫療法とイレッサを組み合わせた治療で効果があったとの記載もあった。被告診療所におけるA医師の新免疫療法は,診察,腫瘍マーカーの測定等の検査,SPG(ソニフィラン),OK-432(ピシバニール),PSK(クレスチン),ビタミンD3(活性型ビタミンD),ウルソデオキシコール酸等の処方であり,被告薬局において,健康食品であるILX,ILY,ベターシャークMC・LO,OG1・3A(ニゲロオリゴ糖),SIA,イミュトール,総合ビタミン等が処方されていた。患者も同様の診療・処方を受けた。

患者の夫が,A医師及び被告薬局に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

A医師に対し合計2133万1799円
(うち133万1799円については被告薬局と連帯)
被告薬局に対し合計133万1799円

結  論

一部認容(認容額A医師に対し200万円)

争  点

①A医師が,新免疫療法の効果が乏しいことを容易に知り得たにもかかわらず,化学療法や放射線療法の説明をせずに新免疫療法を選択させ,患者の延命利益を奪ったか。
②A医師は,イレッサの適応や副作用について説明を怠ったか。
③被告薬局が,患者に対し,自ら販売する健康食品等が,医薬品ではなく癌の治療効果をもつものでないことを告知すべきところ,これを怠り,新免疫療法の効果について患者が誤信しているのに乗じて高額の健康食品等の販売を行ったのか否か。

認容額の内訳

慰謝料

(A医師が賠償すべき損害)200万円

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