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循環器内科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

経皮的冠動脈形成術(PTCA)を実施した際,大腿動脈から挿入したガイドワイヤーの操作を怠り,動脈壁を穿孔して腹腔内出血を生じさせた過失,左回旋枝の拡張終了後施術を中止すべき義務を怠った過失が認められず,カテーテル操作により出血を生じさせた過失は認められず,施術の危険性,方法についての説明義務違反も認められなかったケース

 

東京地方裁判所 平成12年(ワ)第20918号 損害賠償請求事件
平成16年1月26日判決
【説明・問診義務,手技】

<事案の概要>

患者(昭和18年生,男性)は,平成10年6月30日,冷汗を伴う胸痛を訴え,7月1日,被告病院(国立病院)の心臓血管外科を受診した。血液検査の結果,クレアチンキナーゼ値が上昇しており,小領域の心筋梗塞が疑われたため同月6日に心臓カテーテル検査が実施され,その結果,左回旋枝の入口部に95%の狭窄と,右冠動脈の近位部に90%の狭窄が認められた。検査中,カテーテルを挿入した大腿動脈に動脈硬化があり,カテーテル操作が困難であったため,カテーテル操作を容易にするため,シースがロングシースに変更された。又,造影検査中に,心房細動に伴う不整脈が出現した。

同年7月10日,循環器科と心臓血管外科の合同カンファレンスにおいて,患者に対する治療方針が協議され,協議の結果,早急に冠動脈の狭窄を拡張しなければ急性心筋梗塞による突然死の危険があるが,再度開胸してバイパス術を行うことは昭和61年に実施された手術による癒着のため困難であり,造影検査だけでも不整脈が出現するほどであるから,経皮的冠動脈形成術(PTCA。先端部にバルーン〔風船〕を付けたバルーンカテーテルを使用し,冠動脈の狭窄を拡張する治療法)施行のほかに方法はないという結論に達した。

患者に対して施行されたPTCAの手順は,ガイドワイヤーを鼠径部の大腿動脈から大動脈を通して冠動脈狭窄部位の遠位に達するまで挿入し,次にバルーンカテーテルをガイドワイヤーに沿って挿入した上で,狭窄部位において加圧によりバルーンを膨張させて狭窄を拡張し,それだけでは拡張不十分な動脈硬化の強い部分には,血管を内側から補強するステント(ステンレス製の円筒型の金網)を植え込んで留置するものであった。

A医師(循環器科)は,同年7月13日,同日から患者の主治医となったB医師の立ち会いのもと,患者・患者の妻・子に対し,PTCAに関する説明をした。

同年7月15日,午前10時,患者に対するPTCAの施術が開始された。術者はA医師であり,主治医のB医師も施術に立ち会った。10時18分,右冠動脈造影のために挿入されたガイドワイヤーが腸骨動脈付近で上行しなかったため,ラジフォーカスワイヤーに変更された。10時29分から10時34分までの間に,左回旋枝の狭窄に対して4回の拡張が行われた。患者は,2回目の拡張時である10時31分「喉に突き刺さる感じ」を訴えた。

10時40分,血圧が95/60(mmHg,収縮期/拡張期)に低下し,以後,血圧低下に対し昇圧剤が投与された。10時45分から10時48分までの間に,右冠動脈の狭窄に対して3回の拡張が行われ,その間,収縮期血圧が,10時45分に85,10時46分に80,10時48分に70台へ低下した。10時48分,心電図に,心筋梗塞の発症をうかがわせるST上昇の波形が認められ,呼吸困難が出現して,収縮期血圧が70台となり,心拍数(毎分)も50台に低下した。10時55分,血圧はいったん125/85に回復したが,患者は大声でうなり声を発するようになり,11時ころには,意識を消失して呼名に反応しなくなった。11時8分までに,右冠動脈内に2個のステントが植え込まれ予定していたPTCAの施術は終了したが、11時20分ころ,左回旋枝の急性閉塞が認められ,11時31分,左回旋枝に対して再度バルーンによる拡張が行われた。11時42分,自発呼吸が停止し,11時44分,心室細動が出現し心臓マッサージが開始され,電気ショックも行われた。午後0時,人工心肺装置(PCPS)が装着されたが直ぐに血液の流量が得られなくなった。0時23分,A医師は,患者の腹部に膨隆を認め、0時43分,急性腹腔内出血と診断し,その後,患者を集中治療室に移して心肺蘇生術を実施したが回復せず,午後2時48分,患者の死亡が確認された。

患者の妻,子らは,手術をしたA医師,主治医であるB医師に過失があったと主張し,国,A医師及びB医師に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計1億0588万円

結  論

請求棄却

争  点

①大腿動脈から挿入したガイドワイヤーの操作を怠り,動脈壁を穿孔して腹腔内出血を生じさせた過失の有無
②左回旋枝の拡張終了後施術を中止すべき義務を怠り,引き続き右冠動脈の拡張を行って心原性ショックを生じさせた過失の有無
③PTCAの手術に伴う合併症などに関する説明義務違反の有無

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