光樹(こうき)法律会計事務所 医療事故・医療過誤の法律相談 全 国 対 応 電話相談可

お問合せ
平日10:30~17:00
03-3212-5747
医療過誤 医療事故 弁護士68.png

循環器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

慢性閉塞病変(CTO)の患者に対し,経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)が実施された際,ガイドワイヤーが目的病変の真腔ではなく,偽腔に入り込んでいた可能性が高かったにもかかわらずバルーンを拡張して血管の穿孔を招いた過失及びこれによる患者の死亡との因果関係がいずれも認められたケース

 

東京地方裁判所 平成14年(ワ)第17541号 損害賠償請求事件
平成17年4月27日判決 控訴 
【手技,適応,因果関係,損害論】

<事案の概要>

患者(昭和11年生,男性)は,平成12年12月26日,上腹部痛を覚え,甲病院を受診したが症状が軽快しなかったため,平成13年1月11日,乙センターへ転院した。主治医となったA医師(循環器内科)は,心臓カテーテル検査(CAG)を実施し,左前下行枝に完全閉塞,右冠動脈に99%の亜閉塞,左回旋枝に90%の狭窄が認められたため,冠動脈疾患三枝病変,陳旧性心筋梗塞と診断された。A医師により,右冠動脈及び左回旋枝に対する経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)が実施され狭窄は改善された。患者に対し,左前下行枝に対する冠動脈バイパス形成術(CABG)の実施も勧められたが,患者が消極的だったため行わないまま同月22日に退院となった。

患者は,同年8月15日,CAGの目的で再度乙センターへ入院し,検査の結果,以前PTCAを施行した右冠動脈及び左回旋枝は再度の狭窄は認められなかったが,左前下行枝が完全閉塞していたため,同部位に対しPTCAを実施することになった。

同月21日,A医師及びB医師(循環器内科)を術者として患者の左前下行枝に対するPTCAが実施された。B医師は約1800例のPTCAの経験があり,そのうちCTO症例は約150例であった。A医師は,約100例のPTCAの経験があり,B医師は,当時医長で,A医師の上司であった。A医師が術者としてPTCAが開始されたが,閉塞部である左前下行枝にガイドワイヤーを通過させようとしたものの,内膜下に入っては抜くことを繰り返し,左前下行枝に入ってもワイヤーの先が対角枝方向に向くなどして,左前下行枝の真腔が捉えられず,当初造影されていた左前下行枝の側副血行路が消失し,ワイヤー先端の位置を特定できなくなったためB医師に交代して施術が続けられた。

B医師が手技を交代した後も,側副血行路は消失したままだったため,ガイドワイヤーが対角枝に入っている可能性や途中で偽腔に入っている可能性も考慮されたが,画像や手先の感触等を総合して,おそらく左前下行枝内の真腔にあるだろうと判断され,閉塞部近位部が最小径である1.5㎜のバルーンで拡張された。ガイドワイヤーは左前下行枝の真腔を捉えておらず,対角枝方向の偽腔に入っていた可能性が高く,B医師は,その可能性を認識していたが閉塞近位部でバルーンを拡張することに問題はないと考え,第2対角枝の近位部で、バルーンを拡張したものであった。閉塞部をバルーンで拡張した午後4時50分ころ,冠動脈が穿孔し,対角枝から出血が生じていることが確認された。B医師は,プロタミンを投与し,穿孔部付近をバルーンで拡張する方法で止血を開始し,午後6時30分ころ,いったん止血が確認されたが,午後6時45分ころ,患者が胸部痛や心窩部痛を訴え,血圧が低下し徐脈となり,心室細動を生じ呼吸停止となった。B医師らは,気管挿管,電気的除細動,ボスミン(昇圧剤)等の投与を行うとともに造影が実施されたが,再出血は見られなかった。この時,第1対角枝は画像上写っておらず,閉塞していたことが読み取れたが,B医師らは認識しておらず,これに対する処置はなされなかった。午後10時58分,モニター上心停止となり,直ちに心マッサージが実施されたが,翌22日午前1時21分,患者は死亡した。

患者の遺族が,A医師及びB医師並びに乙センターを設置運営していた国に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。独立行政法人国立病院機構法が発足したことにより,被告たる地位は独立行政法人国立病院機構が当然に承継した。

請求金額

合計5918万0422円

結  論

一部認容(認容額3786万4292円。ただし,A医師に対する請求は棄却)

争  点

①PTCAの必要性と適応の有無
②A医師にカテーテル操作を行わせたことの適否
③冠動脈穿孔及び出血の原因
④冠動脈穿孔及び出血を生じさせたことについての過失があるか否か
⑤A医師の本件PTCA手技における過失の有無
⑥冠動脈穿孔及び出血と患者の死亡との因果関係の有無
⑦損害額

認容額の内訳

①逸失利益

766万4292円

②患者本人の慰謝料

2200万0000円

③葬儀費用

120万0000円

④患者の遺族の慰謝料

各200万0000円(合計400万円)

⑤弁護士費用

300万0000円

医療事故・医療過誤(医療ミス)について法律相談をご希望の場合には,『医療事故調査カード』をダウンロードし,必要事項をご記入の上,当事務所宛にご郵送ください 担当弁護士が内容を拝見した後,ご相談日をご連絡いたします 電話相談も可能です

 歯科・精神科・美容のご相談は受け付けておりません

光樹(こうき)法律会計事務所 

〒100-0005 東京都千代田区丸の内2丁目5番2号 三菱ビル9階 969区

※丸ビルの隣、KITTEの向かい

TEL:03-3212-5747(受付:平日10:30~17:00)

F A X  :03-3212-5740

医療事故・医療過誤(医療ミス)についての法律相談をご希望の場合には、下記『医療事故調査カード』をダウンロードし、必要事項をご記入の上、当法律事務所宛にご郵送ください。なお、歯科・精神科・美容相談は受け付けておりません

※担当弁護士が内容を拝見した後、ご相談日をご連絡いたします。