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泌尿器科における過去の医療過誤・医療事故の裁判事例。事案の概要・請求金額・結論・争点・認容額の内訳など。

前立腺切除手術後に患者が顕微鏡的結節性多発動脈炎を発症し死亡したことについて,手術を行ったことや術後の治療などに過失が認められなかったケース


東京地方裁判所 平成10年(ワ)第25332号 損害賠償請求事件
平成14年10月30日判決
【入院管理,術後管理,手術適応,治療方法・時期】

<事案の概要>

患者(大正12年生,男性)は,昭和58年ころから排尿困難があり,前立腺結石軽度の前立腺肥大症と診断され,被告病院(国立病院)泌尿器科に通院していた。

患者は,平成4年11月、突発性間質性肺炎に罹患し、被告病院呼吸器内科に入院したが,退院後は間質性肺炎の増悪は生じていなかった。

患者は,平成7年4月ころ,ダンリッチを服用した後,排尿困難が出現したため,導尿処置,排尿障害治療薬の投与などを受けた。

その後,患者の排尿困難は改善したが,平成7年5月の検査では,最大尿流量率12.4ml/s,残尿量60ml,前立腺重量が35gで,同年8月の検査では,最大尿流量率10.5ml/s,残尿量74.6ml,前立腺重量が39gとなり,前立腺肥大症の進行が認められた。患者は,前立腺肥大症の治療を受けるため,同年9月に被告病院泌尿器科に入院し,逆行性尿道造影検査を受けた後,被告病院のA医師(泌尿器科)の執刀で経尿道的前立腺切除手術(本件手術)を受けた。手術前日の血液検査では,白血球数9200,血沈37mm,CRP9.92と炎症症状が認められたが,尿検査では尿路感染の所見は認められなかった。

患者は,本件手術後,38度台の発熱があり,いったん治まったものの,その後,37度台の微熱が続き,A医師は,患者に抗生物質を投与したが,術後28日から再び38度台の発熱が現れた。

術後17日に採取された患者の喀痰からごく少量のMRSAが検出されたため,患者に対してうがい管理,検査時のマスク着用などの処置がとられた。術後23日に採取された喀痰の培養検査でMRSAが多量に検出されたため,術後27日から1日2gのパンコマイシン投与が開始された。術後28日から,院内感染防止のため,患者の個室管理,医療従事者の手洗い励行とマスク・ガウン着用が開始された。術後34日,初めて咽頭粘液,鼻腔粘液の培養検査を実施したところ、MRSAが検出された。

患者の血清クレアチニン値は,手術前日から術後34日ころまでは1.1〜1.2mg/dlであったが,術後37日,1.4,術後41日,1.6,術後42日には1.7に上昇し,腎機能障害が示唆され,術後41日からパンコマイシンの投与が1日1gに減量された。

術後34日から患者の足に浮腫が認められ,術後40日には足関節部に対称的な発赤,皮疹が生じた。A医師から診断を依頼された皮膚科医師は,これらの症状の原因として皮脂欠乏性皮膚炎を第一に考えると回答した。

患者は,術後41日ころ全身状態が悪化し,不明熱の原因精査と加療のため,術後42日に呼吸器内科に転科となり,呼吸器内科のB医師(内科研修医)が担当医になった。その後,アルブミンの静注や輸液などが行われたが,患者の全身状態悪化は改善しなかった。パンコマイシンの効果が得られなかったため,術後49日目に中止されたが,その後も患者に腎機能悪化の徴候が見られた。

術後55日から,腎機能への影響を無視し得るミノマイシンの投与が開始された。ミノマイシン投与後,一時的に体温やCRPが低下したが,その後再度上昇した。

術後60日,患者は呼吸困難を訴え,酸素吸入が開始された。術後69日から患者に嘔吐や食欲低下が現れ,B医師は消化器潰瘍を疑って,術後73日から1日300mgのザンタック内服投与を開始した。ザンタックは,術後81日まで1日300mg(内服),術後83日まで1日50mg(静注)の投与が行われ,以後,投与は中止された。

患者の血小板数は,術後66日ころから低下し,術後78日から血痰が出現し,術後79日には患者の呼吸状態が急激に悪化し,肺出血と診断された。術後80日から止血剤の投与が開始されるた。発熱や肺出血の原因として,医師は,結節性多発動脈炎を含む膠原病を疑い,ソル・メドロールの投与によるステロイド剤大量療法が開始されたが,患者は呼吸困難の状態に陥り,術後85日に死亡した。

術後82日に行われた検査(検査結果報告は患者の死亡後)では,MPO-ANCA(抗好中球細胞質抗体)が894単位と著明な高値を示していた。病理解剖の結果,結節性多発動脈炎(顕微鏡的結節性多発動脈炎)の所見で,それに伴う多発性梗塞が副腎精巣,腎臓に認められた。肺には,慢性間質性肺炎の所見が認められ,胃には潰瘍所見が認められた。これらの所見から,患者の死因は,顕微鏡的結節性多発動脈炎による多臓器不全と診断された。

患者の妻と子2名は,A医師,B医師及び被告病院を設置する国に対し,損害賠償請求訴訟を提起した。

請求金額

合計8000万円(合計1億1113万2013円のうち一部請求)

結  論

請求棄却

争  点

①医師がCRP高値のまま手術を実施したことに過失があるか。
②医師が患者の手術前に予防的に抗生物質を投与しなかったことが過失といえるか。
③被告病院に,MRSAの院内感染防止対策を怠った過失があるか否か。
④医師が患者にパンコマイシンを術後27日から術後40日まで1日2g投与したことに過失があるか否か。
⑤B医師が患者に対してザンタックを投与したことに過失があるか。
⑥A医師とB医師が,術後42日の時点で結節性多発動脈炎の発症を疑ってステロイド剤の大量投与を行わなかったことに過失があるか。

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